このページは『Mr. takaによる若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第4章 学級経営

13 大縄跳び必勝法

1回跳べるなら何回でも跳べるはずです。同じ動作をくり返せば、永遠に跳べます。


(上:回す人の足元にある横線は、縄を回している時に自然に出来たもの。この男子生徒は、縄が地面に叩き付けられた時に縄が跳ね上がらないようするため、棒を地面に擦るようにして回した。相当な筋力と持久力がなければできない技です。)

手順1 縄を回す人の選出
 これが1番大切です。普段大声を出して教室を歩き回っているヤンチャな男子2人を指名しましょう。「君達しかいないっ!!」 力があり余って目立ちたがり屋の男子生徒2人を鍛えてあげましょう。ただし、相当に大きな力が必要なので、すぐに弱音を吐く生徒や筋力の弱い生徒は適しません。特に腰周りや腕の筋肉は痛めやすく、本気で20分頑張ると翌日動かなくなります。多くの生徒は準備運動やストレッチを嫌いますが、「縄を回すのはクラスで1番力が強くて運動神経のよい人だから、君達しかいない。準備運動をしないと筋肉痛になって動かなくなるから・・・そうすると縄をまわせる人がいなくなるから・・・とにかく、クラスの優勝は君達2人にかかっている!」とやる気を十二分に高めて下さい。これはお世辞でもウソでもなく本当の話です。
<こんな生徒が適しています>
・ 体が大きくて、運動能力も高い。
・ 学習は苦手だけれど、運動には自信がある。
・ 声が大きくて目立つことが好き。

手順2 リーダーの選出
 もちろん縄を回す2人はリーダーですが、その他に大きな声で掛け声を出すリーダーを選びます。普段の生活態度を見ていればすぐに分かります。男女とも1人〜数人で十分。決定したら、以下の『手順3から述べる必勝法』を他の生徒に先立って個別に伝授して下さい。リーダーとしての自覚が高まり、より大きな声と力を発揮することでしょう。

 また、手順2が終了した時点で、教師はリーダーから『監督』へと昇格します。練習中に問題が発生した場合、クラス全員を注意すべきか、それとも、リーダーだけを集めて注意すべきか、適切に判断して有効な方法を選択し、全体の意欲が高まるように最善を尽くします。

手順3 運動場に並ぶ
・ 男女別、背の順、各2列。
・ 男女背中合わせにする。
・ 背の高い生徒が中央になるようにする。
・ 前後(縦)の間隔は「半分小さく前にならえ!」。
 → 間隔は狭ければ狭いほど良いのですが、
練習を始めたばかりは前後の人と足がぶつかるので広くします。そして、練習を重ねて跳び方が安定してきたら間隔を狭くします。
・ 左右(横)の間隔は肩が触れない程度につめる。
・ 縦横まっすぐに並ぶ。
 → 縦列の誤差+−5cm
 → 横列の誤差+−5cm
 → 跳びはじめると歪んできますが、優勝を狙うクラスは
跳んでいる途中に列の歪みを修正する能力が必要です。

手順4 回す人と跳ぶ人の距離
 少なくとも3メートルとって下さい。回す人から見ると、とんでもなく離れているように見えますが、離れていればいるほど跳ぶ人は簡単になります。逆に、回す人は辛くなります。しかし、練習初日の目標は、他のクラスより少ない10回ぐらいにして、目標達成と全員で自信を喜びを味わうことを優先させます。回し手2人には申し訳ないのですが、頑張ってもらいます。縄が長くて大変ですが、とにかく、回す人と跳ぶ人に間に3〜4メートルの間隔をあければ、多少揃っていなくても10回は跳べます(3年生の35人クラス)(1年生の場合は筋力がないので目標5回)。

生徒全員が守る約束
1 失敗した人は、自分から手を挙げて「すみません、私です」と謝る。
2 失敗した人を非難しない。
3 友達を注意するのは、列が乱れた場合だけ。
4 「せーの、1、2、3、4・・・」と、全員が声をかける。
5 目標の数に近づいて緊張してきたら、より大きな声を出す。

手順5 初日の練習
 目標を達成したら、どんなに調子が良くても途中で止めましょう。練習時間が50分用意されている場合は、10分の休息を2回挟んで下さい。先に述べた通り、回す人の筋肉に非常に大きな負担がかかっているので、「はい、今日はここまで。」と潔く切って下さい。生徒のやる気が高まっているのは分かりますが、もう少しやりたいところで止めることは、かえって明日への意欲を高める1つにもなります。

回し方
1 両足を肩幅以上に開いて踏ん張る。
2 縄ではなく、両手で棒を持つ。
3 持った両手の間隔は広くする。
4 跳ぶ集団との間隔を十分にとる。

 → 跳ぶ集団が上達してきたら短くする。
5 縄の長さは、中央部分がちょっと地面につく程度にする。
6 リーダーの掛け声「いくよ」の次の掛け声「せーの」で回し始める。
 → 全員が「せーの」と言えれば、この時点で90%以上成功。
 → おめでとうございます!
7 縄が地面につくと同時に、縄を最高スピードで足の下を潜らせるように動かす。
 このとき、両膝を曲げて相撲の四股を踏むような姿勢をとる。
8 跳んでいる人の足に縄がかかっても、頑張って回せばまわることがある。
9 縄が全員の足を通過したら、背と両足の筋肉を使って伸び上がるように縄を持ち上げる
10 持ち上げるときは力を入れなくても良いのでリラックスする。
11 縄が空中をまわっている時は無理せず、相手と合わせることだけを考える。
12 もう一方の相手と呼吸を合わせて、7〜11をくり返す。

 → 呼吸が合わない時は、回す人だけで練習します。また、20回を超えると疲労で乱れてくるので、100回を目標にしてパワー練習をすることも有効です。

跳び方
1 ほどんど跳ばなくても良い(5cmで十分)。
2 そのかわり、膝を90度以上曲げる。
3 足の甲も曲げる。
4 上記1〜3の結果として、地上と足の間には30〜50cmの空間を生み出す。
5 足を動かすことと声を出すことは同じくらいに重要なので本気で数を数える。

 目標回数を達成していてもいなくても、帰りの会で再度全員の健闘を讃え、リーダー達の頑張りを全員で誉めたたえることも忘れずに、、、

手順5 2日目の練習
 新記録が50回(5分間の競技)と仮定すると、優勝するためのチャンスは3回しかありません。私の経験では、本番で最高新記録が出るのは初めの1回か2回めで、それ以降の挑戦で優勝したクラスは見たことがありません。ですから、練習前に集中力を高める練習がもっとも大切です。これは普段の授業と通じるところがあります。また、目標回数は初日の最高回数と同じで結構。連続して2回、初日の最高記録が出せるようなら間違いなく必勝ロードを歩んでいます。

手順6 3日目の練習
 目標回数を30回程度に上げます。これだけの回数になると、普段運動をしている生徒でもリズムを狂わせるようになります。今度は、同じ運動をくり返せば永遠に続くことくり返し聞かせてやって下さい。それから、絶対にやっては行けないのは、続けて10分以上練習することです。練習時間と休息時間は同じだけとって下さい。理想的な練習タイムテーブルは、2回連続30回以上跳んだ後、休息10分。しっかり休息をとった後、1回めで新記録を樹立して終了。合計15分です。

手順7 普段の練習
 放課や始業前など時間を見つけて練習して下さい。運動が不得意な生徒に対しては、みんなで励ましあうことが大切です。膝や足首の曲げ方を教えてあげましょう。難しい動作ではないので、何とかなります。逆に、運動が得意な生徒でも同じ動作を一定のリズムで続けることは意外に難しいので、全員揃ってくり返し行うことも有効です。

 目標の設定は最高回数でななく、3回連続して20回跳ぼう、あるいは、2回連続して25回跳ぼうとします。その方が、楽な気持ちで集中力を高めやすくなります。

手順8 本番当日
 本番はこうです。1番初めの挑戦で新記録を樹立、残りの時間は他のクラスが何回も悪戦苦闘している姿を応援。そのためには、競技の前に隊形と気持ちを完全に整えなければなりません。焦ってはいけません。すべては競技を始める前に決まっている訳ですから、つまり、適切な方法でもっともたくさん練習したあなたのクラスが素晴らしいパフォーマンスで優勝です。応援してくれた人に感動を与えたお礼として優勝旗をプレゼントされるのは必然のことです。

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余 談
 練習2回目。上手くいかない私のクラスが25回跳べた後、大声で他のクラスの生徒が何回か尋ねてきた。私が小躍りしながら「やったー!! 25回!!」と答えたら、それまでばらばらだった他のクラスが一致団結して学年新記録29回を出してしまった。まだまだ練習2日めなので、これからが本番だけれど、とにかく大切なのは気合いということです。担任は、監督であること忘れず、生徒の気持ちとやる気を十分に把握・コントロールして下さい。では、健闘を祈ります。


※ 体育館より運動場の方が好結果が出ますが、その理由は分析していません。

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