クロッキー F 美術館

第1章 クロッキーの描き方(基礎)
1本の線で描く方法(線描)

1 はじめに
 このページの前に、線描の心得を記した『よくあるクロッキー』をご覧下さい。そして、この技法がデッサンと区別できないこと、この技法を「本物そっくりに描くためのデッサンの練習」と考える人がいることを知って下さい。なお、本物そっくりのデッサンと隔絶するクロッキーについては、第4章 Fのクロッキー技法をご覧下さい。
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2 カメラで撮影するように見る
 機械になりきって下さい。一切の人間的な感情、知識や経験を消去して下さい。さもないと、あなたは興味ある部分ばかり見つめたり描き込んだりすることになるでしょう。
関連ページ
標準レンズでモデルに近づく
モデルとの距離

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3 人体の特徴を表すポイントを覚える
 次に、本物らしく見せるための『つぼ』、ポイント(点)を覚えます。これはたくさん知っているほど有効です。このポイントは、カメラでも肉眼でもよく見えないものです。ニセモノを本物らしく見せる、絵画としてのポイントです。右下図はその一例ですが、同じポイントでも見る角度や状態によって、その位置が微妙に変化し、ポイントの意味が変わります。重要なポイント見えないときは無理せずにあきらめ、その他のポイントをより詳細に把握しましょう。それが唯一の方法です。
関連ページ
クロッキーゼミ2010-6の記録
・固定ポーズを注文する

4 ポイントは二次元のものとして認識する
 各ポイントは2次元のものとして認識します。立体的に捉える必要は一切ありません。ポイントとポイントの位置関係を平面的に、角度と長さ(比例関係)だけで把握しましょう。
関連ページ
点、空間への数学的アプローチ(ポイント=点)
・アングル(角度)を求める
・プロポーション(比率、割合)を求める

5 ひたすら輪郭線を追い求める
 ポイントからポイントへ、ひたすら輪郭線を追い求めます。人間的な感情や感覚を完全に排除して下さい。平面上に、2点間の長さと角度を正確に写します。
関連ページ
数学における「線」を考える(ポイント=点)

6 線の強弱で立体感を出す
 ポイントとポイントをつなぐとき、手前を強く、奥を弱くすれば立体感が現れます。奥行き(前後の関係)は、2点間を結ぶ線の強弱で決まるのです。しかし、ラインの途中の強弱よりも大切なのは、ポイント(点)です。ポイントをしっかしさせるほど、より自由な生きた線が描けます。

7 線を変化させる要因
 線を変化させる要因は3つあります。1つはで説明した奥行き(前後関係、立体感)、あとの2つは『量感』と『質感』です。下の表1は、それらをまとめたものです。しかし、実際はそれらが複雑に絡み合っているので、線を変化させる原因は現場で分析するしかありません。なお、「すべての要因が同じなら線は変化ない」のですが、そのような部分は人体のどこを探してもありません。すべての線は変化します。

表1 線を変化させる要因

表現内容

線を変化させる要因
ポイント(点)の内容
(1) 立体感 ・ 奥行き、前後関係
(2) 量 感 ・ 体重や重力の大きさ
・ 重心
・ 密度
(3) 質 感 ・ 骨、筋肉
・ 脂肪、内臓、皮膚
・ 目、耳、鼻、口などの感覚器官

8 線を変化させる方法
 絵画らしい線は、『筆圧』と『スピード』を変化させることで生まれます。強く→弱く→強く(弱く→強く→弱く)、速く→遅く→速く(遅く→速く→遅く)、これだけです。強と弱、緩と急の繰り返しです。それらを交互しかありません。ただし、それらの変化量と組み合わせは無限です。モデルを良く見て、変化させる要因を表1を使って調べて下さい。原因が判れば、自信をもって描くことができるはずです。
・線を変化させる方法
・生きた線を描く方法

9 どちらのポイントから描くか
 例えば『かかと』を描く場合、足の裏から描く場合と、アキレス腱から描く場合では効果が違います。どちらの方がより良いかは、ポーズによって変わりますが、線の『変化量』は同じです。この問題は「より良いく描くため」というレベルなので、描きやすい方から描けば良いでしょう。右利きと左利きの人によっても変わります。

10 関連ページ
 (1) 量感を描く方法(モデリング)
 (2) 消す、という作業

2010年3月9日公開

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