このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第6.3章 校 則

12 授業中に携帯電話が鳴ったら

 鳴った時のタイミングや周囲の生徒の反応によって、先生の応対は180度変わります。授業を中断して徹底的な指導を行なう場合から、わざと気づかない態度をする場合まであります。

 非常に荒れている学校では、保護者が子どもに携帯電話を持たせ、授業中でも平気に会話します。レストランや電車でもマナー違反となる時代ですが、大人になっても常識を持たない人はいます。このような保護者に対応するのは、人生経験の少ない新卒の先生には無理なので、先輩の先生に任せましょう。

 子ども自身の判断で携帯電話を学校に持ち込み、それで遊んだり見せびらかしたりしている場合は、徹底的に指導します。携帯の問題に限らず、生徒指導をどこまで行なうかの判断は、授業が成立するかしないかです。放置すると授業が成立しなくなる可能性があるなら、授業を中断したり、関係する生徒だけを授業から抜き出します。

 さて、いよいよ本題に入りましょう。正常な学校の場合、授業中に携帯電話が鳴れば、先生を含めた教室の全員が吃驚するでしょう。もちろん、本人も吃驚するはずです。そこでとる先生の対応は、一呼吸おいて落ち着いた声で「誰か間違えて携帯電話を持ってきてしまったようですね。誰ですか」と声をかけましょう。これは正常な学校を想定しているので、電話の持ち主が手を挙げます。先生は、その子の側へ行き、電話の電源を切らせ、間違えてきた持ってきた理由を聞き、学校が終わるまで職員室で預かる旨を伝えます。そして、授業後、密封した封筒に入れた電話を返します。保護者へは、学校の電話を使って、今日の事実を連絡しておきます。

 着信音が非常に小さく一部の生徒しか気づかない場合は、教師が無視したり気づかない振りをしたりする場合もあります。バイブになっていて、数人の生徒しか反応しない場合も同じです。ただし、携帯を持ってきた生徒が十分に「しまった!」と感じていることが前提です。非常に落ち着いた学校で、生徒と先生との間に十分な信頼関係ができている場合は、授業をあえて中断する必要はありません。間違えた生徒は、十分な冷や汗をかいているはずです(送信した相手も冷や汗をかいていると考えます)。

 さらに上級の教育的手法では、何人かの生徒が「先生、携帯がなっているみたい!」と言っても、「えっ、そうか?」と言ってとぼけます。これは新卒の先生には難しいと思いますが、この手法が有効に働くと、携帯を持ってきた生徒と教師の信頼関係が強く結ばれるだけでなく、教師が意図的に見過ごしていることを認知できる生徒との間において、かなり深い信頼関係が形成されます。

 ただし、2度目の着信が鳴ったら、すかさず「誰のかな?」と徹底的に究明しなければなりません。さらに、別な時間にチャンスを作って「携帯電話が鳴ったみたいな気がした場合」について話をしなければなりません。

 次に、やっかいな場合を紹介します。それは、学校帰りに遊ぶために携帯電話を持参している生徒の場合です。電話をかけてきた相手は、学校をさぼっている子どもであることが多いので、かなり危険な状態です。持参した生徒は常習化していると考えなけばなりませんし、その友達の多くも持参しているでしょう。携帯電話をすんなりと先生に差し出すことは考え難いですが、ここは勝負しなければいけません。授業が中断されたのですから、がんばって下さい。保護者に来校してい頂いたり、先生が家庭訪問して子どもの生活について話し合う必要があります。また、生活係の先生と連係して指導して下さい。

 また、新しく買った携帯電話を友達に見せたくて持ってくる子どももいます。その場合は、さくっと預かって下さい。そして、厳しく保護者と本人に注意して、2度と繰り返さないようにさせて下さい。必要に応じて、再発防止のための約束もして下さい。子どもの通話料金に手を焼いていた保護者は、「今度持ってきたら、携帯電話そのものを持たせない」という約束を大変喜ばれます。お試し下さい。

 最後にもっとも重要なことを確認します。それは電話を持って来た背景をよく考えることです。不要物である携帯電話をもってきた事実は変わりませんが、その背景は千差万別です。ただ単に校則を遵守し、校則違反者を罰するだけでは、教師ではありません。その失敗を使って、子どもが成長するようにしなければいけません。無理に取り上げたり、無理に詮索する前に、生徒の事情を聞いてみましょう。自分勝手な理由なら、一蹴するまでのことです。

携帯電話を持ってくる事情や原因
(1)家庭の事情で、1日限り必要な場合
 → 保護者から事前に連絡があるはずです
(2)単純な手違いで、全く気づかなかった場合
 → その日のうちに返却する
 → 生徒から、過って持参したことを申告してくる場合もある

(3)学校で見せびらかすため
 → 一過性のものですが、持って来た子どもは「お調子者」の場合が多いので、厳しく注意します。いかなる場合でも、見逃すことはあり得ません。さらに調子に乗るだけです。
(4)学校帰りに遊ぶため
 → 常習化していることが多いので、本人、保護者と共にかなりの時間をかけて生活改善を考える必要があります。

携帯電話を預かる場合
(1)間違えて学校に持って来た生徒が、先生にこっそりと自己申告した場合
  (休日に使った鞄に入れたままだった、という相談を受けた場合)
  → 下校時に、こっそりと返却する

(2)授業中に携帯電話の着信音が鳴った場合
  → 誰もがわかる違反は、絶対に見過ごしてはいけない

2008年5月6日

↑ TOP

[Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン]
[→home

(C) 2008 Fukuchi Takahiro