クロッキーF美術館コレクション vol.2009 Nov 19

15 pictures
A3 (420 x 297, thin paper)

画 材: 鉛筆、A3上質紙
時 間: 指定時間固定
モデル: 彩 海
参考資料: クロッキー後に作った組写真『
六号機』、『七号機

note
 各パーツばらばらで全体を観ることができなかったけれど、それで満足している自分がいた。そして、クロッキーを早々に終えてから、写真を撮り、組写真を作りたいと思っている自分がいた。

 ところで、最近考えていることは『作品』の題名
 大きな美術館に収蔵されている古典絵画の多くは『固有の名称』を持っており、無題(Untitled)と記された作品は少ない。それに比較して、私のクロッキーには題名がない。誤解がないように繰り返しておくと、私の作品は『無題』という題名を持っているのでなく、単純に題名がない、だけである。

 では、何故、私のクロッキーには題名がないのか。その理由はいくつかあるが、第1に作品点数が多いこと。今回の作品群だけでも15点あるから、それぞれに題名を考えるのは大変なことだ。第2に描き終えてから題名をつけることは、明らかにクロッキーとは別の行為である。後から付加するなら、音(音楽)や匂い(香り)や温度をつけたって良いことになる。言語(題名)だけを問題にすることはおかしい。ただ、言語はある規則(ルール)にしたがって作られたものだから、多くの人が共通理解をしたり、論理的に分析したりする手段としては有効だろう。また、鑑賞のための導入としては、最も単純で簡単な方法だ。

 第3に、私は言葉を用いて作品作りをしているのではないから、作品に言葉を付加する理由がない。もし付加するなら、それを作品の構成要素の1つとして画面に描き込むべきだと思う。使用言語は、日本語やスペイン語など既存の言語ではなく、私が作った『F語』を使う。私は自分が創造した言語によって、1枚の平面をうめ尽す。私が『F語』という言語を使って制作していると考えるなら、私のクロッキーは言語そのものとなる。

 では、F語を理解できる鑑賞者がいるかどうか、というと、いる。私より優れた感性を持った鑑賞者なら、すぐさま私が何を感じて何をしたかを感じるだけでなく、私の限界を知るだろう。その逆なら、「さっぱりわかなない」となる。そもそも言語を使っても100%理解しあえないことを思い出したまえ。言葉によるコミュニケーション力を向上させるためには、地道な努力と豊かな人間性を培うしかない。絵画の見方も同じで、絵画の理解度は人生経験の豊かさと比例する。

 さて、ここまで書いて思い出したことは、この美術館の過去の『展示室(各ページ)』の表題だ。最近は、『vol.2009 Nov 19』のように日付けだけになっているが、2004年までは『クロッキー作品群2004 DEC 21/2004年12月21日(火)/芸創センター、練習室2』としてしいた。場所の記述はさておき、私は1つひとつの作品を独立したものとしてではなく、群れとして考えていた。したがって、完成度が低いクロッキーも捨てることなく展示した。私はある時間と空間を共有し、クロッキーという活動をした作家とモデルの存在を作品にしたかった。それは『日記』であり、今風にいえば『ブログ』である。この考えは今でも変わらない。

 それから、私はモデル名を書くことを絶対条件の1つとして考えているが、それはモデル個人を大切にしているからである。世間に知れわたる有名な絵画作品には、『美の女神(ビーナス)』『立てる男の像』など、モデルの個性を無視したものがある。もちろん、モデル自身が有名な場合やモデルと作家が特別な関係にある場合はモデル名が知られているけれど、それは作者の意図と違うことが多い。その作家は、個人を超えた崇高なものを目ざしている。しかし、私の立場は違う。私が描くモデルは個性という美を持ち、立ち方によって個性を表現する。

 ここまで述べたところで、現在の私のクロッキー作品のタイトルに関する考えをまとめると、次の1文になる。

各作品群の表題は、モデル名と日付けとする

 この立場は私だけのものではなく、今の世界中(2009年)で感じられる個人主義的な風潮によるものだろう。私は単独で生きているのはなく、歴史を学んだ大衆の1人として生き、私とは直接関係がない他人がインターネットを通じて私の生きざまを楽しんでいることを知っている。この文章を読んでいるあなたは、まさにその1人かも知れない。実際に顔を合わせたことがなくても、あなたが私の死後に生まれた人であっても、私のクロッキーを楽しんでいるのなら十分だ。それ以上に何も望むことはない。私はアリストテレスやダビンチに会ったことはないが、深い親しみを持って今を一緒に生きているように感じている。

補足1:言語を使わない音楽(クラシック音楽など)と同じように、各展示室を『通し番号』で整理することもできる。しかし、作品数が多いクロッキーは『日付け』がとても有効だ。なぜなら、作品を客観的に整理したり解釈したりしたいと思った時、それは解決の第1歩になる。

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