このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。 |
第6.3章 校 則
5 茶髪、巻き毛、長髪
─先生のお人形─
1 黒髪・直毛の人が多い日本人
ひと昔の前の中学校では、髪の毛に関する指導を厳しく行なっていました。男子は丸坊主か刈り上げ、女子はおかっぱ頭か髪を縛るようにさせる指導です。子どもも保護者も教師も社会全体も、「子どもはお洒落をせず、生まれたままの髪を大切にするべきだ」と考えていました。これは日本列島が海に囲まれているために、遺伝子が均質になり、ほとんどの日本人が黒髪・直毛であることに関係するでしょう。もし、日本が日常的に複数の民族が交流する国なら、始めから画一的な指導は不可能だったと思われます。身体的特徴の違いだけでなく、価値観も多様になるならです。
2 多様な身体と考えをもつ子ども
最近は少子化が進み、経済的ゆとりが生まれることで、子どものファッションについて保護者からも意見が出るようになってきました。さらに、帰国子女や外国人労働者の増加によって、日本の教育現場ではいろいろな身体的特徴をもつ子どもが増えて来ました。幼稚園に入る前に、両親によって耳ピアスをあけられる子どももいます。
私がこれまでに勤務した学校には、金、赤、薄茶、灰色の髪をした子どもがいました。彼らは、ブラジル、中国、東南アジアなどの国の子どもです。もちろん、目の色も肌の色も違いますが、学校の先生は「髪」に関して異常なほどの注意を払います。それは、中学生にとって危険な誘惑が「髪をいじること」から訪れる場合が多いからです。3 髪の大切さと危険性
そもそもファッションにおいて顔と髪の毛が占める割り合いはとても大きく、どんなに頑張ってお洒落をしても、その最終的な判断は顔を見て行なわれます。「すごい」「えー、似合っていない」「辞めておけばいいのに」などの結論を出します。その際、とても大きな意味を持つのが髪であり、顔の表情や印象を大きく変えます(余談ですが、中年男性にとって「ハゲ」と言われることは、「デブ」「メタボ」と違って努力できないことなので、とても厳しく悲しいことです。髪は大切にしましょう)。4 中学生が髪にかける時間
髪が中学生にとっても重要なことは、毎日セットにかける時間を調べればわかります。最近は、男女を問わず毎朝シャンプーするだけでなく、ドライヤーを使ったブローに10分以上かけることはあたり前です。私は間違っているとは思いませんが、朝食を食べずに30分以上も鏡に向かっている中学生は間違っていると思います。寝癖がついたままの髪で登校することもいけませんが、家族のために働いていない子どもが自分のお洒落のために30分も時間を使うことは異常です。子どもは勉強、部活動、遊び、家の手伝いに時間を使わなければいけません。子どもは、個人の自由を主張する前に、一人前の個人になる努力をするために時間を使わなければいけません。
5 金髪の子どもが黒に染めたら・・・
もともと金色をしている髪の子どもが黒に染めた場合、教師はどのような対応をとるのでしょうか。さらに、もともと金髪の生徒が黄色や赤色に染めた場合、どうするのでしょうか。今の中学校現場は、このような場合を想定しなくてはいけませんし、私はそのような学校で働いています。私は「自分が持って生まれた髪の色、金色のままにしなさい」と指導します。ただし、友達や地域社会に溶け込もうとして黒髪にしようと深刻に考えている場合は、考慮しなければいけません。最終的に『髪の色にこだわらない社会を作ること』が教師と子どもと保護者と地域の使命であることを念頭におき、黒に染めることを認めるべきです。
7 子どもの髪を先生が染める
現実に起こる問題は、黒髪の生徒が脱色したり、茶髪にしてくることです。そのような場合は、「直してから再登校しなさい」と指導します。これは学校の問題ではなく、家庭の問題ですから、家庭で直してくるように指導します。そのためには保護者の理解と協力が欠かせません。一般には、理由無用の躾(しつけ)として、扱うべきです。しかし、茶髪にしてくる子どもの保護者は、放任か指導力が低いことが多いので期待できません。そこで、先生はどうするかというと、やはり、我慢して「直して来なさい」とだけ、指導します。決して、先生が学校で髪染めしたりスプレーしたりしてはいけません。これは、家庭の問題であり、子ども自身の問題なのです。この問題に手を出してしまうと、子どもは先生の『着せ替え人形』になってしまいます。
「今度までに黒く直してこなかったら、先生が黒くするぞ」約束して、実際に黒くすることは危険です。1度やってしまうと、学校と美容院との区別がなくなります。子どもも保護者も、家庭でしなければならないことを学校に期待するようになります。教師は、授業を中心にした学校教育に専念できるように努力しなければなりません。涙を飲んで、「家で直して来なさい」と言うのみです。
8 縮毛の子どもがストパーをかけたら・・・
私が中学生の時は、ほとんど全員が直毛でしたが、最近は巻き毛や縮れ毛の生徒が増えて来ました。完全な縮毛の子どもは、高い金を払ってストレートパーマをかけ、直毛にしてきます。これは「生まれたままの自分の身体を大切にする」という理論とは正反対です。本人も保護者も友達も、ほとんど全員がストレートパーマを黙認しています。ストパーは、高い金を使って身体を傷つける行為です。これが黙認されることから、『校則は、地域社会の一般常識によって作られる』ことが理解できるでしょう。私たち教員は、常に子どもや保護者や地域の声に耳を傾けて校則を見直す必要があります。
9 長髪に対する考え方
ここ数年のうちに、日本社会全体が中学生の長髪に対して無関心になってきたように感じます。新聞に載るような大きな事件や問題行動に気を取られているからでしょう。私自身、子どもの髪の長さに無頓着になってきましたが、男女の区別がなくなってきた大人社会の傾向が反映されているように感じます。また、近い将来、丸坊主が禁止される可能性があります。高校野球では短髪や丸坊主にするクラブがありますが、これらが無くなった時には、丸坊主やスキンヘッドを禁止する学校が出現するでしょう。大人の社会において、丸坊主の人はそれなりの理由がある人ばかりだからです。
2008 may 10
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