クロッキー F 美術館

第6章 美術モデルのためのお話
美しい肌を保つ

1 美しい肌は財産
 美しい肌は美術モデルの財産です。この財産は年齢とともに減少しますが、手入れによって衰えるスピードを遅くできます。肌が荒れている人は、正しい手入れであなたの年齢に相応しい肌を手に入れることができます。なお、肌とは逆に年齢とともに増える財産を貯蓄することもお忘れなく。それは内側から美しい肌を保つことに役立ちます。別ページ『美しい心を磨く』『美しい身体をつくる美味しい食事』もお読み下さい。

2 保湿剤を塗る
 最高の保湿剤は、あなたの肌から分泌されるものです。あなただけに作られた、特製の保湿剤です。赤ちゃんの肌が潤っているのはそのためです。この保湿剤の量は年齢とともに減少しますが、とくに体調不良や乾燥が激しいときは、既成の保湿剤に頼ることもあるでしょう。仕事前に使う保湿剤は、それ以上の乾燥から肌を守る非常手段として有効です。なお、肌の状態は身体各部によって違うので、全身ではなく部分的に使います。

3 安価で安全な保湿成分「白色ワセリン」
 安価で安全な物質「ワセリン」は、薬局で簡単に購入できます(1500円/500g、300円/50g程度)。あなたの手許にある保湿剤や化粧品の成分表示を見て下さい。ほぼ100%の確率で「ワセリン」が含まれています。塗り薬(医師から処方された医薬品を含む)を見ても、その基材は「ワセリン」であり、極めて安全な物質であることがわかります。唇にもそのまま使えます。つまり、保湿だけを目的とするならワセリンだけで十分、最高に安全、お肌に優しいです。とくに純度の高いワセリンは「白色ワセリン」といいますが、メーカーよる価格の違いは製造方法によると思います。

 保湿剤に限らず、高価なものを選べば良い、ということはありません。専門の医師に処方してもらうなら別ですが、それは病気になった不健康な場合に限られるもので、健康な人が毎日使えば逆効果です。化粧品カウンセラーによる化粧品は、その日の状態から判断したものが多いので、毎日変わる肌に対する有効性は大きな疑問を残します。どうしても困ったら、騙されたと思ってワセリンだけを使って下さい。腫れ、湿疹、吹き出物などの症状が1〜2週間で改善します。改善してから、再び添加物(香料、着色料、その他流行の添加物)の入った高価な保湿剤を使いたい人は使って下さい。

4 自分にあったボディー石鹸を知る
 ローションと同じように、自分の肌にあった石鹸を知ることは重要です。中年男性の私は、シャンプーとリンスにとても気をつけていますが、ここ10年ほど同じものを使い続けています。それまではいろいろな会社の様々な製品を試しましたが、数カ月〜半年でだんだん合わなくなるのです。しかし、現在は全く問題ありません。ほんの1週間だけ、洗ってすぐにフケが出る症状が出ましたが、私の体調がかなり悪かったようです。我慢して使っているうちに戻りました。このように、本当に自分にあう石鹸やローションに出会うまで、歳月をかけて試すことが必要です。私の場合は、『指定成分無添加』という表示を絶対条件です。指定成分とは、厚生省が薬事法にもとづいて表示を義務付けた『有害性が指摘される』成分です。したがって、成分表示に何も書いてないものが理想で、書いてあればあるほど危険です。いろいろ入っていれば良い、というのは大きな誤解です。理想は赤ちゃんや子どものように何も塗らないこと、ほぼ100%無害な物質がワセリンです。

5 洗い過ぎない
 完璧に洗わないようにしましょう。なぜなら、肌(皮膚)は細胞からできていますが、強く擦ると細胞を傷めるからです。肌が赤くなるほど擦る人は、かなりの細胞を剥ぎ取っています。顕微鏡で見ると、真皮をつくる細胞は1列ではなく、表面から奥へ向って約10列ほど並んでいます。ごしごし擦ると、1列目だけでなく、2列目、3列目の細胞が順に剥がれていきます。最後の層まで剥がされると、出血です。そこまで洗う人はいないと思いますが、ごしごし擦っている人は、何列も自分の細胞を剥がし、真皮を薄くしてしまっていることをイメージして下さい。なお、一般に「あか」や「フケ」と呼ばれるものは、古くなって剥がれ落ちた真皮(あなたの皮膚、肌)であり、外部の汚れではありません。大切なことは、まず「外部の汚れをつけないこと」、次に「古くなった1番表面の細胞だけを洗い落とすこと」です。

6 お風呂で半身浴
 あるモデルさんは毎日、『半身浴(20分間、心臓の下までつかる)』で全身の血行を改善しています。私も試してみましたが、5分ほどすると上半身に血液が回り始める感覚が面白く、10分で身体の下半分が真っ赤になるのが面白いのです。それ以上の時間はありません。本当はもっと効果的で正しい方法があると思いますが、私は知りません。その他にも、いろいろな入浴方法があるので、是非試して下さい。入浴方法に関することは、いずれもリラックスと血行促進につながるので、どうぞ自信をもって続けて下さい。間違いなく効果があります。

7 風呂上がりにローションを塗る
 風呂上がりのローションについて、3つコメントします。1:ローションを塗るときに、自分の肌を直接触れながら状態観察することは、有効です。手入れの基本は正確な現状把握です。2:乾燥肌の人にとって風呂上がりのローションは有効ですが、使用量が少なくなるよう、食事を改善することもお勧めします。3:マッサージによる血行の促進は、入浴直後の毛細血管が広がった肌に対してほとんど効果なしでしょう。

8 毎日、水2リットルを飲む
 水は絶対に欠かすことができない物質です。その量は、およそ2リットル/日なので、それより少ない人は確実に肌が荒れます。2リットルはとてもたくさんの量に感じますが、食事に含まれる水も加えて下さい。食材に含まれる水分量は70〜95%なので、500gの食事なら、水400gを飲んだ、と考えて構いません。このようにして、自分が摂取した水分量を計算し、毎日2000g(2リットル)より少ないようなら、絶対に水を飲んで下さい。もちろん、それよりたくさん飲むことは肌にとって歓迎です。ペットボトルに水を入れて持ち歩くモデルさんもいらっしゃいます。

9 身体を冷やさない
 いつでもどこでも、身体を冷やさないようにしましょう。身体を冷やせば血行が悪くなります。血行が悪くなれば、細胞が不活性になり、肌が荒れます。単純な理由です。描き手の立場からしても、鳥肌が立っているモデルさんは描きたくありません。逆に、暑くて汗をいっぱいかくような状態は、血行がよいので肌の状態は比較的良くなります。汗の匂いが気になる人は、たくさん水を飲んで、たくさんおしっこをすると匂いが弱くなります。

10 静電気を防止する
 静電気は髪(ときには皮膚)を傷めます。これを防止する方法は2つあります。1つは、8で述べたように水分をたくさん採ることで、水を使って発生した静電気を逃がす方法です。水分量が少ない人は、僅かに発生した静電気をためこんでしまうのです。もう1つは、静電気が発生しないようにすることです。静電気は、2種類の物質が擦れあうことで発生するので、同じ素材の衣服を身につけ、擦れないようにすれば防げます。ストッキングとスカートは歩くたびに擦れあうので発生率が高くなります。下の表を参考にして静電気が発生し難い素材の組み合わせを考えましょう。なお、この表によると、厳密に『髪を手で擦る実験』を行えば、髪が+、手が−の電気を帯び、暗闇で見ると電子が飛び出す様子を観察できます。実際、そのような電気を飛ばす人がいます。

物質の帯電列(電気の帯びやすさを順に並べたもの)

髪の毛
毛 皮
ナイロン
ストッキングの主要素材の1つ
木 綿
肌着、寝巻に最適
皮 膚 金 属 ゴ ム ウレタン
ストッキングの主要素材の1つ
塩化ビニール

+の電気を帯びやすい物質 ← ← ← ← ← ・ → → → → → −の電気を帯びやすい物質
物質どうしの距離が離れているほど、電気を発生しやすい。
皮膚と木綿は隣り合っているので、電気を発生しにくい。
皮膚(手)でビニール紐(塩化ビニール)を擦ると、±の電気でひっつく

11 日焼けをしない
 太陽に含まれる紫外線は、皮膚の細胞を破壊し、細胞を癌化させることがあります。したがって、直射日光に当らないようにしましょう。屋外で活動するときは、日焼け止めクリームを使用しますが、有害な光線は8番程度で十分に防ぐことができます。48番、60番などといった番号はまったく必要ありませんし、未確認ですが肌に有害な可能性もあります。

12 浄水器の水を使う
 私はこれについて十分な検証をしていませんが、よく手入れされた浄水器を使うならベターな水になると思います。浄水器からの水で入浴している方もいらっしゃいます。なお、塩素ガスは有害ですが、飲料水に含まれる量は少ないので、そのまま飲用しても問題ありません。塩素という物質は、非常に水に溶けやすい性質と、水から出ていきやすい性質をもっています。プールの水も塩素で消毒しますが、太陽光のもとではたちまち大気中へ逃げ出します。

13 最後に
 美肌づくりには、総合的な努力が必要です。規則正しい生活、睡眠、食事、入浴、運動などは必須であり、美肌に直結しています。どれを欠かしてもダメです。そして、注意すべきことは、美肌を商売にしている人に騙されないことです。お金を取られるだけでなく、肌を悪くする人はたくさんいます。彼らの商売は、あなたを不安にさせることから始まります。繰り返しますが、肌は絶対に衰えるもので、自然の摂理に逆らうことはできません。私たちにできることは、衰えるスピードを抑えること、そして、表面が失われるよりも速いスピードで心の美しさを磨くことです。ヒトは、年齢とともにトータルとして美しくなる生物です。安易な美しさを求めることなく、大いに努力してより大きな美しさを手に入れましょう。みんな頑張っています。私も頑張ります。

関連ページ
・美しい身体をつくる美味しい食事
・美しい心を磨く

2010年2月12日公開

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