クロッキー F 美術館

そもそもヌードとは何か

1 日本人は、裸の顔で歩いている
 表皮を露出している状態を裸(ヌード)、と定義するなら、ほとんどの日本人の顔はヌードです。そして、多くの成人女性は裸の上に化粧することを常識、スッピンで外出することマナー違反だと考えています。同じように、日本人は手首から先も裸で外出します。

 逆に、顔と手以外の部分は衣服などで覆われ、隠されていることがほとんどです。オフィスビルが立ち並ぶ場所で、裸足や上半身裸の人は注目を浴びます。これが2010年の日本社会の姿です。

写真:敬虔なムスリムから見れば、女性が顔を露出することは猥褻な行為である。なぜなら、美しい女性の顔は、男性を性的にそそのかす、と考えられているからだ。(イランの古都エスファハンにて、2004年)


2 廻し(まわし)をつけた男性どうしの相撲
 2010年の日本には大相撲という男性だけによるスポーツがあり、その土俵に女性が上がることは禁忌されています。相撲の歴史は古く、神事に由来すると考えられ、礼儀作法を重んじます。しかし、素肌の露出度から考えると、臀部(でんぶ)が完全にあらわになっているわけですから、かなりの露出度です。それが全国テレビ放映されているのが現在の日本の文化であり、現状です。

図:2人の力士がつけているのは、廻しと呼ばれる褌(ふんどし)の1種だけ(歌川国貞の版画、1860年代)


3 ヌードは自然な状態
 ヌードを明るく健康で自然な状態、と考えることに私は賛成です。この宇宙に存在する全ての生物はヌードであり、健全な生活を営んでいます。しかし、生物として完全に満たされたヒトは、ヌードによって過剰な性行動や問題行動を起こすので、それを防止するためのルール(法律)を作りました。これはごく自然な流れだと思いますが、忘れていけないのは、『自然状態はヌードであり、それを覆い隠すことは社会的・文化的行為である』ということです。

写真:男性は両足を黄色に塗り、ペニスサックをつけ、お洒落をかねて尻に植物の葉をつける(イリアンジャヤ島のワメナのミニモ村の祭にて、2000年)


4 へアヌード
 注:ヘアヌードは完全な日本語であり、国外では通用しません
 ヘアヌード(陰毛が写っているヌード写真)が事実上解禁されたのは、1991年に発刊された写真集「ウォーターフルーツ(篠山紀信)」からです。それまでは、陰毛は猥褻なものとして法によって規制されていました。なお、陰部は2009年現在、猥褻なものとされていますが、近い将来解禁されるかも知れません。

 このHPでもヘアヌード(写真)を掲載しています。私個人の率直な考えでは、不特定多数の人が閲覧できるHPでヘアヌードを掲載することは、かなりの危険性を含んでいると思います。それでも、このページで公開しているのは、高い芸術文化をつくることを目標としているからです。写真作品に陰毛が写っているかどうかは問題ではなく、作品作りの過程や目的達成のために必然的に写り込んでしまうものです。

写真:わずかに陰毛が写っているが、これを修正したところで失うものはあっても得るものはない、と考える(nude photograph『青のロンド、2005年』より)


5 性的な興奮を得るもの

 ヌードは性的な興奮を覚える身体の状態である、と考えるなら、あなたはどのようなときに性的興奮をしますか? 眼を閉じて何かを想像するだけで十分ですか、それとも、何かに具体的に触れる必要がありますか。私はクロッキーの現場において、全裸でも性的な興奮はほとんど覚えません。強いクロッキー欲にかられているからです。興奮の程度は、状況や個人によって全く異なる現象なので、ヌードを規定する条件として不適切です。

 あなたはがこのHPを訪問する目的は何ですか? 私は性的興奮を得るためだけ、ではないことを願っています。ここで、「だけ」と述べたのは、性的な興奮が全くない作品は不完全である、と考えているからです。完全な美術作品は、ヒトのあらゆる感覚に働きかけるものですから、性に関する部分を排除したものは不完全です。

図:クロッキーF美術館コレクション vol.2009 Feb 7より


6 まとめ

 ヌード=裸、として定義することは簡単でしょう。しかし、ヌードがもつ社会的価値は、国や文化や時代によって全く異なります。何が良くて悪いのか、一律に判断することはできません。ヌードは人間がもつさまざまな欲望に深く関わる問題だからです。しかし、このように難しい問題であっても、クロッキーFはより高い文化的な社会をつくるために、ヌードを自然で美しく真実に近づくための状態であると考え、ヌードに対して積極的に取り組んでいきたいと思います。

2010年1月3日公開

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