クロッキー F 美術館

第7章 photograph
ヌードを撮影するときのポイント

1 モデルと撮影について共通理解する
 ポートレート、人物写真を撮るのと同じように、モデルを安心させることが第1です。自己紹介するだけでなく、十分なコミュニケーションをとって下さい。そして、撮影の目標やねらい、撮影のポイントを明確に伝えます。はっきりとしていればしているほどモデルは安心して伸び伸びとポーズがとれます。何となく撮りたい、ではいけません。「あなたの美しさを撮りたい」と言うだけでなく、少なくとも「あなたの目と指先を中心に撮りたい」と伝えましょう。これは小さな目標『美しさを撮る』と分かりやすい撮影ポイント『目と指先』を含んでいます。

右:女性モデル安はプロダンサーなので、洗練された身体の表現能力を存分に発揮してもらうことを目標とした。コスチュームはモデル自身が用意したものを使った(組写真『蝶の糸』2008年から)。


2 撮影した画像を見せる

 デジタルカメラを使っているなら、撮影した画像を見せましょう。そうすることで、撮影目標やポイントが明確にわかるだけでなく、モデル自身がどのようなポーズをしたら良いのか具体的に分かるからです。美しく撮れている場合、モデルは大いに安心するだけでなく喜びます。できれば撮影した全画像を見せるのが理想ですが、私は数1000カット撮影することが多いので、撮影初期の段階で何度か見せるようにしています。そうすることで、その後の撮影者の指示が的確に伝わるようになります。

3 肌の階調を豊かにする
 肌のトーンを豊かに表現しましょう。白く飛んでしまったり、黒く潰れてしまうのは絶対にダメです。私はデジカメを使っているので、必要があればPC上で作業できるからです。デジタルカメラなら、撮影後すぐに入力レベルのヒストグラムやハイライトで確認して下さい。露出補正は、露出補正ボタンではなく、絞りとシャッタースピードともに手動設定(マニュアル)で行うことお勧めします。

右:この男性モデルは、ウェイトトレーニングで均整のとれた美しい筋肉を持っている。この写真では、顔や腕の部分が白く飛んでいるが、モデルが強調している腹筋は美しい階調が出ている(組写真『Yellow Armor』2005年から)。


4 正確にピントを合わせる

 写真を観る人は、ピントが合っている部分を中心に見ます。興味がある部分にピントがないと、鑑賞者はいらいらしたり不機嫌になって写真を観るのを止めてしまいます。逆に、肉眼では見られないほど詳細に写っていたり、思いもかけない部分に正確なピントが合っていたりすると、興味深く写真を観ることになります。鑑賞者は、大きな苦労をすることなく、新しい発見をすることができるからです。

5 目にピントを合わせる
 顔を撮影する時は、目にピントを合わせるのが基本です。その他の部分がピンぼけでも、目だけがしっかり合っていれば、それで合格です。モデルがななめを向いている場合は、手前の目に合わせるのが基本です。両目にピントが合っている写真は、技術的に高くありません。さらにクローズアップ撮影する時は、黒目の虹彩にピントを合わせますが、角膜上に反射する風景にピントを合わせる表現もあります。その他に、睫毛(まつげ)ピントを合わせたり、眉毛と目の距離を合わせてそれぞれを正確にピンと合わせすることがあります。

右:よく観ると、写真右側の目にピントが合っている。もし、左目や唇に合わせたなら、全く別の表情をもつ写真になるだろう(組写真『魅せても刄』2005年から)。


6 唇にピントを合わせた写真

 唇は感情や表情をよく表す部分なので、それにピントを合わせることはよくあります。一般的に、唇や性的なメッセージを持っているように思われていますが、目と口は心や精神をよく表現します。むしろ、モデルの感情によって変化しない鼻、耳、ほくろ、うぶ毛など、身体に密着したものに注意を払いましょう。それらはモデルの意図的に表現というより、撮影者の意図や欲望を現わします。

7 モデルをのせる
 良くないポーズでも、リズム良くテンポ良くシャッターを押し続けることで、モデルと自分を乗せていきます。ワン・ショット50円もするポジフィルムを使っているなら別ですが、原価無料のデジカメを使っているのです。その特性を有効に使いましょう。もしかしたら、思いもかけない偶然の産物が得られるかも知れません。私は、シャッターが切れる時の感触や感覚をとても大切にしていますし、その触感はカメラを購入する時の大きなポイントの1つになっています。自分が乗っていかなければ、モデルを乗せることはできません。

右:とにかくシャッターを押してみる。偶然をものにできるようになれば、作品レベルは格段にアップする。(組写真『地の底』2005年から)。

2010年1月6日公開

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