このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第8.2章 いじめという犯罪

4 みんなの前で『殴る蹴る』いじめ

1 みんなの前で『殴る蹴る』いじめ
 みんなの前で弱い者を『殴る蹴る』行為は、誰が見ても明らかないじめです。それは、被害者の身体に対する暴行であり、刑法で処罰される犯罪です。以下に、私が体験した典型的なみんなの前で『殴る蹴る』いじめを紹介します。

教室に乱入し、寝ている生徒の机を蹴飛ばすA君
 1時間目の授業が終り、私は隣の教室へ移動していました。この日は、理科室ではなく普通教室で授業を行う予定だったので、次の教室でのんびり時間を過ごすつもりだったのです。放課のほとんど丸まる10分間、私は教室内の生徒に声をかけて歩きました。男女を問わず、とりとめのない冗談をいったり、生徒どうしの秘密の会話をちょっと拝聞することは、中学校の教員しか味わうことができない楽しみの1つです。

 そこへ突然、隣のクラスのA君が入ってきました。A君は私の担当ではありません。ほとんど面識がないのですが、顔と名前は知っていました。大きな身体といつもボタンが外れた制服で目立つからです。この学校には『他の教室に入らないこと』という校則がありますが、A君はお構いなしに教室へ入り、机を押しのけるようにして歩き回りました。私の存在に気づいていないようでした。

 A君は、机にうつ伏しているB君を見つけ、「何寝とるんだ!」と言い、突然、机を蹴飛ばしました。B君は飛び起きましたが、何も言いません。びっくりしたこと、寝ぼけていたこと、疲れていたこともあるでしょうが、本当の理由はA君が恐いからでしょう。体格が全く違うのです。身長差20cmは十分にあります。反論すれば、今度は、机ではなく身体のどこかを蹴られたことでしょう。私が即座に制止しなければ、頭部ぐらい殴られたいたかもしれません。

 私は一気に駆け寄りました。そして、「蹴るな! 何もしていない人の机を蹴飛ばすな! そもそも違う教室に入るな!」と言ってA君を教室から追い出しましたが、謝罪させることを忘れていました。あまりに唐突で、誰もが理解できない凶暴な行為だったからです。

20XX年10月13日 1限放課

2 身体を攻撃する目的
 殴ったり蹴ったりした生徒に理由を聞くと、「何となく」「イライラしていたから」「むかついたから」「遊びだよ」と答えます。これは本心です。本当に何も考えていないのです。無計画、衝動的、偶発的、気分による、遊び的、単発、突発的な計画、単純な計画による犯罪です。殴ったり蹴ったりすることに、目的はありません。行為=目的です。

3 加害者の性別
 加害者は、主に男子です。まれに女子も殴ったり蹴ったりしますが、「あの女子は凶暴」「男みたい」という噂が流れるので、長続きしません。

4 加害者の人数
 1人で犯行します。集団で行うこともありますが、そのメンバーは固定されていません。いわゆる『いじめっこ集団』のうち、その場にいたもので犯行に及びます。中心となる首謀者がいると、比較的簡単に集団が形成され、暴行の程度がひどくなります。

5 加害者のよくある特徴
(1) 自己中心的な性格
(2) 外見に気を使う
(3) 言葉遣いが汚い
(4) 基本的生活習慣(躾)ができていない
(5) 行動が粗暴
(6) 自分を粗末にする
(7) 家庭において、「自分が1番偉い」と思っている
(8) 学校において、「先生はお手伝いさん」と思っている
(9) 校外において、「警察はちょろい友達」と思っている

6 被害者は決まっていない
 被害者は不特定多数です。基本的に、すべての生徒が被害者になる可能性があります。なぜなら、加害者は「自分が1番だ」と思っているからす。その加害者は自分の都合だけで暴行をはたらくので、親しくしている友達を殴ることもあります。もちろん、何度も連続すると、友達は離れれていきます。

7 先生の対応
 単発的な事件なので、1つずつ解決していきます。いくつか連続している場合は、区切れるところを探して区切り、別々の事件として扱います。手順は次の通りです。
(1)犯行事実を確認する
(2)加害者が被害者に謝罪する
(3)双方の保護者に事実を連絡する

8 昔のことは持ち出さないこと!
 昔の事件を持ち出すと、加害者は興奮することが多いので、必ず、目の前の事件だけに絞って解決してください。

9 加害者の保護者へ連絡するときの注意
 保護者に連絡するときは、事実だけにしましょう。主観を混ぜると失敗します。伝えることは次の3点です。
(1) 子どもが認めた自分の行為
(2) その行為が間違っていた、と認めたこと
(3) その行為について、相手に謝罪したこと

10 相手を思いやる気持を求めないこと!
 加害者の保護者に対して、相手(被害者)を思いやる気持ちを求めてはいけません。保護者を教育することは、とても難しく、時間がかかることです。先生は、たくさんの犯罪事実を積み重ねてください。そして、保護者自らが発見するように、あるいは、発見したように感じさせてください。すべての保護者は、自分の子どもを守ろうとします。これは自然なことです。急いで失敗しないように! 保護者の成長スピードは、子どもより遅いことをお忘れなく。そして、上記をもう一度読み直してください。生徒の保護者にも当てはまるものがたくさんあります。

11 証拠があるいじめ
 持ちものを壊したり隠したりするいじめは、証拠が残るという点で同じです。友達から貸してもらったシャープペンシルを返さなかったり、壊したりするいじめは、よくあります。このような事件を発見した場合、身体に対する暴行と同じように指導してください。手順と注意は、上記です。証拠を隠そうとする場合については、別ページ『ものを隠す』いじめをご覧ください。

2011年2月24日

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