このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第8章 学校教育を超えた少年犯罪

15 教え子を犯罪者にさせないために

1 犯罪とは
 犯罪とは、罪を犯すことです。刑法で定められている罪の種類は40種類以上、大人と中学生の区別はありません。子どもだから、生徒だからという理由で、変わりません。ただし、20才以下の少年は、刑法ではなく少年法によって裁かれます。

2 教え子が一線を超えたとき
 毎日のように不幸な事件が新聞やテレビで報道されています。犯罪者の顔写真が掲載されることもあります。私の教え子の中にも、不幸にして犯罪者としてマスメディアで報道されたことがありました。本当に悲しいことです。人は誰でも純真無垢な赤ちゃんとして生まれ、その瞬間から環境にこたえるようにして育ちます。良い時も悪い時もあります。もし、中学の時に大きく道を踏み外し、人として許されない一線を超えたなら、教師は決断すべきです。先生の指導にしたがえなくなった場合、先生は自分の限界を認めてください。教師は、まだ少年である教え子に対して、決断すべき時があります。

3 犯罪を自習させてはいけない
 生徒が間違った学習を始めたら、即刻停止させてください。学習の結果、それが自分の心身に染みついてしまう前に、1秒でも早く制止させてください。間違った道を歩くことは、それを学習することです。他人の迷惑を顧みない行為、暴言、暴力、窃盗。これらを反復練習すれば、嘘が上手くなり、犯罪の手口が巧妙になります。精神状態も変わります。子どもの学習能力が大人よりも高いことは、知っているはずです。先生は、負の学習をやめさせるために外部機関へ援助を求めてください。教え子に犯罪者の道を歩ませてはいけません。自分の力を過信したり、良いことばかりを考えていると、取り返しがつかない事態になることがあります。

4 みんなで協力して子どもを育てよう!
 保護者、スクールカウンセラー、児童相談所、病院、警察、弁護士など、考えられる限りの人や機関に相談しましょう。自分ができないことは、みんなで協力していくのが人間社会です。先生の他にも教育できる人、教育への情熱を持っている人はたくさんいます。はっきり言って、私たちの社会全員が子どもを教育していこう、と努力しています。少年法はそのためにあります。学校は教育の中心ですが、親(保護者)に限界があるとの同じように、限界があります。家庭や学校の教育レベルを超えた問題行動については、それを専門に扱う機関に委ねましょう。それが教え子のためです。

5 身体の病気と同じように考えてみよう
 身体の病気と同じように考えれば、第1は予防です。そして、「かぜかな?」と思ったら、早期の受診です。発病していたら治療です。かぜをこじらさせて肺炎になる前に、入院することもあります。危篤状態になって集中治療室に入るようでは、親や教師の判断ミスです。本人の意向と無視してでも病院にいくべでした。心の異常は目に見え難いので、完全に壊れてしまい、犯罪者になってしまう前に、早期発見、早期治療です。それが伝染病なら、他人に感染して社会問題となるまえに決断するべきです。保護者は先生は、一般人や弱い生徒の犠牲者を出さないように、勇気をもって決断するべきです。決断のポイントとして、別ページ『対教師暴力には勇気をもって!』をご覧ください。

6 先生は教え子が大好き
 先生は教え子が大好きです。生徒を可愛く思います。実の親より盲目的な愛情を注ぐ先生もいます。私自身も「自分が関わった全ての生徒に幸せになってもらいたい」と願い、必死に頑張ります。しかし、その願いと努力が届かないことがあります。それは事実であり、現実です。先生は、自分が万能でないことを知るべきです。自分の感情、欲望によって何もかも実現できると思ったら大間違いです。たかが先生、先生は教えることしかできない。それぐらいの感覚を持った上で、生徒に愛情を注ぎましょう。

7 最高の愛の表現は、話を黙って聞くこと
 悪いことをした生徒は、何らかの理由があります。その話を聞いてみましょう。授業妨害、覚醒剤、喫煙や飲酒、窃盗、無免許運転、脅迫、暴力など、すべての問題行動には原因があります。「どうしてA君を殴ったの?」「バイクを盗んだことには、何か理由があるように思うんだけれど」など、優しく声をかけてみましょう。問題行動の背景を生徒が話しはじめたら、しっかり聞いてください。何時間でも聞きましょう。説教は必要ありません。話をしているうちに、生徒は自分で自分を反省し、言動を改善していくものです。

8 教え子はわかってくれる
 
教え子の経歴に傷がつくからという理由で、告訴をためらう先生がいますが、甘い考えや判断が『犯罪者への道』を歩ませる結果になることがあります。生徒は先生を恨むと思いますが、何10年か後には感謝するでしょう。ただし、それまでには何年ではなく何十年というスケールが必要です。それだけの時間が必要だけれど、「先生の決断は正しかった」と本人の口から聞けることがあります。ただし、10年待ってもダメなら、30年、50年とかかるでしょう。それほど気が長い話ですが、教え子が、他人の気持や他人にかけた迷惑がわかるようになった時、社会のしくみが理解できるようになった時、きっと感謝されるはずです。

2011年1月25日

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