中学校の先生1年生へのアドバイス

中学校の先生1年生へのアドバイス

 このページは中学校の先生1年生のために執筆したもので、別ページ『若手教師のためのワンポイント・レッスン』は教師歴10年ぐらいまでを想定しています。このページは暫定的なものであり、将来『若手教師のためのワンポイント・レッスン』に吸収される可能性があります。

 先生になったばかりの方で、アドバイスを必要とされる方は、遠慮なくご相談ください。相談内容を一般化(匿名可)し、全国の多くの方が応用できるようにこのページで回答させて頂きます。

2012年4月20日(開設日)
名古屋市立萩山中学校教諭 福地孝宏

授業中、時々後ろを向いて、ぼそぼそ話す生徒をどうするか
 問題生徒に対して、明確に注意します。ただし、注意する方法は場合によってかわります。例えば、中学1年生の初めての授業なら、全体の場で「今、後ろを向いて話をしている人がいますが、今は相談して良い時間ではありません。状況をよく考えて判断してください」と、軽く注意すれば十分でしょう。クラス全体に対して、先生の毅然とした態度を示すことが1番の目的です。生徒達は、極めて敏感に先生や友達の出方や様子をうかがっています。

 2時間目の授業なら、問題生徒に近づいて「後ろを向いて話をしてはいけません」と小さな声で注意してみましょう。他の生徒に聞こえないぐらい小さな声でも十分に効果があるはずです。問題生徒が先生の配慮に気付けるなら、これから先うまくいきます。気付けられない生徒は、全体の前でハッキリ叱っても大丈夫な生徒ですから、しっかり注意してあげてください。寂しがりやの生徒の中には、先生の注意を引くためにわざと他人に迷惑をかける子もいます。

 ゴールデンウィークが過ぎた頃、いろいろな場面で先生の言うことを聞かなくなる場合があります。それは、先生の叱り方が4月当初と同じだからです。生徒も先生も同じように成長しましょう。同じ手法が使えるのはせいぜい1週間です。毎日毎時間新しい方法を考え、実践していきましょう。その姿勢を崩さなければ、今の悩みは喜びや充実感へ変わります。

 また、別の視点から、ぼそぼそ話をする生徒を考えてみましょう。静かに勉強したい生徒は、「うるさいなあ。早く先生注意してくれないかな」と思っているはずです。実際に、先生が注意すれば「当然だ。先生ありがとう」と思うはずです。先生になったばかりは、問題生徒に意識が集中してしまいがちですが、大多数を占める静かで真面目な生徒の立場が見えるようになると、自然に自信をもって注意できるようになります。静けさを好む生徒はあまり声を出しませんが、基本的に先生を信頼し、応援しています。

2012年4月20日掲載


板書がうまくできない
 板書計画の前に、1枚の白紙を用意します。そして、1時間の授業で書きたいこと、書かせたいことを全て書き出してみましょう。順番は自由です。思いつくまま全て書き出すことが重要です。その次に、書き出したことの関連性を考えます。同じグループを枠で囲み、グループとグループの関係性を矢印で示します。おそらく、自然に1つの流れができるはずです。もし、どうしても1つの流れにならないなら、複数の流れを作っておきましょう。授業における生徒の発言で、どちらにも対応できるようにしておきます。最終的に、白紙に書き出した内容が全部できれば良いわけで、順番はクラスによって違ってもOKです。むしろ、クラスによって違わなければ、生きた授業になりません。目的地は同じでも、生徒やクラスよって最適な方法が選択できるように、学習内容のグループ化や分類、それらの関係をまとめておいてください。

2012年4月20日掲載


生徒のほめ方がワンパターンになっている(英語の先生)
 「中学1年生にわかるのはvery good !ぐらいだから、ワンパターンになってしまう」ということですが、『中1だから』という発想を捨ててみましょう。good job !  perfect !  nice !  beautiful ! excellent ! supper ! など、思いつく限りの褒め言葉を用意します。そして、何よりも大切なのはジェスチャーです。言葉だけでなく、はでな仕種で生徒をほめたたえます。生徒を心から喜ばせるために、先生は心と身体を最大限に使ってみましょう。言葉は二の次です。もちろん、あなたは英語の先生ですから、いろいろな言葉を知っていれば、生徒は次はどんな言葉が出るだろうかと期待します。

 1ヶ月もすると、いくつかのパターンができてくると思いますが、その時にはあなたの得意技ができているはずです。『最高の褒め言葉はコレ!』 そして、ソレが出た時はみんなが大喜びするものができているでしょう。そうなるように心掛けていれば、自然に得意技はできてしまうものなので、今はいろいろチャレンジしてください。先生が1人で張り切っても生徒が喜ばなければ意味がないので、いろいろ試すことです。自然にできます。1番喜ぶもの、自分にフィットするものを探してください。

2012年4月20日掲載


発音練習で声を出さない生徒がいる(英語の先生)
 口を閉じたままの生徒に近づくと、少し口を開けてくれるそうですが、何らかの大きな改善策が必要です。先生が発音した後に全員でくり返す、というワンパターンの先は見えています。さて、具体的な方策づくりは、発音させたい教材を分析することから始めます。最終的に声を出すのは生徒ですから、生徒が声を出さなければいけない状況をつくってみましょう。男女別にしたり、発音のためのグループを即席につくったりします。とにかく、教材を見て読んでください。前の教材とは明らかに違うはずです。

 また、発音で大切なのはリズムです。テンポよく当てていくことで、大きな声が出るようになります。もちろん、発音もよくなります。英語のリズムは、英語圏の文化そのものなので、英語の時間だけに流れる独特なリズム感をつくりましょう。英語の時間だけに存在する楽しいリズムを期待する生徒が多くなれば、自然に発音練習の声も大きくなるはずです。

 それから、英語には日本語にない特別な音があります。rやthなどです。新しいことを学ぶことは楽しいことなので、音の違いを全面に打ち出しても楽しい時間になります。

2012年4月20日掲載

それでも声を出さない生徒がいる
 もう1度教材を見て、学級全体が躍動するような読み方を工夫してください。今回の教材を拝見すると、A says a, a, ant. ですから、次のようにしてみはどうでしょうか。教室は6列に並んでいるので、1列目から3列目までは『A says 』、4列目は『a』、5列目も『a』、6列目は『ant』。次は、2列目から4列目までは『A says 』、5列目は『a』、6列目も『a』、1列目は『ant』。その次は、3列目から5列目までは『A says 』、6列目は『a』、1列目も『a』、2列目は『ant』。これを6回くり返せば、一巡することになります。これは縦の列ですが、横の行を使っても同じようにできます。とにかく、実際の教材を分析して、可能な限りの方法を考え出し、試してみましょう。

2012年4月21日掲載


書き取り早い生徒と遅い生徒がいる(英語の先生)
 生徒がノートに文字を書く速さは、どの教科でも違います。速い生徒はどの教科でも速く、遅い生徒はどの教科でも遅いものです。さらに、中学1年の英語は、入学前に大きな力の差がついています。
 今回は4月当初の授業で、ペンマンシップを使い『英語の正しい字形を丁寧に書くことを目的したい』ということなので、極端に早い生徒に対して対策を立てましょう。時間を15分確保しているなら、1人ずつ確認できます。先生は教師用机の前に座り、できた生徒は席を立って先生へ見せるようにさせましょう。文字はペンマンシップに薄く書いてあるので、先生が期間巡視する必要はありません。上からなぞるだけですからね。先生は、仕上がりによって形やランクの違う認証を与えます。見本と同じように美しくできたものは最高ランク、そこそこ普通のできなら普通ランク、はみ出たり形が違っている場合は三角ランク、のようにします。合格印の数を変えたり、点数化してもよいでしょう。最高ランクをもらえなかった生徒は、もう1枚書写して提出すれば、ランクをあげることができるシステムにしておきましょう。そのようにすれば、早く提出しても価値がないばかりか、もう1枚書かなければいないことがわかります。

2012年4月21日掲載


板書の文字が黒板に入りきらない(社会科の先生)
 板書は社会科にとって重要です。途中で消さないように1時間で全面を使います。社会科の理解を深める鍵は、時間や空間の関連性をどこまで深めることができるかなので、授業の途中や最後で振り返る必要があるからです。同じことを書直す必要がないように、かつ、できるだけ多くの量を書くことが求められます。
 無計画な板書はオーバーフローします。無駄話で終業のチャイムがなってしまうことと良く似た現象です。先生は事前に板書計画しましょう。計画する時は、授業の途中で生徒の素晴らしい視点が出ることを予想して、少しゆとりを持ってください。黒板に書くことができる文字の量は決まっています。黒板の大きさにもよりますが、およそ縦8行、横3列です。
 板書と授業内容は切っても切れません。板書は、授業の中で先生がとくに重要だと思うものを書くものです。話したこと全てを書くわけではありません。先生の言葉は骨格であると同時に、枝や葉でもあります。これは他教科でも同じですが、社会科は、枝葉が豊かであればあるほど、太い骨格が鮮明に脳裏に焼き付くようになる特性を持っているので、たくさんの言葉を話します。
 さて、先生の言葉のうち、何をノートさせるかは難しい問題です。骨格と重要な枝葉は教科書に載っています。板書は、本当のメモに徹するのか、骨格をまとめ直すものにするか、それとも印象深い枝葉の記録にするか、それは先生の裁量です。いずれにしても、全てを1時間のうちに全て記述することはできないので、学校で利用している教材(教科書や資料集など)を良く分析し、それらをつなぐようなもの、授業を思い出すようなものを中心に板書すると良いでしょう。
 また、板書を写す時間を確保することは大切です。書きながら話を聞くことができない生徒がいるからです。先生は、写し終わった生徒が退屈しない工夫します。予習できるように内容を指示したり、重要語句の書き取り練習をさせたりする、などです。

2012年4月27日掲載


目つきの悪い女子がいる(女性の先生)
 目つきを良くするように、毅然とした態度で注意しましょう。悪い目つきを放置すると、先生が精神的に追い詰められることになります。中学生は先生のことを良く観察しています。先生の弱点を探したり、先生の弱味に付け込むことが非常に得意です。授業において、先生と生徒は違う立場であることを明確に示してください。どんなに小さなことでも反抗的な態度は厳しく注意しましょう。絶対的な立場の違いを示すことができなければ、近い将来、先生は何もできない状態になります。これは先生になるための絶対必要条件です。いわゆる女子vs女子の関係にならないように、まったく違う立場にあることを示してください。

 先生は教える立場であり、生徒は教えれられる立場です。自信をもって教えられるように、教材研究をしっかりしましょう。1時間の授業目標が明確になれば、それを妨害するような行為に対して、ハッキリと注意できるようになります。さらに授業中、目標達成のメドが立てば『ゆとりとしての脱線』ができるようになります。ゆとりがある先生には、悪い目つきをしにくいものです。ゆったりと構えられるように授業の準備をしましょう。

2012年4月21日掲載

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