クロッキー F 美術館

クロッキーの描き方
描画(ポーズ)時間を長くする

1 よくある描画時間
 クロッキー1枚のよくある描画時間は2分、3分、5分、7分、10分、20分です。キッチンタイマーやスマホのタイマーを使って、正確に時間を区切ります。モデルさんは合図と同時にポーズを変えますが、唐突ではなく、わずな時間的ゆとりを取っていただけると助かります。1秒に満たないもので十分です。その余韻で、最後の一筆を描きたい場合があるのです。

2 クロッキー会における時間割
 1回のクロッキー会は休息を入れながら、合計10枚(ポーズ)〜30枚(ポーズ)描きます。描画時間はだんだん短くする場合とだんだん長くする場合があります。

3 だんだん短くする理由
 よくあるクロッキー会は、時間をだんだん短くていきます。初めは比較的長い時間(5分〜10分)を設定しますが、それは作家のウォーミングアップ、手や頭を動かす準備のために使われます。モデルの身体的特徴・バランスを調べたり、作家自身が表現したいもの決めたりします。クロッキー会後半になると、手や目や頭が自然に動くようになり、流れるような美しい1本の線で描画できるようになっていきます。

4 だんだん長くするクロッキーとの出会い
 私は若いころ、ニューヨークの美術学校でクロッキーを学びました。そこでの設定時間は「1分から25分へ」だんだん長くしてくものでした。私は大変驚きましたが、実はそれが世界標準だったのです。日本が逆になっている理由は不明です。

5 美術学校で学んだこと
(1)ウォーミングアップはモデルさんを使う前にしておく
 絵を描くためには、いろいろな準備が必要です。テーマや目的、鉛筆や紙などの画材を決めるなど、すべきことがたくさんあります。その1つとして、ウォーミングアップしておくことは当然です。空腹で動けないとかトイレに行きたいとかは論外です。

(2)モデルさんがポーズをとったら、作家はすばやく頭を手を動かす
 ウォーミングアップが十分にできていれば、1分で十分です。1分間隔で変わるモデルを前にして、どんどん描きます。頭と身体が無意識レベルで繋がっていく、連動いていくはずです。それは魅惑的な線や痕跡として画面に定着しますが、1分という制約がもたらす緊張感に助けられていることを忘れてはいけません。

(3)豊かな感性のまま3分・5分描く
 1分ならできても、3分・5分になるとできなくなる場合があります。ゆとりができ、余計なことを考えてしまうからです。そのような時は、あなたの動機や目的や動機を思い出してください。それを達成させるためには、ある程度の時間が必要です。頭脳と身体を豊かに連動させる時間を継続させる必要があります。もし、あなたの目的が「上手な絵を描こう」「壁に飾れるものを描こう」などの単純なものなら、生きたモデルさんを使う必要はないのです。

(4)25分継続させて、完成度を上げる
  25分描くためには、明確な目的と意識が必要です。さらに、25分を繰り返すことで数時間、それ以上にすることが可能になっていきます。クロッキーは、魅力的な大作を描くためのものなのです。

6 長時間ポーズの問題点
  ポーズ時間が長くなると、モデルさんは躍動感のあるポーズを持続できなくなります。筋肉に限界があるからです。その結果、長時間ポーズは似たり寄ったりのものになりがちですが、内面をみてください感じてください。モデルさんによって違うことはもちろんですが、時間・場所・作家などの環境によって変わります。あなたの気持ちも毎日違うはずです。それら個別の違いや、それらの関係性が見えてくるようになると、どんなポーズでも生き生きとした作品ができるようになります。

7 私が主催するクロッキー会
 最近の私の流行は、クロッキー会を3分・5分・7分で構成することです。将来、3分〜7分という時間設定は変わると思いますが、「だんだん長くしていく」というスタイルは変わらないと思います。また、クロッキーの目的は、ニューヨークの美術学校で学んだことと似て非なるものです。私は、クロッキーそのものを完成作品と考えています。クロッキーは大作のためでのものではなく、生きる歓びをための芸術活動です。作品作りは重要ですが、活動(行為)としての比重も大きいです。私のクロッキーに対する考えと姿勢は『クロッキーF』として定義しましたので、別ページ『』『』などをご覧ください。

8 余談
 最近は手が素早く動かなくなってきました。爪や皮膚を磨り減らすことを嫌うようになってきました。集中できる時間も短くなってきました。昔はどんなポーズでもがむしゃらに描いていましたが、最近は気に入ったポーズだけしっかり描くようになりました。

 よくよく考えれば、私は好きなことしかしていません。音楽やスポーツや教育活動やいろいろなことをしているように思いますが、まだまだです。1人の人間が一生に間にできることは本当に限られています。欲を出せばきりがないので、どんどんやりたいことを絞って、1つのことだけに欲望を集中されば良いのでないかな、と感じています。やれることを全部やるのではく、我慢したりあえてやらないことの方が重要なのではないか、と思うのです。

2019年12月28日公開

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