クロッキー F 美術館

第3章 画材と道具の研究
地塗じぬ

図1(右図):画面に淡いピンクやブ緑を感じるのは、クロッキー前に着色したからです。この下準備には数時間かけました。
(1103mm x803mm)
クロッキー作品群2004 feb 1から)

1 地塗って何?
 絵を描くための紙やキャンバスなどに、絵を描くための下地を作る作業を地塗りといいます。油絵の場合は、麻布の上に油絵の具の変色を防いだり、発色をよくしたりするものを塗ります。より積極的に、絵のテーマに合わせて赤や青の色の顔料を塗ったり、凹凸をつけることもあります。私は麻布、画用紙、ボール紙、ベニヤ板などに地塗してから、クロッキーしたことがあります。この作業時間は、本番のクロッキーよりも長くなることしばしばです。

 私は『地塗り』そのものが大変好きである。あまりに集中して作業をするので、1時間すると疲労で倒れてしまうが、少し休息をとると、またすぐにやりたくなる。この作業の繰り返しは、相当な回数持続するものと思われる。

 ある友人から、「君は地塗り作家だ」、「こんな汚い色を使うことができるのはお前しかおらん」と言われたことがあるが、私は大変光栄に思っている。また、初対面に人に自己紹介をする場合、私は「ペンキ屋です」と答えることしばしばである。

2001年に記す

2 準備するもの
 準備するものは、絵を描くための平面(基底材)、平面に塗るもの、その他の3つにわけることができます。次に、私がよく利用するものを紹介します。

絵を描くための平面
(基底材)
(ア) 画用紙
(イ) 白ボール紙
塗るもの
(顔料など)

(ア) リキテックス社のホワイト・ジェッソ
 ・ 20分ぐらいで固まってくるので私のスピードに最適
 ・ 9800円/4リットル

(イ) リキテックス社の絵の具
 ・ 赤、黄、青、黒の300ml(2500円-4000円)

(ウ) 色コンテ
 ・ 安物から高級品まで

その他

(ア) 水性ペンキ用の刷毛
 ・ 幅70mm
 ・ ホームセンターで売っている(500-600円)

(イ) 水入れ2個

(ウ) 霧吹き
 ・ しゅっしゅっしゅっとやるタイプ

 次に、いくつかの技法をメモしておきます。

3 画用紙(4つ切りサイズ)の場合

(1)写真用の白手袋や軍手をして行うとよい。画面に対する感触は、それほど墜ちないし、第1、これは地塗りなのでそれほど厳密な感触を求めてはいけない。

(2)色コンテの破片を画用紙にまいてから、白ジェッソで塗る。すると、色コンテから意外な色が出て来て面白い。また、ジェッソで処理する前に、手で押し広げても面白い。

(3)1度で完成することは少ない。2回、3回と重ねて処理して深みを出す。

(4)半乾きの状態のときに、霧吹きで水を掛ける。すると、水のかかった部分だけ色が溶け出して幻想的な雰囲気を醸し出す。実際は、斑点状に色が溶け出す。

4 白ボール紙(全版サイズ)の場合

(1)筆に色絵の具を直接乗せてみた。すると、色が溶け出して、意外なところで色が出て来る。しかし、最終的には地塗りであることを忘れないようにして、個性を出し過ぎないようにしたい。

(2)紙の裏表については、白いほうじゃなくて、変色しやすい面にする。この面は水分を吸収しやすいのでジェッソの量が2割り余分に必要になるけど、作品の保管を考えて、こちらを選んだ。

(3) 初めに、ジェッソの量を少なくして、濃すぎる色で塗り始める。そして、絵の具が足りなくなったところでホワイト・ジェッソを追加する。すると、濃すぎた画面に新鮮な白が追加され、劇的な白が画面に統一感をもたらす。2001年5月10日(木)

(4)初めに出す色は、3色が適当であるが、何回か繰り返していくうちに、刷毛に残っていた色が追加され、さらに腐った良い色が出て来る。この応用として、初めに出す色を補色関係にある2色に限定してもよい。最高の灰色が得られるはずだ。

(5)初めに出した色は、結構、しっかり混ぜ合わせたほうがよい。何故なら、刷毛に残っていたりすると、最終段階で画面を壊してしまうからだ。

(6)刷毛の動かし方によってマチエールが生まれる。
・ 短いストロークで交互に動かしながら進んでいく。
・ 紙の縦方向に、一気に駆け抜ける(ブルーに適する)。
・ ほとんど乾いてから、マチエールが消えるように優しくなぜる。
・ 半乾きのとき、固い紙で絵の具を押し取るようにする。

(7)わずかに黒を入れると、色が落ち着く。これはコンテ鉛筆で描いたとき、コンテの黒とのマッチングが良くなると思う。

(8)最近(2002年4月)の流行は、ジェッソの量を1/3に減らし水を加える。画面上での伸びや吸湿性が高くなり、紙への定着率がアップする。それ乾かした後、2度塗りをする。2回めは水で薄める量を少なくして、色調やマチエールを整える。

(9)初めのジェッソ(白)に赤や黄色を少量入れて調色したものは、今のところ失敗している。2002年6月初旬

(10)1番初めにボール紙に水をつけてはいけない。紙が弛むだけでなく、ジェッソの定量が分かり難くなる。

(11)色目については『ほどんど白』にしたいと考えているが、これまた難しい問題で、ジェッソがついているのか付いていないのか良く分からないのが現状である。初めに、色ジェッソで塗る方法もあるが、それはボール紙の地色をすぐに覆ってしまうので、これまた分かり難くなる。

(12)最後にあまった(刷毛についたジェッソ)の処理方法については、いまだに困っている。今のところ、適当に水洗いしてから、刷毛を水に中に入れて放置している。おかげで刷毛の状態は良好であるが、数週間そのままにしておくとジェッソ入りの水が腐って悪臭を放つことがある。また、刷毛の金属部分が錆びていることもある。

(13)本番で失敗した紙にいては、勿論、もう一度地塗りをする。このとき、黒コンテは、雑巾でるき取るようにする。そうしないと、粉状になったコンテがいつまでも刷毛の中に残って、画面を黒く汚してしまうからである。また、描いた後も消えにくいからである。

右図2:画面左下は明るい黄色になっています。これは均一になることを嫌ったからです。クロッキーの地塗りはポーズを見ずに準備するので均一にした方が何でも描ける紙になりますが、私は楽しく感覚的にいろいろな色を組み合わせ、微妙な変化をもつ紙をたくさん準備します。そして、モデルのポーズを見てから最適な紙を選びます。右図の場合、紙の上下を変えて描けば、全く違う作品になったと思います。
(1103mm x803mm)
クロッキー作品群2004 feb 1から)

2001年初公開
2010年4月23日加筆

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