このページは『Mr. takaによる若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第2章 How to 授業

16 小さく手を挙げて!

─友達に知られたくないことを表現させる─

1 生徒が挙手をする場面
 授業中に生徒が挙手する場面は、以下のようにいくつかあります。これらは、いずれも自分自身を表現するためのものです。
(1)自分の考えを言葉にして発表する
(2)自分の意志(はい、いいえなど)を示す
(3)立候補する
(4)多数決のための1票を投じる

2 正しい挙手の方法
 挙手の正しい方法は、腕を耳につくように真直ぐ伸ばし、真上に挙げます。しかし、このような挙手ができるのは、かなりの優等生か、自分の考えに絶対的な自信を持っている場合に限られます。

参考資料:理想的な発言の手順

(1)「はい」と大きな声を出して、しっかり手を挙げる。
(2)手は真直ぐに伸ばし、腕は耳につくようにする。
(3)先生の指名があるまで、先生をしっかり見て待つ。
(4)指名されたら、大きな声で返事をして起立する。
(5)自分の意見を発言したら、起立したまま先生の指示を待つ。
(6)先生が「着席」と指示したら、着席する。

参考資料:ハンドサイン

 とある研究指定校Aでは、生徒にハンド・サイン(ぐー、ちょき、
ぱー)を使って意思表示をさせたり、特別なカードを使って授業を
進めています。私はそのような実践をしたことはありませんが、そ
のような学校の生徒と話をしたことがあります。彼らは「疲れる」
「先生も疲れている」と教えてくれました。授業中休むことなく、
自分の考えや意見を100%表現したり、相手の状態を完全に受け止
めることは無理があるのです。

3 2/3の生徒は自信を奪われている
 さて、理想的な挙手をして発言できる生徒の数は、非常に限られています。なぜなら、多くの生徒は自分の考えに自信をもっていないからです。「そんなことはない」「わからない時でも、しっかり手を挙げるべきだ」と思うのは、学校生活を優等生として過ごしてきた大人の台詞です。あるいは、本当に優秀な先生に教育されてきた幸運な大人の意見です。ほとんど生徒は、中学生になるまでに他人と比較されたり、考えを否定されたり無視されたりすることで自信を失い、その結果として、中途半端な挙げ方をしたり、隣の友達に話したり、小声でぼそぼそ呟いたりするようになります。座ったまま勝手に叫ぶ生徒も、同じような環境で生活してきた結果です。

4 小さく手を挙げる
 そこで、私は『小さく手を挙げさせること』を推薦します。先生だけにわかるように、こっそりと挙げさせます。机に肘をつけたままなら、ほとんどの友達に気づかれません。それでも心配な生徒には、手首をつけたまま手の挙げさせます。とくに、とても簡単な計算が分からない生徒や、簡単な言葉の意味の説明をして欲しい生徒にとっては嬉しい話ですし、先生にとっても、どれだけの生徒が理解できていないか、授業で説明を加える必要があるか調べるために非常に有効です。是非、お試し下さい!!

 小さな声で、先生も小さなジェスチャーをするのですよ。

 「ちょっとこの部分が分からない人、小さく手を挙げてくれるかな?!」
 「はいはい、どうもありがとう。6人ほど手が挙ったので、ちょっとだけ説明しておきます」

5 最終ゴール
 このような授業を3年間続ければ、かなりの生徒が自分の考えに自信を持ち、自然に手を挙げるようになります。目的は手を挙げさせることではなく、自分の現状(できること、できないことなど)や意志(やりたい、やりたくないなど)などを他人に示すことです。そして、ユニークで独創的な自分の意見を述べることです。教科書の答えを発表するために元気良く手を挙げさせるのも悪くありませんが、これは小学校までに卒業すべきことです。そのような挙手を中学でさせる場合、ゲームやクイズ感覚などを取り入れて慎重に扱って下さい。

2008年11月26日

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