クロッキーF美術館コレクション vol.2010 april 9

22 pictures
A3 (420 x 297, thin paper)

画 材: 鉛筆、A3上質紙
時 間: 指定時間固定
モデル: NB

note
 シャキーラと南米の音楽を使って描きました。

 さて、今週から実験していることの1つに、私が描きたいものが出現まで大量の線を描き続ける、というものがあります。

 私が描きたいことは『表情』です。それは本来、一瞬で消えるはずの表情ですが、短時間だから固定しようとするモデルの意志による表情です。この特別な表情は、夜空に開く花火、生のエネルギーをほとばしらせて咲くサクラの花に例えられます。それは『生命エネルギーの静止』であり、私たち宇宙を説明する科学的な方法の範囲外にあるように思われます。それは『言葉にできないもの』であり、クロッキーなど絵画だけに許された表現であるように思います。写真は、大量の線を描く時間を必要としないので、『静止』ではなく『切りとり』です。その固定に成功した時、私の心は踊ります。そして、とても懐かしい感じがすることも告白しておきます。

 次に、『大量の線を描く方法』を紹介しましょう。モデルをしっかり見て描くことは間違いありません。私はいつでもモデルを十分に見ます。顔の表情はとくにしっかり観察し、画面の中心となるようにします。顔の中でも目は最重要ポイントです。かなり精密に見て、自分が納得するまで描き込みます。「よし、できた。これで他の部分の表情を描くことができる」と思うまで描きます。それは乱雑な大量の線による、『写実』から遠いものです。それから、他の部分に移りますが、その線は、目や顔の延長線上にあります。身体各部に興味が湧き過ぎると、ばらばらな絵になってしまいます。モデルの意識がばらばらな時は、私がどんなに頑張っても無理です。1つに集中することは、作品作りに不可欠な条件です。

 大量の線は、いわゆる輪郭、外形・内形、陰影と関係ありません。何だかわからない無数の線は、私を含めた鑑賞者を説得させるための輪郭線らしきものを自然にうみだします。ポイントを抑えた線は、無数の線の集積によって、必然的に生まれるもので、両者は一体です。

 このようなポーズができるモデル、感じられる鑑賞者は限られています。しかし、学習によって万人が可能です。私はその入り口に立ち、ようやくその扉を開けたところです。考えるまでもなく、美術館には先人による『生命エネルギーの静止』の成果が保管され、示されています。

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