このページは『Mr. takaによる若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第4章 学級運営

16 帰りの会は、さくっと終ろう

     ─ 帰りの挨拶は、先生のかけ声の後、10秒後に行う。さくっと帰ろう!─

1 誰でも早く帰りたい
 長い1日が終わった生徒は、『1秒でも早く帰りたい』とムズムズしています。『帰りの会はどうでもいいから、早く終わって欲しい』と思っている生徒がほとんどです。6時間真剣に取り組んだ生徒ほど、そう思っていることでしょう。疲れ切った生徒は、先生から「大切な話だからしっかり聴きなさい」と言われても、上の空になってしまうものです。それにも関わらず、先生が無理に頑張ると、生徒と先生の関係が壊れ、学級全体がダメになってしまいます。これを避けるためには、先生の発想の転換が必要です。生徒達の『早く帰りたい』という共通目標を達成するためにリーダーシップを発揮し、以下のような『躾けレベルの指導』をします。これができるようになると、魔法のように学級に関する多くのことが上手く回り始めます。先生が本当に重要な話をしなければいけない時、生徒は先生の気持ちを感じ取り、我慢して聴くようになるでしょう。

2 初めに、先生が学級全体へ話すこと
 「先生は、帰りの会で『明日の連絡』をしたら、すぐに帰りたい、と思っていますが、みなさんはどうですか?・・・そうだよね。早く帰りたいよね。先生はだらだらするのは嫌いですから! じゃあ、帰る時は、次の手順で進めるので、協力して下さい。明日の連絡が終わったら、先生は「帰ります」と声をかけるので、室長はすぐに「起立」と号令をかけて下さい。みんなは起立しますが、この時、絶対に友達と話をしてはいけません。鞄を持ってもいけません。机を後ろに移動させてもいけません。ここまでの時間は長くても5秒です。自分が早く起立して、3秒余ったとしても、じっと我慢して下さい。これがとても重要です。君の小さな我慢によって、みんなが早く帰れます。それがルールです。頑張って下さい。さて、室長は全員が揃ったら「さようなら」の号令をかけます。みなさんは、私と一緒に大きな声で「さようなら」をして、机を後ろに運んで、解散です。分かりましたか?・・・じゃあ、練習いきますよ! ・・・終わります・・・(室長が号令をかけ)(全員が約束通り起立できたら)・・、よく出来ました。全員座って下さい。(全員座ってから)練習はここまでです。次は本番なので、上手くいったら本当に帰ります。ただし、さっき話したように、勝手に鞄を肩にかけたり、友達と話をしたり、机を後ろに移動させたりする人が1人でもいたら、全員着席して、もう一度初めからやり直します。やり直しは1回につき10秒ぐらいですから、先生は全員ができるまでやり直します。よろしでしょうか!・・・はい、では、今日はこれで帰りましょう!・・・(室長がぼーっとしていたら)室長、「起立」の号令をお願いします」

3 最後の10秒間の流れ
 全員が絶対できる、と先生が信じて繰り返し練習して下さい。これは躾です。どんなに小さな例外も見逃してはいけません。何度も繰り返し練習させて下さい。
1 先生が「他に連絡、質問はありませんか?(何もないことを確認してから)では、帰りましょう」と言う
2 室長が「起立」と号令をかける
3 全員が起立し、(椅子を机に載せてから)直立する
 ※ 「起立」から「さようなら」までに必要な時間は、椅子を載せた場合でも10秒
 ※ 鞄を持った生徒1人でもいたら、やり直し
 ※ 勝手に話をした生徒が1人でもいたら、やり直し
 ※ 机を後ろの移動させた生徒がいたら、やり直し
4 室長が「さようなら」と言う
5 全員が「さようなら」と言い、礼をする
6 全員が机と椅子を後ろに移動させる
7 全員解散

 以上の流れは、通常の授業でも使えますが、私の理科の授業は実習が多いので、一斉に終わりの挨拶をすることは多くありません。ほとんどの場合、各自が実験や観察の自主的なまとめをしているので、チャイムが鳴ってからの『流れ解散』です。それだけに、1日の学校生活の終わりの挨拶は大切にしたい、と考えています。全員がそろって大きな声で「さようなら」を言うことは、難しい反省を述べるよりも学級経営上、大切なことです。1日の締めくくりは、全員が統一した意志できりっと引き締まった活動で決まりです。

4 帰りの会の内容
 ここで、帰りの会の内容を考てみます。ざっと考えるとたくさんあるようですが、よくよく絞り込んでいくと、『今日の反省』と『明日の連絡』の2つに要約されます。このうち、今日の反省は省略することもでるので、帰りの会は『明日の連絡』の1点のみ、と考えることができます。

5 生徒手帳に明日の連絡を書く
 明日の連絡は、後ろの黒板に書かせます。各教科の学習係に、昼放課のうちに書かせるようにすると良いでしょう。提出物は別枠で『配付回収係』に、その他の連絡は室長に書かせます。その内容は、帰りの会までに『連絡ノート』あるいは『生徒手帳』に書かせます。連絡ノートは、小学校できちんと指導されている場合はそれを引き継ぎますが、出来ていない場合は、生徒手帳を使うと良いでしょう。この手帳は、1年間を通じてあまり使う機会がないので、後ろにある白紙ページに、月日と内容を書かせて下さい。内容が少ないなら、月カレンダーに書かせて下さい。生徒が本当に書いているか、機会を捉えて、先生が期間巡視してチェックします。とくに中学1年生で忘れ物が生徒は、重点的にチェックします。こうした生徒手帳の活用は、手帳を常に携帯するようになったり、手帳を大切にする心を育てたりするので一石二鳥です。

6 気持ち良い今日の反省
 これからは何々しないようにする、というネガティブな反省はダメです。学級担任として、過ぎ去った過去(今日のこと)を繰り返し反省させることは、教師自身の自己満足であり、愚かな行為の1つです。失敗を発表させることは、学級全体に暗い陰を落とします。どんなに大きな失敗をした日でも、その反省は帰りの会までに終わり、最後はポジティブな気持ちでお別れしましょう。1日の終わりは気持ち良く、明日への希望をもって「さようなら」しましょう。楽しかったこと、良かったこと、勉強で分かったこと、お弁当で美味しかったものなど、前向きなものだけを発表せます。その時間は数秒で十分です。なお、4月頭初や忙しい時は、先生が反省の見本を示して下さい。『反省』は悪いことを思い出すことではなく、過去を振り返って明日をより良くするための活動、みんなで楽しく笑い合う活動であることを教えて下さい。

7 先生も早く帰りたい
 先生も早く帰りたい、それはとても自然な感情です。一生懸命に頑張った人なら、誰でも早く帰ってリラックスしたいものです。そんな生理レベルの欲求を、生徒と一緒に満して下さい。難しい理論ではなく、先生の素直な気持ちで、生徒と心を通わすのです。言葉ではない同じ思いを持ち、同じルールを守り、みんなでさくっと帰る。そんな活動を毎日繰り返しましょう。生徒と同じように、先生も6時間へとへとになるまで学習すれば、明日、笑顔で再会できることを期待して別れられるものです。出合いには希望と目標が、活動には努力と感動が、別れには潔さと鮮やかさが必要です。

2009年5月23日

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