クロッキー F 美術館

第1章 クロッキーの描き方(基礎)
複数モデル(群像)を描く方法

1 主役を決定する
 複数モデルの中から、主役を決定して下さい。あるいは、絵画のテーマを決めて下さい。それが最も重要な作業です。何が主役であり、何がテーマであるかは、あなた自身が決めるより他に方法はありません。これができない場合は、何もできません。群像が苦手な人とは、つまり、自分が何を描きたいかわからない人です。自分がやりたいことが分かれば、それを実現(表現)する方法のいくつかは私が教えてあげましょう。この最も大切な部分の決定には、クロッキー以前の豊かな人生経験がものをいいます。決めれない人は、結局のところ、何もできない(描けない)のです。

右:初めての女性ダブルポーズのとき、私はその美しさを見るだけで満足してしまった。視点が定まらず、何を描きたいのか分からないまま描き始めた(クロッキーF美術館コレクション 作品群2003 may 7から)

2 基本は『1つの塊』としてみること
 群像は「モデルどうしの関係」が大切なので、「複数のモデルを1つのもの」として捉えます。1人1人のモデルをばらばらに見たり、個々モデルを気にしたりするのでは、群像を描く意味がありません。実際に描く時は、群像を「人ではない塊かたまり」あるいは「巨大な老木」として捉えると、結果として個々の関係が見えてきます。「真ん中より少し左に大きな塊があり、そこから3本の太い枝が右に傾きながら伸び、真ん中の枝が途中から真横に伸びたと思うと、真下にすーっと降りて、右端にある小さな塊へ向ってゆるやかに曲り、、、」というように描き進めてみましょう。主役から描くことは当然ですが、主役とつながりにこそ、群像の価値があることを忘れてはいけません。

3 各モデルの身体のつながりを修正する
 全体としての関係(つながり、配置)ができたら、個々のモデルへ視点を写します。そして、身体としてのつながりや関係を修正します。修正時には、1で捉えた「1つのものとしての関係」も同時に修正しなければいけません。優先すべきことは、各モデルの身体バランスではなく、全体の関係です。なお、2と3の作業時間は全体の数10%に抑えて下さい。10分クロッキーなら数分間です。

4 主役と引き立てる
 大まかな位置関係を捉えたら、主役を引き立てるように描き込みます。。複数モデルによって、1つのテーマを表現する場合は、そのテーマが見えるように描き込みます。しかし、全てのモデルがほとんど同じように見える場合でも、どこかに焦点を当てた方が鑑賞者としては見やすいものです。

 なお、主役と脇役が明確な場合は、初めに主役から描きはじめる方法もあります。その場合でも、モデルどうしの関係がもっとも重要であることには変わりありません。主役と脇役ではなく、両者の関係を描くようにして下さい。

 右:私はモデルどうしの関係を読み取ってから描いた(クロッキーF美術館コレクション vol.2009 jan 21から)

5 参考ページ
 ・ 私の群像クロッキーのあゆみ
 ・ 群像クロッキーの楽しみ方

2010年1月24日公開

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