クロッキー F 美術館

クロッキーの描き方
左右の違いを描き分ける

1 いろいろな線で描く
 モデルを良く見て、それぞれに部分に最適な線で描くことは、線描クロッキーの基本です。骨を感じる部分はしっかりと、脂肪と感じる部分はたっぷりと、筋肉を感じる部分は緊張あるいは弛緩を描くようにします。

図1(右図):背筋、張りを感じる腹部、弛緩した筋肉、緊張した筋肉の4つを描き分けたクロッキー。もちろん、身体の各部はすべて違うので、どこをとっても同じ線はありません。全て部分を違うように感じ、違う線で描くようにします。
F美術館コレクションvol.2010 May 3から)

2 左右を違う線で描く
 手始めに、1つの部分の左右を違う線で描いてみましょう。図1を見て下さい。青の矢印2本は、胴の左右を表していますが、1本は「ぐぐっ」と、もう1本は「きゅきゅっ」と描かれています。赤の矢印2本で示された部分は太ももをですが、1本は「ぼわーん」と、もう1本は「しゅーっ」と描かれています。このように、身体のある部分を描くときに、左右の違いを発見して、それを線の違いとしを描き分けるようにしましょう。

.

3 左右の違いを見る、感じる
 左右の違いを見たり感じたりする方法は、大きく2つに分けられます。1つはモデルを物体としてとらえる客観的な見方(本物そっくりのデッサン)、もう1つは作家の主観による感覚的な見方(クロッキーF)です。この2つの方法は、いずれも訓練と努力によって視点を増やすことができます。しっかり勉強して、たくさんの見方や感じ方ができるようになって下さい。

4 客観的な見方
 次の表1は、モデルの各部分を客観的に見たときの線の強弱をまとめたものですが、線の強弱は『太さ』『濃さ』などたくさんの要因によって決まります。他の線との関係も重要です。

表1 客観的にモデルの各部分を見るポイントとその部分の描き方

モデルの各部を
見るポイント

.
線の描き方(強弱)
強く描く 弱く描く
体重がかかっているか

い る
(しっかりした線)
いない
(とりあえずの線)
筋 肉

緊張している
(鋭い線)
弛緩している
(たっぷりとした線)
身体が縮んでいるか
伸びているか

縮んでいる
(太い線)
伸びている
(細い線)
作家との距離

近い部分
(明確な線)
遠い部分
(不明瞭な線)
外からの光

当っていない(暗い)部分
(濃い線)
当っている(明るい)部分
(薄い線)

図2(左図):複数の条件がからんだ線を含むクロッキー。
 実際の各部分は、複数の要素がからんでいるので、どのような条件があるのか分析してみると良いでしょう。ただし、実際のクロッキーでは、それだけの時間がないので、感覚的に捉えられるまで訓練することが大切です。
F美術館コレクションvol.2010 May 2から)
 

.

5 主観的、感覚的な線の質の違い
 主観に絶対的なものではありませんが、あなたの観察力や感性が優れてくれば、よりたくさんのことを見たり感じたりできるようになります。強弱の幅も大きくなります。

表2 主観、感覚的にモデルの各部分を作家が感じるポイントとその部分の描き方

モデルの各部を
作家が感じるポイント

.
線の描き方(強弱)
強く描く 弱く描く
作家の気分

乗っている
(意志をもった自由な線)
乗っていない
(とりあえずの線)
温 度

温かい
(たっぷとした線)
冷たい
(鋭く、細く、弱い線)
硬 さ

硬 い
(ごつごつした直線)
柔らかい
(ゆったりとした曲線)
エロさ

あ る
(自由に感じた線)
な い
(正確な線)
匂 い

良い匂い
(非常に自由な曲線)
悪い匂い
(描かない方が良い)
※ 主観や感覚による左右の差異は、その強弱を逆にして表現しても悪くありません。もしろ、それをしっかり意識した上で、表現する時に無意識に逆にしてしまった時ほど、面白い表現効果を得られるというものです。

6 必ず左右で違いをつけよう!
 そもそも、左右が完全に対照な人はいません。鏡をじっとご覧下さい。あなたの左右の目の大きさだけでなく、まつげの生え方、まばたきの仕種も違います。お箸を左右の手で同じように使える人はかなり少ないと思います。したがって、モデルを使ったクロッキーをする前に、自分の非対称性をたくさん探して下さい。そして、全てが非対称であることを確認してから、クロッキーを始めましょう。実際に分らなくても、『とりあえず左右を違うように描く』という癖をつけてみましょう。だんだん違いがわかるようになると思います。違いのわかる人、になりましょう!

図3(右図):ある日のクロッキー会の1番初めのクロッキー。ウォーミングアップを兼ねて、いろいろな見方と描き方をしました。肩ならしよりも、あなたの見方や感じ方を慣らすことの方が大切です。とにかく全ての違いを見つけること。違いを感じること。それ表現すること。
 左右の違いを見つけることは基本です。
F美術館コレクションvol.2010 april 21から)

2010年5月4日公開

↑ TOP


Copyright(c) 2010 All rights reserved.