クロッキー F 美術館

デッサンの描き方
絵画は線だけからできている

1 点を線と面は区別できない
 別ページ『点と空間に関する数学的アプローチ』で紹介したように、実際の絵画において、「点と線と面の区別」はできません。点(ポイント)を基準にすると、線は「ちょっと長くなった点」、面は「ちょっと大きくなった点」になります。もう一度数学の復習をしましょう。点と線と面の関係は、『点』←→『線』←→『面』です。

2 古典的な点描画は『面』からできている
 右に示したスーラの点描画は、拡大しなくても1つひとつの点が『複雑に変化する色面』であることがわかります。油絵の具を使った点描画は、筆の太さををもった『複雑に変化する色面』になるのです。

3 絵画は線からできている!
 多くの画家は、絵画で最も重要なものは『線』である、と感じています。自由自在に線を描けるようになれば、点を面は自然に表現できます。なぜなら、線を短くすると『点』になり、線を太くすると『面』になるからです。結局、作者や鑑賞者が「これは線だ!」と認識すれば線になるのです。なお、数学的な線についてもう少し知りたい方は、別ページ『数学における「線」を考える』をご覧下さい。

4 線に含まれるもの
 優れた線は、1本の中にたくさんの情報を含みます。それらを科学的に分析すると、次の3点になります。
(1) 2つの位置 ・ 始まり(起点)と終わり(終点)
(2) 向 き ・ 3次元空間における方向
  例えば、正面手前から右上奥へ
(3) 無限の調子 (ア) 光のあたり方による「陰影」
(イ) 「空気遠近法」における調子の変化
(ウ) 色、質感、光沢などの質感

 1本の線がすべての情報を持つ必要はありません。例えば、始まりは明確でも、終わりは消えてしまっても構いません。その線は、終わりの位置を示しませんが、1つの方向と無限の調子を示しています。つまり、ある点から始まる3次元空間としての情報を含んでいるのです。ただし、1つの線だけで3次元を表現するのはかなり無理があります。また、こうしたことができるのは、厳密な意味で、線が面積を持った細い面の連続であることを意味します。

5 「面」と「空間」の復習
 数学的な点は位置を表すだけなので、平面上に描くことはできません。したがって、実際の点は『面積を持った面』になります。これが木炭紙のように凹凸がある紙の場合は、空間ということができますが、平面絵画では、面が最終的なものになると考えられます。点描画は、点の集積によって描く表現です。クロッキーは線によって描く表現です。面によって描くものの代表はべた塗をするデザインや均一な色を使う版画でしょう。

デッサンの描き方
線を描く方法

1 鉛筆を尖らせる
 私は鉛筆の先を尖らせます。細くすればするほど、よく観察したものになるからです。とくに小さな画面(紙)を使っている人は、なおさら小さな点を描く必要があります。太い線は、丸くなった芯ではなく、鉛筆を寝かせることで描きます。微妙なコントールができます。

2 線と感じない線
 線を線と感じるようでは、優れた線ではありません。最終的には、それがモデルのなにかを表していることになりますが、さらに、線をではなく、もっと違うものを表現するようにならなければいけません。そのためには、線はあらゆるものを含むことになります。それは、空間そのものを示すことであり、空間に溶け込んでいるような線が本当に優れています。1本の線は、空間そのものなのです。

3 点は、短い線として描く
 実際に描くときは、点であることを意識するよりも、表情のある点を描くようにすれば、良いのです。逆に、どんなに長い線を描いたとしても、小さな点が少し伸びてしまった、と考えてもよいのです。極端な場合、画面を真っ黒に塗りつぶしたとしても、点が少し大きくなってしまった、と考えることもできます。厳密な意味で、面積や形を持たない数学的な点は、絶対に描くことはできません。

4 まったく同じ太さ線
 まったく同じ太さの線は、次のように分類できます。
(1) 直線
(2) 曲線(ずーっと同じように曲っているもの)
(3) 曲線(だんだん曲がり方が変わるもの)
(4) ある点で折れ曲がった直線
(5) ある点で折れ曲がった曲線(曲がり方が、ある点で突然変わるもの)

4 線が表現できるもの
 1つのリンゴを描く時、そのリンゴの内側を描くのではなく、リンゴを取り巻く空気を描きます。それは、いわゆる余白とは全く違う考えで、リンゴはある空間との関係によって存在してることを意味します。

2 1本の線について考える
 線を『無数の点』が連続したもの、として考えたとき、数学的な『点』は面積がありませんが、画面に描くときは面積を持った『小さな円』です。どんなに小さい点でも、虫眼鏡を使えば『面』になってしまいます。どんなに細い線でも、画面に描くときは太さがありますから、よくよく考えれば、それは面積をもった『細長い平面』になります。デザイン画は、同じ太さの線で描くことを基本としています。ロットリングという筆記具は、虫眼鏡で見れば『べた塗の円』になります。このものですが、それらの点同じように描けばデザイン画のようになります。

、あるいは、『移動する点の軌跡』移動する速さは自由なので、遅かったり速かったり、あるいは、途中で速さが変わっても構いません。

このページでは、絵画的側面から、線を定義する難しさを考察します。

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