20010 Feb 4の試み

2 croquis (420 x 297, pencil)
1 photograph

 4ポーズ描いたところでモデルが眠った。私はいくつかの実験をするため、同じポーズで2枚描いた。

 1枚目は縦画面で、およそ12分使った。テーマは、ひと仕事終えて安心したモデルの心中である。2枚目は横画面で、およそ15分。自分の位置はほどんど変えないまま、同じポーズを横位置に収めた。このような配置変換はよく行うなので、まったく問題なかった。画面の主題は1枚目と同じだが、顔を強く描き過ぎないように注意した。1枚目より上手くできたのは、色をつけなかったことからも判る。

 2枚目のとき、私は実際に大きく動いて「回り込んだ面」を観た。身体を胴部、折れ曲がる2つの脚、2つの腕、というパーツに分け、それぞれ、および、それらの関連性を観た。肩、首、頭部、顔面は大きな問題がないので、動かずに描いた。

 動くて発見したことは、「塊としての腹部」である。内臓がたっぷり入っている腹部は、地球の引力によって下がるものの、腹膜という1つの袋に入っていることを確認した。したがって、モデルによって大きく変わる腹部を描くときは、それを腹膜にはいった1つの塊として捉えればよい。さらに、腹部の中心に位置する「へそ」は、腹部の表面に張り付いているようなものとして認識すると良い。つまり、ほくろや女性の乳房や乳首と同じように、表面上のアクセントとしてとらえる。

 表面に位置する「へそ」に対して、その上下にある「胸骨」と「恥骨」の位置関係は上半身のひねりを正確に示す。ただし、今回のポーズは恥骨だけでなく、下になった骨盤がまったく見えないので、「重力の影響を受けた腹部の形」の正確な理解が最重要となる。これは、かなり大きな発見だった。さらに、下になって押しつぶされた腕を正確に観れたことも面白かった。

 後から反省して分かったことは、腕の認識の甘さである。私は、腕を足と同じような「折れ曲がるもの」として捉えていない。だから、肘や手首が腕と分離する結果になる。このポーズにおける私の興味は、1:顔と首と肩の位置関係、2:顔の表情、3:顔に近付けられた手の形と位置、4:胸を含む胸部と背中、5:骨盤と腰の落差、6:手前に伸びた足、7:臀部と下になった足、8:下になった手、の順である。振り返れば、これらの中に腕全体のつながりがない。

 確かに、この絵における「腕」は重要な意味を持っていない。しかし、それを理由に描かなくてもよい、と考えるのではなく、さらっと正確に描く技術を身につけたい。さらっと正確に描写することは、目だたなくするという点において重要だ。

 次の写真は、クロッキーの位置より右上から撮影したので、上2枚とは違う。手前に伸びた足と画面下端がつくる角度を見れば、すぐに判るだろう。

画 材: 鉛筆(カステル、三菱の色鉛筆、平鉛筆)、A3上質紙
時 間: 約12分、約15分
モデル: 彩 海
撮影機材:ニコンD700、17-35(f2.8)、500W-3200K

クロッキーF美術館コレクション
vol.2009 Feb 4

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