クロッキー F 美術館

第4章 Fのクロッキー技法
アルコールを使って描く

1 アルコールと違法薬物
 アーティストやスポーツ選手などが違法薬物を使用して活動することは違い、飲酒クロッキーは合法です。他人に迷惑や危害を加えなければ、個人の責任でできることです。しかし、基本的にお勧めできるクロッキーではない、と冒頭に明言ておきます。

図1(右図):日中の煩雑な仕事をしていた脳の思考モードを切り替えたくて、クロッキー前にモデルとビールを飲みました。
F美術館コレクション vol.2009 Apr 20から)

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2 アルコールの特徴
 アルコールは万病の薬、といわれます。ごく少量のアルコールは血行を良くし、気持ちを高揚させます。明るい前向きな気持ちで飲めば、飲む前の思いを増幅させ、希望に満ちたクロッキーになります。ただし、暗い気持ちで飲むとそれが膨らむので、事前に自分の心と意識を確認し、クロッキーが充実するようにコントロールしましょう。さらに注意したいことが3つあります。それは、(1)ごく少量にすること、(2)健康な人は必要ないこと、(3)大勢が集ると、不快になる人が出ること、です。私は気心が知れたモデルと1対1の時、モデルと一緒に、あるいは、自分だけ飲んだ経験があります。複数の描き手と飲んで描いた経験はありません。

3 私はお酒がまあまあ好きです
 酒を始めた二十歳の私は、ビール大瓶1ケース、日本酒一升瓶を空けました。でも、今は無理です。私の身体のアルコール分解酵素の量は多くありません。好き嫌いはなく、ワイン、ウィスキー、焼酎、カクテル各種、ブランデーなど、その時空間に合っていれば何でも美味しく頂きます。1人ではなく、誰かと一緒に飲む場合がほとんどです。1週間に数回ぐらいです。

4 飲酒クロッキーの原則
(1)より良いクロッキーを目的とすること
(2)相手、モデルの許可を得ること
(3)楽しい、明るい気分や希望を感じるようにすること
(4)アルコールに溺れないようにすること

 上の4項目は、飲酒クロッキーの原則です。(1)と(2)は絶対です。とくに、(1)『より良いクロッキーを目的とすること』は、他と隔絶する絶対的な前提条件です。(3)と(4)はで述べたように、アルコールに溺れてクロッキー中止にならないように、強い意志で自分をコントロールし続けて下さい。失敗して、反省することは簡単です。充実したクロッキーという成功体験を積み重ねましょう。ただし、作品作りはチャレンジの連続なので、失敗しても構いません。失敗を恐れず、常に新しいことに挑戦して下さい。それがアルコールを使う目的です。

5 どんな時に使うか
 私の経験を整理すると、次の4つに分類できます。

(1)体調十分で、より楽しいクロッキーにしたい時
(2)仕事や日常の思考モードを、一気にクロッキーモードへ変えたい時
(3)努力しても断ち切れない悪い流れを打開したい時
(4)クロッキーができないほど疲労している時

6 体調十分な時
 体調十分な時に少量飲みながら描くと、比較的良い結果を残すことが多いようです。クロッキー中、たくさんのものを感じているように思います。とくに、午前、あるいは、午後の早い時間に行うと、とても有意義な時間を過ごしているように感じます。これは「クロッキー作品をつくる」というより、「モデルと一緒に豊かな休日の時間を過ごす」感覚です。通常のクロッキーより優雅な時空間を、作品に閉じ込めることができます。普通は失われてしまう平和な日常の時空間を記録する、日記クロッキーの1つです。

図1(右図):休日、日曜日のクロッキー。
同コレクション vol.2009 Apr 26から)

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7 力が入り過ぎる
 飲酒クロッキーのよくある失敗は、力が入り過ぎて、鉛筆の芯が何度も折れることです。筋肉のコントロールが上手にできなくなるからです。強くなり過ぎることはあっても、弱くなることはほとんどありません。
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8 もし、たくさんの人が酒を飲むなら
 クロッキーの現場にいる人全員が、飲酒に同意することが最低条件です。そして、唯一の目的であるクロッキー以外の行為をする人が現われたら、その人は退場です。その手段として、責任者は飲酒せず会場全体の見守る必要があります。このように考えると、複数の人が集って行うクロッキーでの飲酒は難しく、個人で行う場合に限定されるように思います。クロッキーは高度に発達した微妙な知的活動なので、複数の飲酒をコントロールするのは極めて困難だと思います。

9 飲まずに酔う
 ジャッキーチェーン主演の映画『ドランクモンキー 酔拳』は、実在する中国拳法『酔拳すいけん』にもとづいています。これは酔えば酔うほどに強くなる拳法ですが、本当に飲酒する必要はありません。酒を飲まなくても、「飲んだ!」と心に命じ、まるで酔っているな状態、動きをすれば良いのです。これと同じように、実際に飲まなくても飲酒したのと同じような状態を作ることは可能です。実際に飲酒するより、良いクロッキー作品が生まれる可能性が高いので、飲める人も飲めない人もチャレンジしてみましょう。これは、みなさんにお勧めです!

10 参考ページ
 ・同コレクション vol.2009 Feb 1
 ・同コレクション vol.2009 Oct 22

2010年4月25日公開

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