クロッキー F 美術館

みんなで描く時のルール

1 みんなが気持ち良く描くために
 ルールはみんなが気持ち良く描くために必要なものです。ルールというと、自由を縛られるような気がしますが、実際はその逆です。みんなが気持ち良くすごす自由、みんなが平等に描く自由、みんなが集中できる自由、モデルが表現する自由など、さまざな自由を守るためにあります。

2 ルールはみんなで作る
 ルールはみんなで作るものですが、意見が食違うときは代表者がとりまとめます。主催者が事前につくったルールで行われることもありますが、回を重ねることによって、自然に参加者の意見が反映されるようになるはずです。もちろん、次に紹介するクロッキーFのルールは、あなたが所属する会のルールとは違うはずです。

ルール1:クロッキー中は言葉を口にしない
 クロッキーの途中に言葉を発する人がいますが、これは言語道断です。絶対にしてはいけないことです。クロッキーは非言語を非言語で表現する活動です。心の中でいくつもの『日本語』が飛び交うことがありますが、それは広い大空に複数の飛行機がいろいろな方向に飛び交っているようなもので、けっして1つの言葉だけが、一方向に一定の速さで進むものではありません。そのような単純な発声は、絶対に慎むべきです。他人に与える影響は計り知れません。

ルール2:クロッキー中はみだりに動かない
 モデルがポーズを決めてから、動き回ってはいけません。魅力がないポーズや角度であっても、努力して描きたいことを探しましょう。短い時間だから動くな、というのではありません。その場から逃げることなく、その場でベストを尽して下さい。いつもと同じ、自分の描きたいものだけを描いていては進歩しません。どのような状況であってもベストを尽くす姿勢を身につけて下さい。新しい発見があるかも知れませんし、次のチャンスに繋がります。素晴らしいポーズがあなたの前に現れた時、高い集中力で確実に仕上げるように準備しましょう。一連のクロッキーの中には、良い時もあれば悪い時もあるのです。

ルール3:モデルのタイマーが鳴らなくても、すぐに指摘しない
 モデルがタイマーを押し忘れ、時間になっても鳴らない時があります。そのような時は、主催者に目で合図をして下さい。主催者が頃合を見計らってモデルさんに声をかけてくれるでしょう。大切なのは、第1にモデルの主体性であり、第2に主催者による会場の雰囲気づくりです。

 もし、主催者が気づかない場合は、十分な時間が経過したころに、小さな声でモデルさんに「時間です」と伝えてあげましょう。また、タイマーの押し忘れが数回続くと、きょろきょろ余計な心配をする人が現れます。もし、自分がそのような人になったら、自分を戒めて下さい。それはクロッキーに集中していない証拠です。

ルール4:他人のクロッキーを見せてもらう
 休息時間に他人のクロッキーを見せてもらうことは、大きな楽しみの1つです。ただし、強要してはいけません。「自分のものを見せるから、あなたも見せて下さい」と頼むこともルール違反です。自分の作品を見せることは良くても、他人の作品を見たくない時もあるからです。調子が良い時の私は、他人の作品によってペースを乱されるのを拒みます。

 どうしても見せて欲しい時は、丁寧に優しく頼んで下さい。そして、見せて頂いたあとは、お礼を言いましょう。さらに、あなたが十分な力を持っているなら、良い点を指摘してあげましょう。欠点は言う必要はありません。

ルール5:他人のクロッキーを批評する
 他人から批評を求められ、あなたが批評したいと思うなら、どうぞ自由に批評して下さい。さもなければ、長所も短所も言ってはいけません。勝手にアドバイスルをすることは、絶対にしてはいけないことの1つです。一部の先生は、生徒のクロッキーに線を書き入れますが、それは私にとって信じられない光景です。もちろん、小学校の毛筆の時間なら、本人がそれを望むなら、それで良いでしょう。

ルール6:モデルに注文したいときは責任者に頼む
 モデルのポーズが気に入らないからといって、勝手にモデルに注文してはいけません。複数の人が自分の好みを言い出したらモデルさんは混乱してしまうからです。例えば、髪が美しいモデルさんが来た時を考えてみましょう。ある人は髪を強調したポーズを描きたいと思い、ある人は逆に、髪をまとめて首筋を描きたいと思います。

 どうしてもポーズを注文したい時は、自分の要望を積極的に主催者に伝て下さい。主催者は、会全体の流れを考慮して、みんなが満足できるポーズを依頼したり、時間配分を工夫してくれるでしょう。もちろん、モデルの意見も同じように尊重されますから、描き手全員の要望であっても通らない場合があります。

ルール7:休息中のモデルに、みだりに話し掛けない
 モデルさんにとっても休息は必要です。その休息中にもっとも有効なのは、「良いポーズでした」という一言です。この一言でモデルさんは元気を回復するだけでなく、次へのエネルギーを得ることができます。ただし、嘘を言ってはいけませんし、逆効果になるほど繰り返したり、詳細に話したりしてはいけません。自分の欲望を満たすためだけの話しをしてはいけません。休息時間は、次のポーズのための充電時間です。

3 基本方針とルールの違い
 ルールを同じようなものとして、基本方針があります。基本方針の例として、写真のように描くことを最終目的とする、クロッキー中に指導者のアドバイスを受けることを目的とする、年4回の展覧会を企画する、などがあります。このような根幹に関わる基本方針が失われたとき、その会は解散です。新しい基本方針をもった会として生れ変わります。

4 違反者への対応
 多少の違反が見逃される場合もありますが、みんなが気持ち良く描けないレベルに達している場合は、明確に注意して下さい。注意されたこと、禁止された行為が自分の表現に必要不可欠なことなら、その会(集団)から去るべきでしょう。個人的にモデルを手配して描けば良いのです。

2009年12月30日公開


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