クロッキー F 美術館

第5章 クロッキー心理学
1対1の共同作業

1 モデルがつくる時空間を尊重する
 私はモデルと1対1で描く時、ほとんど位置を変えません。モデルが私のために創ってくれたポーズ(時間と空間)を尊重したいからです。私の移動は時間のロスではなく、モデルが創った空間の破壊を意味します。「うーん、これは難しい」「インスピレーションが湧かない」と思う時でも、良い流れをつくり、それなりの結果を残すことを優先します。連続して短時間のうちに何枚も描くクロッキーは、常に100%を目ざすより、全体としてより良い結果を狙うべきだからです。私は「モデルは私のためにベストを尽している」と信じています。

2 移動しない、逃げない!
 モデルとの距離が1メートルに満たない場合、僅かな視点の変化が劇的な変化をもたらします。こんな時、私は視点を変えたい欲求に駆られますが、移動して上手くいった経験はほとんどありません。どんな場合も、自分に与えられたものを有り難く頂戴する精神が大切です。自分では一切動いていないつもりでも、リズムに乗っているときは、無意識のうちに(モデルも私も気づかない状態)移動しているかも知れないので、絶対に動かない! と肝に銘じるぐらいで適当です。逃げない姿勢が大切です。

3 1ポーズの時間
 タイマーを使わず、2分〜10分の範囲で描きます。とても短い時間からスタートすることもあるし、その逆もあります。身体に負担がかかるポーズの場合は2分より短いこともありますが、モデルが疲れてぐったりしているときは20分以上描くときもあります。その日の体調と気分にあわせて、フレキシブルに変わります。1回のクロッキーで、合計20枚前後描きます。

4 休息時間はフレキシブルに
 休息方法は、モデルによって全く違います。基本的に20〜30分を目安に取りますが、1時間以上連続してポーズすることを好むモデルもいます。2時間休息なしで描いたこともあります。休息のタイミングは、どちらか一方が疲れた時、ポーズに困った時、鉛筆や紙がなくなった時、などです。

5 モデルがBGMを望んだら、、、
 私はBGMを必要としませんが、モデルが望むならBGMを使います。それは私が紙や鉛筆を必要としているのと同じように尊重すべきことです。私が嫌いだからという理由で一方的に退けるものではありません。モデルがBGMによって集中できるなら、私も同じように高い集中力を得ることができるはずです。あなたがどうしても静寂の中で描きたいなら、モデルと対等の立場で話し合って下さい。

6 モデルに助けてもらう、描かせてもらう
 クロッキーは生きたモデルを描くことですから、1人ではできません。私は基本的にモデルに描かせてもらう立場です。私は自分1人では描くことは嫌いで、モデルからエネルギーをもらいながら描いています。

7 比較するページ
 別ページ『モデルと作家集団がつくるハーモニー』は、大勢で行うクロッキーについて記しました。

2010年2月18日公開

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