クロッキー F 美術館

第4章 Fのクロッキー技法 
顔の表情だけで描く

1 どうしても顔を描きたいとき 
 どうしてもモデルの顔を描きたくなる時があります。顔に集中してしまい、他が全く描けなくなる時があります。そんな時は、顔だけを描きましょう。描きたくないものを描いてもろくなものは出来ません。そのかわり、顔の表情だけで、モデルのポーズが分かるようにします。やればできます。あなたが見ているのは、顔の表面だけではないはずです。口を開けて放心しているのではなく、想像力をたくましくして何かを感じているはずです。それをクロッキーしましょう。

右写真:顔だけクロッキーもありですよ(クロッキーゼミ2010-7の記録から)

2 私たちはたくさんの顔を知っている
 人は、こらまでに数え切れないほど大勢の顔を見ています。たくさんの顔でなくても、毎日家族の顔を見ていれば、微妙な変化を感じ取るれるようになります。これは、顔の表情と行動の変化をよく観察、学習したからできることです。同じように、犬や猫の表情を識別できる人もたくさんいます。もし、メダカやカブトムシを毎日観察を続けている人がいるなら、その表情の変化がわかるようになるかも知れません。(外骨格に覆われたカブトムシは表情筋を持っていませんが・・・) 

3 名画における顔の表情
 名画は全ての要素が関連しているので、顔の表情1つでモデルの衣服や動作や背景を感じるものです。否、もっと複雑な感情や思想を感じるものです。実際、顔の表情がなければ、モデルの内面を的確に表現することは至難の技です。古く傷んだ名画を修復するとき、身体やポーズや背景はある程度描けるものですが、失われた顔や表情を推測して描くことはほとんど不可能です。

4 顔が描ける画家は一流になれる
 昔から、顔が描けない画家は一流になれない、とよく言われます。私はその考えに賛成です。画面には何らかの主題があり、それから副題が発生します。画面には何らかの見どころがあり、それを補強、補足するものがあります。何が何だか分からない絵画や、見どころがはっきりしないが絵画は鑑賞者を混乱させます。もちろん、最近の現代アートの中には、鑑賞者を混乱させることを目的としているものがありますが、これはその限りではありません。

5 参考作品
 最新作(2010年3月11日)を描いたときの私は、かなりのスランプでした。悩める私は、途中で画材を水性ペンに変え、無意識のうちに自分の苦悩をモデルに投影していたようです。下の図1は、その日のクロッキーの部分を切りとったものですが、顔の表情から画面全体の広がりを感じたり、顔の表情が画面を支配したりしているなら、成功したといえそうです。

図1:2010年3月11日のクロッキーの部分(上の画像をクリックすると、それぞれが拡大します)

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2010年3月14日公開

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