このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第6.3章 校 則

9 体育館で行う服装点検

1 目的は、反省・計画できるようにすること
 みなさんの学校には、服装点検があるでしょうか。私は毎月1回、学年単位で服装点検を行うことをお勧めします。その理由は、1年間定期的に続けることで、生徒が自分で自分の生活をチェックできるようになるからです。点検の目的は、服装ではなく、生活全般を反省したり計画したりすることです。ただし、(私は1学年4学級〜9学級の経験しかないので以下は推測ですが、)2学級以下の場合は全校集会の方が良いかもしれません。

2 学年の生活係の先生が指導する
 服装点検は、学年の生活係が中心になって行います。係は、毎月タイムリーな話題を用意します。年度初め、体育大会や合唱コンクールなどの学校行事、修学旅行や野外学習など大きな学年行事、長期休業前後では、それぞれ服装点検の位置付けが違います。具体的な話題を使ってください。学級担任は点検する、というより、1人でできない生徒をサポートする、という姿勢を取ります。

3 新入生に対する服装指導
 新入生は、正しい制服の着方を知らないので、1つずつ丁寧に教えてあげましょう。10分〜15分かけ、自分で自分を点検させます。ただし、これは点検というより確認です。自信を持って着るための『着付け教室』のようなものです。先生にとっては「当然」と思われることでも、新入生は初めてのことばかりなので、確実に説明してください。できていない生徒に対しては、注意するのではなく、知らないことを教える、できないことをできるようにする、という姿勢で指導してください。学級担任の先生は、自分の学級を巡視し、できない生徒を手伝ってあげましょう。質問も受けつけてください。

4 よくある点検項目
(1) 名札、校章をつけているか
(2) 委員バッチをつけているか
(3) 生徒手帳をもっているか
(4) ホックがしまっているか(男子)、リボンが正しく結べているか(女子)
(5) ズボンを正しくはいている(男子)、スカート丈が膝下になっているか(女子)
(6) 靴下は、決められたものか
(7) 防寒着は、中学生らしいものか
(8) 下着を着ているか
(9) 体育館シューズをはいているか
(10) 体育館シューズに名前が書いてあるか

5 基本的な服装点検の手順
(1) 生活係の先生が正面に立つ
(2) 服装が整っていない生徒を、その場に立たせる
(3) 係から、生活に関する話をする
(4) 『明日、自分自身で服装を直して登校できる生徒』を着席させる
(5) 『立っている生徒』のところへ学級担任が行き、事情を聞く

 (3)の話は、点検の冒頭や最後に移動させることもあります。

6 服装点検の例(5月下旬、体育館、2年生180人)
 以下は、2年生の学年集会で服装点検する時の例です。季節は5月下旬、ちょっと調子に乗り始めた頃です。指導するのは、1年生から引き続き生活指導をしている先生とします。生徒も先生も、点検の手順や目的を理解しているものとします。
 「みなさん、こんにちは。今日は、服装点検から始めましょう。いつものように、自分で自分を点検してください。1つでも不備がある人は立ってもらいます。ただし、学生服の下にカラーシャツを着ているからという理由で怒ったりしませんので、正直に立ってください。怒られる人は、いつものように、嘘をつく人、ごまかす人です。自主的に、正直に立つ人は怒られません。自分に厳しく、自分を点検してください。点検項目は、もう、すべてわかっていると思うので、言いません。名札、ズボン、スカート、髪の長さ結び方は当然です! それではこれから、できていない人に起立してもらいますが、全員、喋ってはいけませんよ。誰が立ったか気になるので、首を回して周りを見ても良いことにしますが、友達と目があっても笑ったり喋ったりしてはいけません。先生に怒られるのは、立っている人でも座っている人でもありません。ふざける人、お喋りする人、笑う人、笑ってごまかそうとする人、反省できない人、反省している人を邪魔する人です。それでは、準備よろしいでしょうか。では、1つでも、できていない人、起立!! (生徒が起立し、一通り会場が落ち着いた頃を見計らって) では、全員、正面を向きなさい。立っている人は、そのまま聞きなさい。(ここで、来月から夏服にしても良いこと、夏服にしたら男子はシャツをズボンに入れること、女子は白い靴下だけになること、目立って隠せないカラーシャツは再登校や没収など厳しい対応になること、などタイムリーな話題を入れる) 服装に関する先生からの話は以上です。では、立っている人に、順に着席してもらいます。まず、明日、自分で直して登校できる人は座りなさい。直せない人は、学級担任の先生が事情を聞きに行きますので、その場に立っていなさい。では、担任の先生、よろしくお願いします。(全員着席したのを見届けてから、次のように生活点検をしてもよいでしょう)

7 ついでに生活点検
(1) 忘れ物をしない、提出物を忘れない
(2) 宿題を必ずやる
(3) 毎日、復習をする
(4) 喧嘩をしない
(5) 掃除をサボらない
(6) 移動教室におくれない
(7) 学校でもらったプリントを家の人に見せる
 ポイントは、具体的に点検することです。そして、生徒自身に点検させることです。全ての点検は自分で行うものであり、誰か(親、先生など)にやってもらうものではない、それを教えてください。

8 3年間で、服装点検を習慣化させる
 私の経験からいえることは、服装点検を意識しないレベルまで習慣化しなければいけない、ということです。よく考えてください。生徒は毎朝、登校する時に自分で服装を整えます。実は、それが全てです。身長が伸びたり、服が汚れたり、髪が伸びたりしますが、それらは月1回の服装点検で点検すれば良いことです。学校で行われる服装点検をきっかけにして、生徒自身で『毎月1回レベルの点検』が行えるようになれば十分です。もうすぐ服装点検がある、という理由で直せば良いのです。そして、点検日当日、誰も違反者がいないようになるのを先生の目標としましょう。3年間通して行えば、素晴らしい卒業式が迎えられます。これは、どんなに貧しい家庭の子どもが集る学校でも可能です。

9 適切な目標を設定しよう!
 服そうが整っていることは、豊かな学校生活をするための基盤です。正しい服装をしよう、というような低次元の目標をくりかえすのは、愚かな先生です。低過ぎる目標は、やる気を失わせます。入学当初から卒業直前まで、それぞれの季節とレベルに応じた目標を立ててください。それが先生の仕事です。適切な目標を設定し、服装はさらっと通過しましょう。できない生徒は、先生が話している5分ほどの時間、立たせておけば十分反省します。できない人は、大人になってもできないものです。先生の中にも、そのような人がいると思いますが、適切な目標を持ち、自分の責任をちゃんと果たしていると思います。

2011年1月7日

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