静電気って何だろう
              
                   2007 夏休み
                   理科準備室

 夏休みが始まってしばらくした頃、愛知県内のとある中学校から、1人の生徒が静電気について質問に来ました。この学外研究は1年生全員が行なっているものですが、事前に下調べをして質問を練り上げてくるなど、大変立派な学習活動でした。

 このページは、その子が選んだテーマ『静電気』にそって調べた内容をアレンジし、全国の中学1年生のみなさんにも勉強してもらうことが目的です。当日は、初対面だったので試行錯誤の連続でしたが、3時間以上にわたって楽しく学習できたと思います。また、実験や学習内容の多くは私の授業記録にもあるものです。とくに、ストローの実験は簡単で、家庭で確かめられるものです。このページをご覧になった皆さんは、是非、自分の家で実験して下さい。

1 静電気はどこあるのだろう。
(1) 全ての物質は、静電気を帯びる可能性がある。
(2) 2種類の物質を擦りあわせると、必ず静電気を生じる。
  ※ 同じ物質どうしの場合、どれだけ擦りあわせても静電気は生じない。
  ※ 同じ物質の場合は、熱が発生するだけである。
(3) 静電気には、プラスとマイナスの2種類がある。
(4) +極、−極になる物質は決まっている。
(5) いろいろな物質の電気(±)の帯びやすさを1列に並べたものを帯電列(たいでんれつ)という。

2 いろいろな物質の帯電列
髪の毛
毛 皮
ガラス ナイロン 木 綿 皮 膚
(指)
金 属
(鉄、銅)
ゴ ム ポリ
ウレタン
塩 化
ビニール
 プラスの電気を帯びやすい物質 ←

→ マイナスの電気を帯びやすい 

 電子を放出しやすい物質 ←

→ 電子を受け取りやすい物質 


※電気の正体である電子気の粒については、後で実験する。
※ある物質が+になるか−になるかは、決まっていない。
※±は、2種類の物質の組み合わせによって決まる。例えば、皮膚(指)について考えてみると、指で塩化ビニールを擦ると+、指でナイロンを擦ると−になる。
※帯電列において、2種類の物質の距離が遠いほど、静電気が発生しやすい。
※同じ物質では、静電気は発生しない。

3 実験:ストローを擦ってみよう!
手順(1) ストロー3本を用意し、1本の中心に針を打つ。
手順(2) もう1本のストローを垂直に持ち、その先端に針を入れる。
手順(3) 残ったストローを洋服で擦り、針を打ったストローに近づける。
手順(4) 針を打ったストローを洋服で擦ってから、(3)と同じ実験をする(写真下)。

上:2本のストローを同時に擦り合わせると、ストローは同じ極どうしになるので反発する。

手順(5) 指をストローに近づけてみる(写真下)。

上:ストロー(塩化ビニール)と指は、反対の極になるので引き合う。
 ※ どちらが+になり、どちらが−になるかは、帯電列によって調べることができる。
 ※ この組み合わせでは、ストローが−極、指が+極になる。

手順(6) いろいろな物質でストローを擦って、同じように調べる。

4 すべての物質が静電気を帯(お)びる理由
 すべての物質を詳しく調べると、とても小さな粒が集ってできていることが分かります。その小さな粒の名前は、原子(アトム)です。原子は自然界に92種類(数え方によっては3000種類)あり、そられの組み合せによって、さらに新しい物質を作ることもできます。つまり、宇宙にある全ての物質は原子からできている、ともいえます。※物質をつくる粒子についてさらに詳しく学習したい人は、私が書いた『実験でわかる化学』を読んで下さい。

 しかし、原子を詳しく調べると、さらに小さな粒からできていることが分かります。その粒の名前は、電子と原子核です。電子は−、原子核は+の電気を帯びていますが、原子全体としては電気的に中性(ゼロ)です。何もしなければ、全ての物質は電気を帯びていません。しかし、2種類の物質を擦りあわせると、電子がどちらかに移動します。髪の毛どうしがさらさら動くだけなら良いですが、プラスチック製の髪どめと髪が擦れると電子が移動します。下敷で擦れば大量の電子が移動しすることは知っていますね。これと同じです。電子をもらった物質は−、電子を失った物質は+になります。

 なお、原子核はさらに小さな粒子からできていることが分かっていますが、これは大学に進んでから勉強して下さい。その一方、電子は比較的単純で、世界中の自然科学者が次のように考えています。

電子とは
・宇宙で最小の粒の1つである。
・−1の電気を帯びた小さな粒である。
・導線の中を流れる電子を、電流という。

5 実験:電子を空気中に飛ばして自分の目で見てみよう!
 次に、電子が空気中を飛ぶ様子を観察しましょう。電子を移動させるためには、大きな圧力が必要ですが、理科室では、誘導コイルという20 000〜30 000V(ボルト)の高電圧を発生させる装置を使います。

手順(1)誘導コイル(上の写真の背景に写っている装置)をセットする。
手順(2)電流を流す(写真下)。


上:誘導コイルの部分。右側を−極にする。家庭用の電圧100ボルト(電子を押し出す圧力)では、電子が空気中へ飛び出す様子は観察できない。


上:電圧を大きくすると、左側から電子が飛び出す。このとき、写真のような光やパチパチパチという音を出す。このように電子が空気中を飛ぶ現象を放電(ほうでん)という。巨大な積乱雲が発生した時の『雷(かみなり)』も全く同じ現象である。この時に擦れあう主な物質は『氷』である。


上:室内の電気を消せば、さらに美しい。この放電現象は、あなたがセーターを脱ぐ時にも起こっている。したがって、室内を暗くして洋服を着替えている時に「パチッ」という音がすれば、同じように放電していることになるので、あなたの身体を使った放電現象が観察できる。その瞬間の撮影に成功すれば、中学生の自由研究としてはかなり上出来だと思う(私が担当の先生なら100点満点を差し上げます)。 このページのTOPへ戻る↑

6 静電気と血液型の関係
 あなたは、よく静電気が発生しますか。あるいは、あまり静電気を感じないタイプですか。静電気の感じ方は人によって違うようですが、それが血液型と関係しているのか調べてみましょう。

 まず、これまでの説明や実験から、全ての物質は静電気を持つ可能性があることが分かった思います。皮膚、髪の毛、セーター、木綿の下着、ナイロンの靴下など、この世の中にあるすべてのものは物質であると考えることができ、人が動けば摩擦によって静電気を帯びます。したがって、静電気を良く発生する人は、良く摩擦する人、良く動く人であると言えます。ちょこちょこ動き回る人は、静電気人間になりやいのです。逆に、動かなければ、静電気は発生しません(電子も移動しません)。

 次に、帯電列で説明したように、電子の移動しやすさが違う物質を組み合わせている人は、静電気をたくさん発生させます。具体的には、いろいろな素材からできている洋服やアクセサリーを組み合わせている人は電気を良く発生させます。

 この2つを総合すると、静電気人間は『お洒落が大好きで活発な人』ということになります。静電気の発生しやすさと、人の性格は関係します。しかし、静電気と血液型、および、血液型と性格は全く無関係です。生物学的、物理学的には全く関係がないことが分かっています。ただし、社会学的には「A型だからコウあるべき」という決めつけによって、血液型と性格が一致してしまうことはあります。ただし、これは日本社会だけに見られる社会現象です。男の子はカクあるべし、女の子はコウしなければならない、という考えと同じです。

 実際、血液型を調べる方法は非常にたくさんあり、みなさんが問題にしているABO式血液型は、それらの1つに過ぎません。したがって、1つの血液型だけによって、人の複雑な性格を決定付けることは非科学的なことです。外国の友達に「あなたの血液型は何?」と質問すると、「私の血液を何に使うつもりだ」と怪しまれることになります。

ヒトのいろいろな血液型
・ABO式
・Rh式
・キッド式
・MN式
・ボンベイ式

7 静電気を防ぐ方法
 静電気は日常生活のどこにでもあり、いつでも発生しています。しかし、それを感じることは不快なので、防ぐ方法を紹介しましょう。

 もっとも効果的な方法は水を使うことです。物質『水』は、静電気を非常によく逃がしてくれます。湿度100%の部屋なら静電気を感じることはほどんどありません。なぜなら、空気中に大量に存在する水蒸気が電気を逃がしてくれるからです。このことは、湿度が低くて乾燥している冬に、静電気が発生しやすことも説明します。したがって、加湿器で湿度を上げると静電気を感じ難くなります。

 同じように、肌に保湿クリームを塗ることも悪くありません。かさかさ肌の人には効果があるでしょう。しかし、必要以上に塗ることは肌の発汗作用や良質の脂質を分泌する作用を押さえるので注意しましょう。健康な若い人は、何もしなことが大切です。とくに、中学生は何も必要ありません。汗が出るまで動き回わって下さい。

 この他にもいろいろな方法がありますが、水によってほとんどが解決します。潤いのある快適な生活になるよう、いろいろな工夫をしてみましょう。それでは、今日の勉強はここまでにして、みなさんお元気で! さようなら。


上:勉強を終えて、記念撮影。お疲れさまでした!

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