このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。 |
第8.2章 いじめという犯罪
7 A君の筆箱が隠された!
1 筆箱が隠されたA君
20**年11月20日、理科室での私の授業中、A君の筆箱がなくなる事件がありました。実は、A君と私は以前からよく廊下で出会っていました。そして、A君から話かけてくるのですが、私は会話から、A君がいろいろな生徒から嫌がらせを受けていることを知っていました。だから、私は「それを抑止する絶好のチャンスが来た」と思いました。A君はとてもまじめな性格で、何も悪いことをしないのですが、それが逆に、元気あふれる生徒達の遊びの対象になるのです。以下に、この事件の顛末を記し、その後、指導ポイントを解説します。
2 事件解決へ向けたポイント
事件を解決するためのポイントはたくさんありますが、このページは次の10点を紹介します。下記(1)〜(10)の番号は、上の記事の番号に対応しています。
(1) 事件が発生したら、解決に向けてすぐ行動する
(2) 『事件の解決』と『授業』のどちらが大切か、迅速にかつ適切に判断する
(3) 被害者とクラスの友達が結びつくように指導する
(4) 自分でやったことは、自分で元通りにする
(5) 事件の全てをクリヤーにする
(6) 事件を小さく区切り、1つずつ解決する(終了させる)
(7)生徒のルールで罪の重さをきめる
大人社会では便宜的に『全員同罪』となることが多いのですが、幼稚な問題を解決したり再発防止に心がけたいときは『生徒のルール』によって軽重を決めることをお勧めします。生徒は、1つの事件をいくつかの段階に分けることができるようになります。つまり、生徒社会における自分の位置、自分ができることを理解できるようになります。
(8)罪の重さによって、指導内容を変える
全員同じように見える事件でも、できるだけ変えるようにしましょう。悪い遊び友達の関係を見直すキッカケになります。なお、生徒による『罪の重さの判断が適切ではない』と思う時でも、あえて見逃すことで、教育的効果が上がると判断できるなら、見逃してください。そのような生徒のグループは、同じような事件を起こす可能性が高いので、何度も指導をくり返していく中で、少しずつ学習させるようにすれば良いのです。
(9)目の前にある、その事件だけで我慢する
熱心な先生は、ついつい、過去の事件との関連性を持ち出してしまいますが、それは逆効果です。今、そこにある事件だけに専念してください。生徒は自分で気づき、育っていくでしょう。過去を全て振返り、100%教えようとすると、何もかも失うことがあります。また、事件を一般化することも危険です。具体的に、目の前にある事件の解決に全力を捧げ、それが解決できたら満足してください。
(10) 言葉にして謝罪させる
この事件では、生徒と15分以上話ました。十分に自分の行動を振り返り、友達の立場から友達の気持を考えることができるようになりました。最後は、明確な謝罪の言葉で終れることが十分に予想できたので、私は生徒を信用しました。先生が信用することで、生徒はより高い自覚をもって行動できると判断したからです。3 事件後のA君
事件後のA君には、「筆箱があって良かったね」と声をかけました。嬉しそうに「うん」と言ったので、私はそれ以上その話題に触れませんでした。A君は、次の活動に取り組んでいるのです。4 事件後のA君のクラス
事件後、A君のクラスの授業で、A君をからかうような発言は目立たなくなりました。私は、B君とC君が謝罪したことが大きいと思いました。次に同じような事件が起きたら、まず、B君とC君がこの筆箱事件を自分達の力で解決(反省)できたことを紹介し、次に、2人がクラスのみんながいる前で謝罪したから、しばらく良い状態が続いたことを話す予定でした。しかし、結果はそのような話をしなくても良かったので、A君のクラスは大きく成長した、と思いました。2011年1月8日
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