第1章 クロッキーの描き方(基礎)
よくあるクロッキー1 よくあるクロッキー
右図のように、ポイントからポイントに向って「さーっ」と描く線描は、よく見かけるクロッキーの1つです。これには専門的な知識と技術が必要です。あなたが職人としてのアーティストを目ざすなら、努力してこの技法を身につけて下さい。
2 線描のために必要な才能
この技法を修得するために必要な才能は『忍耐と努力』です。もし、あなたが十分に勤勉でなら、1年〜数年で右図のような線描クロッキーが描けるようになるでしょう。ただし、忍耐と努力だけでできるということは、『誰でも同じ結果になる』『誰の作品かわからないものになる』ということをお忘れなく!右のクロッキーは、館長Fが描いたものです。いつものクロッキーを見慣れている人は、信じ難いと思いますが、事実です。描いた私も信じられないくらいです。
3 通過点を怖れないこと
あなたが完璧な知識と技術を修得し、誰もが納得する『本物そっくりのクロッキー』が描けるようになったとき、あなたの個性はどこにもありません。しかし、あなたの最終目標がはっきりしているなら、怖れることなく『没個性』を通過点とし、それを目標としましょう。それがいち早くマスターする秘けつです。4 没個性の可能性
完全なる没個性は、これからどのようにも開花する無限の可能性を秘めています。ここでもう一度、あなたが何をしたいのか、何を目ざしているのか良く考えて下さい。私が描いた線描とあなたが描いた線描が完全に一致するようになりたいなら、がんばって努力しましょう。しかし、もっと大切な目標があるなら、それに向って努力すべきです。私たちには、それぞれたくさんのやるべきことがあるのです。人生という時間は限られています。5 個性のある線描画
ある作家の独特な見方や表現を『個性』といいます。悪く言えば、おかしな癖(見方、描き方)が個性です。したがって、個性を感じる線描画には、何らかの癖が付着しています。どんなに忍耐強い作家でも、ごく自然に自分の癖を出してしまうものです。あなたの個性は、どれだけねじ伏せようとしても自然に湧き出てきます。繰り返しますが、怖れることなく没個性を目指して努力ましょう。意図的な個性はいつでも追加できます。6 線描を自分の悪い癖にしないこと
その一方、努力して覚えた技法が『悪い癖』になることがあります。なぜなら、この線描をマスターすると、「上手ですね」「私もこんな風に描きたい」と他人から言われるようになるからです。さらに、彩色したりあなたの癖を少し付加したりするだけで、大勢が満足する『売り絵』が完成します。誰もが納得するものは、よく誉められよく売れます。ここで厳しい修行をやめる人はたくさんいますが、私はそれをとても残念に思います。強い勇気と前人未到の努力で、本当の個性を追求し続けましょう。7 具体的な描き方
1本の線によるクロッキーの描き方は、別ページ『1本の線で描く方法(線描)』にあります。2010年3月8日公開