クロッキー F 美術館

第7章 photograph
標準レンズでモデルに近づく

1 標準レンズって何?
 標準レンズは、肉眼で見たときと同じように撮影できるレンズです。昔のスチルカメラ(35mm)を使っていた人はすぐに分ると思いますが、焦点距離50mmのレンズです(35mmサイズカメラの場合)。ピンとこない人は、カメラの画面を見ながらズーム倍率を変えて下さい。写る範囲が広くなったり狭くなったりすると同時に、モデルが小さくなったり大きくなったりすることがわかるでしょう。このうち、肉眼と同じように見えるズームの位置を『標準』といいます。ズームのほぼ中間になると思います。

広角レンズ 標準レンズ 望遠レンズ

.肉眼と同じ

2 広角レンズと望遠レンズ
 広角レンズや望遠レンズは、肉眼では絶対に見ることができない映像を撮影できます。標準から外るほど、日常の世界とは違うカメラ独特の世界になるので、面白い写真が撮れます。その一方、不自然な違和感を感じることも事実です。下の表1は、肉眼で見た場合(標準レンズで撮影した場合)と比較した場合をまとめたものです。

表1 ズームしたときの変化

広角レンズ 標準レンズ
(肉眼と同じ)
望遠レンズ
小さくなる モデルの大きさ 大きくなる
強調される 遠近感 なくなる
広くなる 撮影できる範囲 狭くなる

 広角レンズは『遠近感が強調される』ことがわかりますか? また、モデルの近くから撮影するので『画面がわい曲する』こと、さらに、望遠レンズより『狭いない部分しか写らない(モデルの正面が強調される)』こともわかりますか?

同じ範囲になる
ように
撮影したもの

 望遠レンズは『遠近感がなくなる』ことがわかりますか? また、モデルから離れて撮影するので『平面的に写る』こと、さらに、広角レンズより『広い部分が写る(モデルの真横まで見える)』こともわかりますか?

3 標準レンズで画面いっぱいに撮る
 カメラ撮影の基本の1つとして、画面いっぱいに撮影することがあります。上下左右に余白があると、遠慮したような腰がひけた画面になり、迫力がでません。それなら、望遠レンズを使って画面いっぱいにすれば良いかというと、違います。迫力ある写真になることは事実ですが、うっかりすると、覗き見しているような見えます。したがって、標準レンズを使い、あなたがモデルへぐいぐいと迫って下さい。限界まで近づくことが基本です。ちなみに、私は広角レンズで画面いっぱいに撮ることが好きです。ほんの僅かなカメラアングル(角度)やポジション(位置)の違いで、画面が劇的に変化するからです。

4 撮影後のトリミング
 とりあえず広角レンズで撮影しておいて、後から必要な部分だけを切り取ろう(トリミングしよう)という考えはダメです。シャッターを押す時点で決定していなければ、写真は真実から遠ざかります。その写真が撮影後にトリミングしたものかどうかは、圧縮率と画角(画面の広さ)の関係でわかります。

5 石膏デッサンと比較する
 『標準レンズでモデルに近づいて画面いっぱいに撮影すること』は、石膏デッサンにおいて、『自分の目で石膏全体が一目で見える位置に近づいて描くこと』と同じです。画学生たちは、感覚的に石膏像と自分の距離が大切であることを感じていますが、それは、自分の目を標準レンズとして見ているからです。石膏に近いと『広角レンズ』、遠いと『望遠レンズ』で撮影したようなデッサンになります。なお、モデルを描くときの距離は、別ページ『モデルとの距離』をご覧下さい。

2010年3月11日公開

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