このページは『Mr. takaによる若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第2章 How to 授業

7 声の3要素、話すスピード

1 声の3要素
 音響学では、音の3要素「大きさ」「音程」「音色」としています。これを声の3要素として考えることができます。以下の表を参考にして、授業内容に合わせて3つの要素を自在にコントロールしてください。先生はオーケストラの指揮者のように楽曲に合わせて、自分の声をコントロールします。これまで眠っていた生徒の何人かが目覚めることでしょう。先生自身も自分が話すこと(歌うこと)を楽しんでください。

(1)大きさ  大きな声を出しはいけません。素晴らしい音楽と同じように、強弱の幅を豊かにましょう。初心者は、強く大きな声を出すことばかりに気を取られますが、上級者になること小さな声にこだわります。音楽ではpp(ピアニッシモ)です。実際の授業で、最も大切な部分の説明で、ppからff(フォルテッシモ)までの幅を持たせることができたら、かなりの上級者です。私は毎時間意識していますが、大切なところほど、強弱の幅が大きくなります。全体の大きさではありません。幅です。これは、絵画の明暗や彩度などの幅とも対比できます。
 ワンポイント:授業でうるさくなったら、ppで「@@さん、聞こえますか。」と注意してみましょう。あるいは、ppで「聞こえる?」と声をかけてから、耳に片手を当てて返事を待ちましょう。かなりの効果が期待できます。大声で「うるさい!」と注意するのは、1時間の授業で多くても1回まででしょう。
ppのポイント:小さな声ほど、大きな口を開け、顔の表情を豊かにして、大きなジェスチャー加えます。
(2)音 程  緊張すると声のトーン(高さ)が高くなり、上ずった声になります。これと同じように、先生が頑張ると音程が高くなり、非常に聞き難くなります。授業で大切なポイントは高くなる傾向があるので、意識的に低い音程で話すようにしましょう。それでも無意識のうちにトーンが上がるので、結果として、抑制が利いた聞きやすいトーンになるでしょう。生徒は、不思議な迫力に満ちた先生の話し方にハートを掴まえられるでしょう。常に冷静に、そして、「低く低く」と心掛けましょう。もちろん、意識的に高くする部分もあります。
(3)音 色
 
ねいろ、おんしょく
 心地よく、美しく、教室の隅々まで響き渡るように発声しましょう。腹式呼吸も練習しましょう。身体全体を使って発声しましょう。声とあなたが一体となるように、正しい発声方法を練習して下さい。音楽科の先生に直接教えてもらったり、生徒と一緒に音楽の授業を受けさせてもらうのは、いろいろな意味でとても有効です。

2 音楽のようにスピードを操る
 話をする速度は、話をする人の個性の1つです。早口な人、ゆっくり話す人などいろいろタイプがありますが、プロの教師なら話すスピードも意識的にコントロールしてください。時と場合に合わせた速さで話してみましょう。同じ内容でも、全く違う効果が得られます。

 そのための練習として、あなたの通常の速さを「普通」として、それより「速い」「遅い」の2つのスピードを意識してみましょう。無意識のうちに速さは変化しますが、意識しようと意識しているうちに、どのような場面で速く、どのようなときに遅くなっているか分かると思います。

話をする速さ3段階
(1) 速 く
(2) 普通に
(3) ゆっくり

練習方法1 意識的に、速さを一定にしてみよう!
 
速いまま、ゆっくりのまま話してみましょう。ポイントは、どんなに速くても遅くても聞き取りやすい発声を心掛けることです。声が粒として見えるような発声、単語1つひとつが際立つような発声をしてください。これは、スピードが変わっても明確に聞き取れるような発声をする練習です。

練習方法2 速さを変化させよう!
 
速さを変化させる方法は、次の2つです。
(1)だんだん速くする
(2)だんだんゆっくりにする
 とても単純なことですが、これを意識している先生はほとんどいません。もし、先生が話すスピードを変化させるなら、生徒は何が起こったのか、と身を乗り出すでしょう。ただし、それに似合うだけの内容がなければ、「変な先生」と言われるので注意して下さい。私は「変な先生」と言われていますが、生徒よりも大きな変化を持った時間の中で授業をしているからだと自覚しています。それだけ、緊密な時間をつくり出してください。

3 ステージに立った指揮者のように魔法をかける
 身ぶり手ぶりを交えます。あなたは生きた人間(動物)ですから、いろいろな部分を意識的に動かすことができます。初めはごく簡単な動きで構いません。あなたの言葉に身体の動きをつけて下さい。口だけしか動かないようでは、スピーカーと大差ありません。言葉(音)だけでなく、あなたの情熱(映像)も伝えて下さい。

(1)顔の筋肉(表情)  顔の表情はもっとも重要です。本当? 凄い! がんばって覚えようね、など話す内容にぴったりの表情を作ってください。意識的に大きな表情をつけているうちに、無意識にできるようになります。
(2)指、手首、腕、肩  これらは全て違う表情を持ちます。指で数をかぞえたりサインを出したり、手首を振ったり回したり。腕や肩は大きな動きになりますが、是非、授業中に何度かは使ってください。眠くなる生徒が減ります。
(3)腹、背中、腰、足  全身を使ってみましょう。腰痛も治ります。中央だけでなく、左右に移動しながら、ジャンプしながら。

 音楽の指揮者は観衆を背中で魅了しますが、あなたは正面を向いて話をすることができます。生徒の心を掴むのは、とても簡単です。言語としての言葉ではなく、言葉以上のイメージを生徒の心の中に残してください。生徒という素晴らしい楽器の音色を十分に引き出すように、魔法をかけて!

 また、大切な部分だからといって、ゆっくりと何回も繰り返すのは、聞き手からすると苦痛です。くどくどと感じたり、先生から押し付けられている感じたりします。大切な部分だからこそ、1回で決めてください。

2007年6月4日

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(C) 2007 Fukuchi Takahiro