クロッキーF美術館コレクション vol.2009 July 7-2

27 pictures
A3 (420 x 297, thin paper)

画 材: 鉛筆、A3上質紙
時 間: 3分、2分固定
モデル: えーちゃん

note
 クロッキー前半は、調子が上がらず苦戦していたが、後半の途中から、昨日考察していた『2つの主体の一致』を思い出し、実践した。その方法は次の通りである。

モデルと自分をシンクロさせるための『方法』
(1)モデルの身体的特徴、および、ポーズを無視する
(2)モデルが表現しようとしていること(感じていること)に着目する
(3)私が、モデルから感じたことを表現するために、
 (ア)私の心と、腕や手や指の筋肉を直結させる
 (イ)鉛筆の先端が触れる紙、画面に定着しているであろう顔料を感じる
 (ウ)顔料を画面に定着させている筋肉(=私の欲求)が満足するまで描く
 (エ)できるだけ画面を見ないようにする
 (オ)モデルを観て、感じ続ける
(4)(3)の(オ)の感触を私の心へフィードバックする作業を繰り返し、モデルとの一致を継続させる
(5)感じるポイントを細部へ移し、同じ作業を続ける
(6)時間によって変化するモデルの感情を感じ、画面に定着させる
(7)描いている途中に大きな発見をしても(出来事があっても)、心が大きくぶれないようにする

 上記の作業を続けているうちは、本当に魅力的な線や形態がいとも簡単に生み出されていた。それは、クロッキー中に画面を一瞥した時にわかった。たった1秒に満たない確認でも、その画面の残像が脳裏に完全に定着していたからである。

 しかし、欲や色気を出して、ほんの少し修正しようとしたり描き込もうとした時、取り返しのつかない失敗をおかす危険性を感じた。その欲望の多くは、モデルの身体的特徴を入れたい、というものだ。それは『2つの主体の一致』とは全く異質なことなので、それを行うなら1分以上必要だろう。急いで描き加えることは大失敗を意味する。

 なお、クロッキーF2回目のモデルさんは、体調不十分にもかかわらずポーズを頑張ってくれたので感謝したい。

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補足
 この方法は、十分な訓練を終えた(基礎技法を持っている)人なら誰でもできる。この方法を使えば、私と同じような体験をし、同じようなクロッキーを描くことができる。これは科学的な『反証可能性』を示すので、私は他の誰かと交換しても良いことになる。描き手は『誰とでも交換可能な科学的かつ主観的な主体』としてモデルと向き合い、モデル自身も『誰とでも交換可能な科学的かつ主観的な主体』になる。もちろん、2つの主体の個性は、互いに共鳴しあうことで、どこにもない新しい個性を生み出すから、完成したクロッキーは常に新鮮で新しい。人類の歴史(時間)は留まることなく一方向へ進んでいるからだ。

 この実践は、モデルと私(精神、および、平面に描画するための身体)の一致であり、このレベルに到達している作家は、無意識の人々を加えれば膨大な数になる。ただ、意識しているかしていないかの問題に過ぎない。

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