このページは『Mr. takaによる若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第4章 学級経営

12 おきべん指導

1 おきべんとは何か
 おきべんとは、教科書、資料集、ノートなどの強道具を学校にいておくことです。おきべんの対象になるものは、家庭での使用頻度が低いもので、机のロッカーに保管されます。その一方、毎回家庭で復習して欲しいものは、おきべんが禁止されます。主要教科の教科書とノートは、おきべんが禁止されているものが多いです。しかし、持ち帰りが大変な、重いものを勝手に『おきべん』する生徒がいます。その場合は、消火栓やトイレの中など、思いもよらないところです。

2 一般的なおきべん指導
 おきべん指導とは、学校に置いていってはいけないものを、家庭へ持ちかえるように指導することです。以下は、一般的な指導方法です。

(1)4月、各教科の先生に『おきべん』して良いものと悪いものを示してもらい、さらに、『おきべん一覧表』を学級に掲示して、確実に生徒へ知らせる。

(2)随時、『おきべん』のルールを違反している生徒を、学級担任の先生が注意する。
  → 教科の先生は、おきべんしているかどうか十分に分からない。むしろ、ルール
   違反の生徒ほど、『忘れ物をしない良い生徒』として認識している場合もある。

(3)違反をくり返す生徒に、学級担任が厳しく注意する。

(4)必要に応じて抜き打ち検査する。

2 「ルールを守りなさい」と言い切る
 おきべん違反をくり返す生徒は決まっているので、先生はその生徒と『いたちごっこ』をするでしょう。そのとき、先生は、問答無用に「ルールを守りなさい」と言い切ってください。生徒の考えを聞いてばかりいると、その生徒が大人になった時、「私はその法律を作った覚えはないし認めない」と主張して、触法行為をくり返すようになるからです。しかし、この教師からの一方的な指導とは別に、おきべん常習者を取り巻く環境を知ることも大切です。背景を知り、摘まれてしまった生徒の知的好奇心を再生させることが先生の本来の仕事だからです。

3 常習者は、勉強そのものが嫌い
 常習者は、勉強そのものが嫌いです。「連立方程式が何の役に立つの?」「百人一首を覚えてどうなるの?」と質問します。彼らにとって、勉強は役に立たない無用なものです。高校進学の動機は、「まだ働きたくないから」「みんなが行くから」「制服を着て遊んでいたいから」に過ぎません。彼らは学習の楽しさを知らないか、すっかり忘れてしまったか、学習で苦い経験をしたか、のいずれかです。先生は、子どもとよく話した上で、励ましたり誉めたり一緒に勉強したりすることで、おきべん根絶に努めます。

4 おきべんが許される生徒
 おきべんをするもう1つの大きな原因として、生徒が学校や学習に集中できない困難な家庭環境で生活していることあります。これは、勉強以前のところに問題があるので、勉強の話をしてはいけません。彼らの現在の家庭について話を聞いて下さい。両親が喧嘩して精神的・肉体的暴力を受けていたり、肉親が重病で炊事・洗濯・幼い兄弟姉妹の世話など大人顔負けの仕事をしていることもあります。その他に、厳し過ぎる塾、両親の教育方針を批判する祖父母、友達からの誹謗中傷など、常習者を取り巻く環境はさまざまです。したがって、勉強道具の重要度が1人ずつ違うことを認識した上で、「おきべんは許さない」という画一的な指導をすることになります。おきべん違反者に対しては、その原因を1人ずつ丁寧に探り、勉強や勉強道具に対する考え方を成長させたり、生活環境のカウンセリングを行います。

5 私のおきべんに対する姿勢
 中学校の先生ができる現実的な指導を考えます。

(1)積極的に『おきべん』を取り締まることをしない。しかし、一般生徒から指摘があったり、教師から一斉指導する指示が出たら、厳密に行う。

(2)違反者に対しては、くどくどと説教をしない。違反者に対する指導の目的は、「ルールを守らせること(決められた勉強道具を持ち帰らせること」の1点である。それをやれば、何も言わない。

(3)違反を指摘することは、勉強や生活についてのカウンセリングを行う1つのチャンスとして捉え、別室で話を聞く。基本的に、私から話をしないし、おきべんについては一切話さない。そのような躾レベルの内容は、廊下で一喝すれば十分である。別室での目的は、違反者を取り巻く現状を聞くことであり、多くの場合、先生が話を聞くことで「おきべん問題」は解決へ向かう。

6 仕方なく勉強をしている中学生
 中学生の仕事は勉強です。勉強道具を大切に扱い、いつも手許におき、寸暇を惜しんで勉強に励むことが理想です。しかし、ほとんどの生徒は勉強が嫌いで、「授業と宿題をやれば十分だ!」と考えています。これは大人でも同じです。仕事は金を稼ぐための活動にすぎない、と考えている人がたくさんいます。しかし、理想は子どもと同じように仕事を楽しみ、生きる喜びと一致させることです。これは、人間が知的好奇心をもった社会的な動物だから可能なことです。ゾウリムシやライオンなどは、十分な食料があると寝ているように動きませんが、人間は基本的な欲求が満たされたとき、知的な興奮を求めるために新しいことに挑戦したり学んだりします。

7 余談
 私はパソコンを持ち運びするのが面倒なので、自宅で1台、学校で2台のパソコンを使っています。それぞれに、30インチと21インチ、24インチと15インチ(ラップトップの画面)のモニターを使っています。とても贅沢な話ですが、いつでも快適にパソコンが使える環境を作ることは、私の仕事そのものです。仕事を楽しむための『おきパソ』は、私にとって常識です。
 さらに余談ですが、カメラマンとしての私は、同じ種類のカメラを何台も購入して使います。遊ぶ金には糸目をつけますが、仕事には糸目をつけません。お釣が来るほど楽しんでいますから、、、

2008年11月15日
2011年1月13日修正

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