クロッキーF美術館コレクション vol.2010 July 21

11 pictures
A3 (420 x 297, thin paper)

画 材: 鉛筆、A3上質紙
時 間: 指定時間固定
モデル: 彩 海
その他: 
組写真『混乱』

note
 前回モデル彩海を描かせて頂いた時に、湊かなえさんの本『告白』を貸してもらいました。冒頭1ページを読んだ時は「最近の少年週刊雑誌のようで『ぞっ』とした」のですが、休日の昼下がりに一気に読みました。久しぶりの読書だったので3時間半も使いましたが、楽しかったです。とても分かりやすく、作品を創ろうとする作者の強い意志を感じました。次は、彩海さんへ送った私の読書感想文(メール)の一部を手直ししたものです。

 『告白、今読み終えました。私はもともと、小説を「現実とは違う1つの作品」として捉えていますが、今回は、この1冊をとくに優れた1つの作品として感じました。この物語は、完成した複数の作品、すなわち、登場人物によって構成されていますが、作品(人間)どうが絡み合うことで芳醇な作品を完成させています。このような感覚を抱く作品とは何度か出会いましたが、これといった例を挙げられないので、今回、告白を読んで満足しています。

 繰り返しますが、この作品の登場人物である先生も生徒もその親もそれぞれの世界(作品)を完成させていることに、とても感銘を受けました。彼らはとても勇気ある人々です。彼らは迷いながら苦悩しながらベストを尽くし、物事をやり切りました。やり切る最終ゴールが間違っていたり、ゴールが見えずに足掻いているだけのようにみえる登場人物もありますが、時間を短くしたり、時間を限定したりすれば、完全にやり切っています。そのように見せている作者、湊かなえさんが凄い、と思いました。

 感想は止めどもなく出て来ますので、この辺に終了にします。とにかく奥深い本を貸してくれたことに感謝しています。そして、この本を読むことで、私が半年間放置していた写真から組写真『楽園の夢』ができてことをとても嬉しく思います。さらに、告白パワーを使ってその続きとなる写真集を創りたいです』

 この長い文章を載せたのは、今回はクロッキー前の撮影に満足しただけでなく、半年ぶりに新しい組写真『混乱』を完成できたからです。クロッキーはその『おまけ的存在』になりましたが、それでも次の発見がありました。

 クロッキーで特筆すべきことは、モデルさんが創ったポーズを私がキャンセルしたことです。普段はほとんどしないのですが、今回は撮影で十分な手ごたえを感じたこと、撮影中は私からポーズの注文を出すことが多いこと、クロッキーを短時間で終了したかったこと、などの要因が重なったようです。流れを大切にするクロッキーを作家が積極的に中断することも悪くない、という発見をしました。それに、よくよく考えれば「これで終わりにしましょう」と決断するのはいつも私です。

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