このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。 |
第6.3章 校 則
6 生徒の髪を染める
1 生徒の髪を染める
私が勤務した中学校7つのうち、先生が生徒の髪を染める学校が1つありました。保護者の許可をとってから、学校で用意した黒スプレーを吹き掛けるのです。これは私の教育理念に反するものですが、学校の指導方針なのでしかたありません。私は、45リットルのゴミ袋の底に穴をあけ、それを生徒にかぶせました。制服を汚さないようにするためです。そして、顔が汚れないように小さな紙を使いながら、黒いスプレーを吹きかけます。ブラシを使って、できるだけ綺麗になるように整えます。一緒に染色していた先生と生徒は楽しそうに会話していましたが、私は・・・でした。2 黒にするのもピンクにするのも同じ
先生が生徒の髪を染めてはいけない、と私が主張する理由は次の通りです。そもそも、黒にするのもピンクにするもの同じです。先生が染めることに変わりありません。「黒は黒に染めるのではなく、黒に戻すから良い、元通りにするから良い」という考え方もありますが、それは生徒に『甘〜い間違った考え方』を学習させることになります。髪の色を戻したり、元通りにすることは生徒にもできます。間違えたり失敗したとき、努力して頑張るのは生徒です。先生は見守るのみです。ピンク色に染めた生徒は、黒に染めることもできます。したがって、先生が黒に染める必要は全くありません。先生が髪を染める学校の生徒は、『どんな色で学校に行っても先生が黒くすること』『黒にする必要はないこと』を学習します。3 授業よりも大切なこと
ピンク色に染色してきた生徒の髪に、先生がスプレーして授業に入れる・・・地域や学校の特性があるとしても、生徒ができることは生徒にやらせるべきです。それは家庭で行う身支度の1つであり、学校は無料美容院ではありません。準備できていない生徒は自宅へ戻り、準備を整えてから再登校するように伝えください。先生の過干渉は、全く別の大きな問題を生む原因になります。いまだに先生が染色している学校があるなら、できるだけ早期に改善されることをお勧めします。例えば、「先生が染めるのは今回限り。次は自分で直しなさい。直るまで学校に入ることはできません」と約束の上、染色します。保護者にも約束させます。生徒や保護者が約束を破ったり破ろうとしたりしても、先生は絶対に破ってはいけません。それが先生の仕事です。4 私はオレンジにしたことがある
私は31才の時に生まれて初めて髪を染めました。オレンジ色です。なんだかカッコイイと思ったからです。でも、鏡で仕上がった自分を見て、残りの染色セットを捨てました。私は何もしない方がかっこいいことを身を持って体験し、深い満足を得ました。今は白髪まじりですがカッコイイと思っています。減量してきた髪は残念ですが、それもカッコイイと思うように努力すれば、その生き方がカッコイイのでは、と思っています。5 修学旅行当日、茶髪できたA子
ずいぶん昔の話をしましょう。私が学年の生活と行事のキャップをしていた頃の話です。当時、修学旅行の行き先は東京で、初日の朝の集合場所は名古屋駅の新幹線改札口前の広場でした。私は広場正面の中央に立ち、私服で楽しそうに集ってくる生徒達を見ていました。A子も来ました。A子は私のクラスですが、いくつかの問題を抱えていました。私は『当日、無断で欠席するかも』と心配していたので、とても喜びました。しかし、髪が茶色です。A子は数人の友達と一緒にクラスの列へ入りましたが、私は足早にA子のところへ行き、「おはようざいます。A子さん、君と一緒に旅行できそうだから嬉しいよ。でも、その前に髪を直して来なさい。そのままでは絶対にダメです。これはいつもの学校と同じです。授業と同じなので、自分で直さなければ行くことができません。時間はまだ少しあるので急いで直しなさい。」と言い、私は正面中央へ戻りました。私が中央に戻った時、A子は大きな鞄を持って列から出ていくところでした。私は彼女を信用していたので心配していませんでしたが、実は、私に内緒で、B先生がA子に付き添ったそうです。当時、B先生と私はコンビを組み、A子の学級担任をしていました。B先生はとても気立てが良く、美しい経験を積んだ女性なので、頑張って名古屋駅に来たA子、頑張ってオシャレしてきたA子を手伝いたかったのでしょう。黒染めスプレーを買ってあげたかも知れません。駅構内のキオスクを回って黒スプレーを探し、トイレの中で2人で染めたそうです。現場にいた一般客は、びっくりした目で見ていたそうです。この話は、A子の成人式の日にB先生から聞きましたが、B先生とA子の秘密だそうです。とても懐かしい思い出です。これは、ずいぶん昔の話ですが、今現在でも100年後でも同じ思い出をつくることができると思います。若い先生、頑張ってください。生徒の髪を染めてはいけませんよ。
2010年12月30日
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