このページは、Mr. takaによる『若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。 |
第9章 学校の行事
2 合唱コンクールの指導方法
G 結果発表を終えて1 金賞の場合
金賞や最優秀賞なら、素直に喜びましょう。それだけの努力をしたのですから、努力が報われたということで、お互いに讃えあうことが大切です。全員で拍手したり、指揮者や伴奏者やパートリーダー、さらに、一言みんなに言いたい人に『喜びのインタビュー』をして盛り上がるのも良いでしょう。
そして、もっとも大切なことは、1位になったことを他のクラスに自慢しないことです。謙虚に控えめな態度をしなければいけないことを知らせます。「実るほど、頭こうべを垂れる稲穂かな(詠人知らず)」と俳句を紹介し、立派な賞を頂いたものほど謙虚になり、周りに感謝しなければいけないことを先生が身をもって示し、学ばせます。2 銀賞以下の場合
惜しくも2位になった場合、担任はそれで嬉しいのですが、何人かの生徒は泣き出していることでしょう。そんな時は、しばらく泣かせたままにしておきます。「先生、私たちの何がいけなかったの?」「どうして、隣のクラスが1位なのか納得できない。5組に負けたなら納得できるけれど」などと言い寄られた場合は、「君たちは何も悪くない。先生は泣いている人に話すのが得意ではないので、泣き終えたら話します。今は泣きなさい」と言い、全員が落ち着いたら次のように話します。
「先生はとても残念ですが、自分ができる限りのことをしましたから後悔はしていません。一生懸命やった人ほど悔しいと思いますが、自分がやったことには後悔していないと思います。『人事を尽して天命を待つ』という言葉を知っていますか? 自分ができる限りの努力をして、その後の結果を待つということです。その意味は『心配せずに努力しなさい』ですが、先生は『自分が精一杯やったことの結果は、誰がどういう結果を出そうと自分は後悔しない』と解釈しています。先生は、自分ができる限りのことをしたし、もう一度夏休み前に戻り、曲や指揮者や伴奏者を決めるところから始め、それら全てが今と違っても、同じように一生懸命練習して本番を迎えたと思います。その結果は今日の結果と違うかも知れませんが、その結果に文句はつけません。なぜなら、審査をする人たちだって、一生懸命やって、たくさん悩んで出した結果だと思うからです。審査結果をとやかく言う人は、同じように自分の努力に文句を言われるでしょう。先生は君たちの努力した日々を知っているし、ずっと見守ってきたから、今日の結果は何も言わずに受けれるだけでなく、むしろ2位になったことに感謝しています。もちろん、1番先生が感謝してきるのは君たち1人1人の頑張りです。今日までどうもありがとう! 先生は、客席で最高の感動と思い出をもらったよ。そして、頑張った君たちが見せてくれた悔し涙にも、、、」3 私のクラスの場合
私自身の本番までの目標は、子ども達に私が知っている『歌う喜び』と『音楽の素晴らしさ』を伝えることです。そのために、子ども達に手本を示し、一緒に唱い、私が知っている知識と技術を教えます。本番での目標は、会場にいる全ての人々に『私のクラスの合唱で感動してもらう』ことです。その結果として金賞を頂くかも知れませんが、第1目標はあくまで、私自身が知っている音楽の素晴らしさを子ども達に伝えることです。以上のことは、練習中に何度かクラスの子ども達に話します。私が話している内容が分からない子どもいますが、私が真剣に歌ったり、踊ったり、指揮したりしているのを子ども達は笑ったり、不思議そうに眺めたりしています。私が伝えたいことが分かってくると、子ども達は同じように歌うようになります。
一方、子ども達の一部は、自然に『金賞を取ること』を目標にします。私は、それが子ども達の自然な欲求なら、それに任せます。合唱コンクール当日を迎え、結果発表で金賞を取れなかった時、何人かの子どもが泣きます。しかし、私は練習中に『金賞』という言葉を出さなかったので、彼らには「残念だったね」としか言いません。多くの子ども達は、私と一緒に真剣で後悔する必要がない日々を過ごしたので、審査員の結果に泣かないのです。それは、1つの評価に過ぎません。
私たちは、共に唱い、たくさんの音楽的な喜びを知り、本番で発表し、合唱という行事を終えたのです。ひとしきり泣いた後は、さっぱりしたものです。私のクラスは、次の行事の新しい目標に向かいます。子ども達が知らないことはたくさんあり、私はたくさんの伝えたいことがあるのです。2008年11月7日
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