このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第6.3章 校 則

3 登下校は、白い靴をはくこと

校則1
 登下校は、白い靴をはくこと

1 2011年現在の名古屋市立公立中学校の現状
 名古屋市の公立中学校のほとんどは、登下校中に白い靴をはくことを校則にしています。市外の方は驚くと思いますが、事実です。さらに、中学校の職員以外は、「え”ー、そんなこと指導しているの?!」と唖然、呆然されると思いますが、私は本気で指導しています。『白い靴』と一口に言いますが、現場での指導は大変です。例えば、ワンポイントでもダメ、ライン1本でもダメ、だけど、底の茶色いラバーはどうしよう? この小さな銀色メッシュどうします? この白色は微妙に光っているみたいだけれど・・・、安全用についている反射板はどうしましょう? など、微妙な基準は各学校で違いますが、本当に自分でも振返っても「どうでもいいじゃない」と思うことを本気でやっています。これができない学校は、学校崩壊するからです。本当だからです。

 次に、2008年2月20日(水)の私の手記を掲載します。

 名古屋市のほとんどの公立中学校の生徒は、白い靴を履いています。校則の中に、白い靴が規定されているからです。そして、この靴の基準について、職員室では真剣な議論がなされています。小さなワンポイントのデザインなら良い、線が1本なら良い、靴底の色も白でなければいけない、などです。

 このような話を聞くと「名古屋市は厳しいなあ」と思われる方から「白い靴は当然だ」と思われる方がいらっしゃるだけでなく、「無意味なことを議論しているなあ」と感じられる方もいらっしゃるでしょう。実際、京都や奈良などの観光地で出会う修学旅行の生徒を観察していると、完全に自由な学校から全員指定されてた革靴でそろえている学校まで多様です。

 靴に関する現在の私の考えは、「完全な白」です。ただし、この校則は現在の学校だけに当てはまるものです。理由は、現在の「完全な白」に対して、生徒から不満の声が聞こえないからです。校則は先生が作るものでも壊すものでもないと思うからです。生徒の声に耳を澄ましていれば、校則は自然に決まります。先生は正しい判断をするだけです。

 間違えて違反した靴を履いてきた生徒は、自分で間違えたことを先生に報告したり、下駄箱に置かずに職員室で保管してもらうように申し出ています。また、友達が新しく買った靴が怪しい場合、生徒は私に「先生、あれっていいの?」と質問します。私は、生活指導の先生と相談して、微妙な靴の判断をして良いか悪いか決めます。良ければそのままですが、ダメな場合は、通学用ではなく家庭で履く靴となります。

 さて、私が白を推奨する理由は、靴の価格が安いからです。公立中学校には多様な家庭環境の子どもが集まるので、価格が安いことは重要です。下駄箱に並んでいる靴の底を調べると、穴が開いているものが10%あります。親指ぐらいの大きさのものは、靴下が直接路面に接するので冷く、靴下に穴があき、怪我をする危険があります。雨の日は靴下がべたべたになります。上履きにはきかえる時、靴下を脱ぐ生徒が非常にたくさんいます。替えの靴下を持ってきている生徒もたくさんいます。

 明らかに穴があいている割り合いは10%ですが、水が通過するすき間がある靴まで含めると30%でしょう。この割り合いは本当です。今日、調べたから間違いありません。それが私が勤務する中学校の現実です。それから、一足一足ひっくり返して見たからわかったのですが、これらの靴はとても安いものです。平均980円でしょう。中には380円以下のものもあると思います。なぜなら、ほとんど新品なのに、底が抜けるように「ぱかっ」と開いていたり、劣化したプラスチックのように崩れ落ちたりしているからです。恥ずかしい話ですが、私はこのような靴を見たのは初めてでした。生徒の現実を知らなかったと思い、本当に反省しました。ちなみに、スクールランチ1食の値段は、現在780円(保護者負担280円)です。

 もちろん、靴の料金を下げるために、靴の自由化に踏み切ることもできますが、そうすると高価な革靴や流行の靴を履いてくる生徒が続出し、靴を自由に選んで購入できない生徒に精神的負担をかけることになります。学校は教育の場ですから、できるだけシンプルな生活をさせ、本質で勝負するようにしなければいけません。厳しい制限が靴にあるからといって、自由が損なわれることはない、と考えています。

 逆に、裕福な家庭のお子様ばかりが通う中学校なら、完全な自由、あるいは、その中学の社会的ステイタスを示す制靴(制服に合わせた靴)をはくことになるでしょう。それが中学に通う目的の1つだからです。これは皮肉ではなく、1つの現実です。裕福な地域(家庭)の子どもたちの日常生活は、学校生活にも影響を与えるのです。

 私がここまで述べても、「校則なんてどうでも良い!」思われる人がいらっしゃると思いますが、それはいけません。必ず、何らかの基準を作らなければなりません。完全な自由にしてしまうと、ゴムサンダルや下駄、ハイヒール、膝まである編み上げブーツ、その他、下駄箱に入らないような奇抜なデザインの靴が登場することになるでしょう。中学生は、大人よりも自由な発想を持っています。私やあなたが考えつかないようなことをしてくれます。それが赤ちゃんなら、「まあ、かわいい!」なのですが・・・

2011年1月3日

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