クロッキー F 美術館

第6章 美術モデルのためのお話

芝居を演じる

1 モデルにとって楽しい時間
 ほとんどの美術モデルは「クロッキーは楽しい」と言います。それは自分でポーズを決め、主体的に時間を演出できるからです。固定ポーズは、自分の意志とは無関係に身体を拘束されますが、クロッキーには自由意志があります。モデルは作家と対等、あるいは、作家より高い位置に存在します。クロッキーの主導権はモデルが握っている、ともいえます。

2 ストーリーのある時間にする
 主導権を全面的にモデルへ任せることを望むクロッキー会なら、ある1つの物語(ストーリー)を演じてみましょう。例えば、朝起きてから学校へ行くまでの様子、学校の化学の授業で危ないを実験をする場面、ランチルームでの出来事、サークルでの活動、バイト先でのハプニング、友達とケーキパーティーなど、『ある1日の私』を演じてみましょう。ポーズのネタに尽きることはありません。動作を美しく魅せる方法は、別ページ『自然な動きを輝かせる』に書いてあります。

3 場面設定は詳しくする
 このようなストーリーを作るポイントは、季節(気温、湿度、天気)、時間、場所(周りの風景、近くにあるもの)、その他の登場人物などをできるだけ細かく設定することです。ポーズをしている間に、次の場面を考えるもの一興です。

簡単なストーリー
(1) 日曜日に昼下がりに近くの公園へ出かける
(2) ベンチに座って本を読む
(3) 犬と散歩している人に声をかける
(4) ベンチでうたた寝する
(5) 偶然通りかかった友達に起こさて驚く
(6) いっしょに美術館へ行く
(7) 観賞後、お茶をする

その他の例
(ア) 大金持ちの家に泥棒に入る場面
(イ) 野生の馬を捕まえる場面
(ウ) 宇宙船に乗って月を探索する場面
(エ) 最近見た映画の場面
(オ) 古代ギリシャ神話の一場面

4 描き手のために演じること
 芝居の内容に熱中して、描き手を置き去りにするようなことをしてはいけません。描き手に楽しんでもらうことを第1の目標にしましょう。さもなければ、自分勝手な独り芝居になってしまい、クロッキーという本来の目的が失われます。もし、このような物語性をもったポーズ(クロッキー・ポーズ)をするのが初めてなら、事前に『あらすじ』を伝えておくのも悪くないでしょう。

5 心の動きを大切に
 ジェスチャーゲームは動作を使って相手に何かを伝えるゲームです。例えば、正月前に餅つきをする人、プールに飛び込む人、ロダンの考える人、などを動作を演じます。しかし、これらは基本的に単発なので、場の流れを大切にするクロッキーには合いません。時間の流れをもつ芝居とも違います。クロッキーの醍醐味は、連続したポーズの内側にある『心の動き』であることを忘れてはいけません。

 ジェスチャーゲームで尻取りゲーム! は面白い企画ですが、10ポーズで十分です。

2010年1月18日公開

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