このページは、Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスンです。 |
第10章 楽しい集会
8 司会者の仕事
1 学校集会の司会はシンプルに
「これから集会を始めます。時間は終業のチャイムが鳴る5分前、午後1時35分までです。内容は3つ、A先生から修学旅行について、B先生から定期テストについて、C先生から最近の生活について、以上です。それでは、A先生お願いします。・・・(A先生の話が終ったら) A先生、ありがとうございました。次に、定期テストについてB先生、お願いします」と言います。結婚式や宴会の司会は自己紹介から始めますが、学校での集会はそこに集る人の顔を知っているので、とても簡潔に行うことができます。2 初めに集会全体を紹介する
「これから集会を始めます」と集会の始まりを宣言したら、「時間は終業のチャイムが鳴る5分前、午後1時35分までです」と集会の時間を明示し、「内容は3つ、A先生から修学旅行について、B先生から定期テストについて、C先生から最近の生活について、以上です」と集会の内容を言います。これが、集会全体を紹介する方法です。事前に打ち合わせができてきるなら、集会全体のねらいを伝えますが、それは学年主任の話として先頭か最後に入れる方がよいでしょう。3 話をする人と内容を紹介する
「それではA先生、○○についてお願いします」と話をする人と内容を紹介します。たったこれだけで必要十分です。事前の打ち合わせで、話の聴きどころを紹介することもありますが、そこまでの準備時間をとれないのが現状です。とにかく、打ち合わせなしのアドリブは厳禁です。4 蛇足だそくを知っていますか?
A先生の話が終ったら、「A先生、ありがとうございました。次に、定期テストについてB先生、お願いします」と言います。その一言で生徒は気持ちを切り替え、次の話を聞く準備をします。まるで、ランチのデザートを前にして、口や胃袋が準備をするのと同じです。しかし、デザートを前にして、食べ終えたランチの話をすると、食べたものが不味くなります。先生の話が下手でも我慢して下さい。生徒も我慢して聴いています。どれほど言いたいことがあっても、補足、補強、ダメ押し、確認、要約などをしてはいけません。それはあなたが必要だと思っているだけで、世間一般には「蛇足」と言われることです。話をした先生と話をそれを聴いた生徒に嫌な思いをさせるだけです。5 どうしても言いたいなら
それでもどうしても話をしたいなら、司会者の立場を降りて下さい。予定してた重要なポイントを忘れていたり、意味不明なことがあるなら、司会者として生徒の質問を受付けたり、司会者として質問するべきです。
実践記録:非難訓練の司会者
日時:2010年5月6日(木)6限
場所:学校の運動場(快晴、気温27度C)
対象:全校生徒(約700人)
内容:校長先生のお話1 準備:生徒が整列するためのラインをひく
私の勤務校は22クラス(約700人)なので、各クラス男女各1列縦隊に並ぶとかなり長くなります。しかも、全校で運動場に整列するのは、今年度始めてなので、ある程度の準備が必要です。昨年までは、小さなマーカーを全クラス×2個、運動場に配置して下さる先生がいらっしゃいましたが、昨年末に転勤されたので、今年は白線だけにしました。ただし、昨年より工夫した点があります。それは、先頭が並ぶ長い横線の中央に、それと直角になる1本の縦線を書き、その延長線上に無線マイクスタンドに立てたことです。とても簡単な準備ですが、その効果と結果は良好でした。必要最小限の準備は、高い自主性と良い結果を引き出すものです。それを予測して整えるのも司会者の仕事です。2 並べる:適切な指示を微妙に変えながら繰り返す
生徒が運動場に出てきたら、すぐにマイクで指示します。「運動場に出たら急ぎなさい」「男女各1列です」「室長は声を出して整列させて下さい」「室長は点呼できたら学級担任と学年主任の先生へ報告しなさい」「学年主任の先生は教務主任の先生へ報告して下さい」など、タイミングを見計らって繰り返しました。とくに、「先頭の人は急ぎなさい」「男女各1列になっています」という言葉は、次から次に出て来る生徒に対して、何度も繰り返すことになりました。どの位置にどのように並ぶかは、事前に各学級で説明済みですが、現場で確認することはとても重要です。整列・点呼の方法は決まっており、明確に確実に自信をもって行うことができるようにします。結婚式でも「どうぞ中へ入りおかけ下さい」と一言いわれるのと言われないのとでは、全く動きが違います。3 良い雰囲気を作るためのテクニック
「静かにしなさい!」と怒鳴るのは、最悪の方法の1つです。マイクを持っている司会者は、「整列でできたクラスから着席して下さい。室長(生徒)はその指示を出して下さい」「2年生は整列してからの点呼がとても早くて素晴らしいですね」「今は、先生が避難の指示の放送をしてから、3分10秒です。何とか5分以内にできると良いな、と思っています。協力して下さい」「これは訓練だから、喋らずに我慢することも訓練です。訓練して下さい」「3年生は完全に点呼が終了したようです。2年生ももう少しのようですね」「今は、4分20秒です。5分の目標までもう少しです。頑張りましょう」のように、着席していて全体の進行が見えない人へ現状報告するような言葉を考え、良い雰囲気を作ります。これが整列係りと司会者の違いです。当日の現場のようす
各学年ごとに、集会担当の先生、学級担任、男女の室長(生徒)が声を出して整列させていました。他学年と離れて整列できたので、よりスムーズかつ自主的にできたと思います。4 集会の流れを紹介する
「はい、今、教務主任の先生の手が挙がりました。時間は5分10秒。とても良い時間だと思います。それでは、これからのスケジュールを説明します。今は、各学年ごとに奇麗に並んでいますが、学年と学年が離れているので、2年と3年生に(手を動かしながら)中心へ移動してもらいます。まず先頭だけ動いてから並ぶ、という方法もありますが、みなさんなら、一斉に動いてもできると思うので、後から一斉に動くよ!! それから、校長先生のお話を頂いて、美化委員に下駄箱に移動してもらって、雑巾を準備してもらって、各学級へ戻ります。戻る時は、濡れ雑巾で奇麗にスリッパの底を拭いてから、にして下さい。以上で今日の避難訓練は終りです。では、今からのスケジュールが分かった人? (司会者も真っすぐに手を挙げて)はい、それでは、2年生と3年生は移動します。起立! 移動!」その後の指示
「先頭の室長は位置を確認したら、声を出して整列させて下さい。整列できたら、順に着席させて下さい」「さあ、いよいよ始まります。みなさん、姿勢を正して! 中央に注目!」5 集会のメイン:校長先生の話
大切なのは話を頂こう、とする期待感や雰囲気を高めることです。司会者は目立つことなく、全体の意識が校長先生が立つマイクスタンドへ向うようにします。そのために私が準備したことは、自主性を重んじた手際よい整列、これからのスケジュールの紹介、そして、校長先生の紹介です。「中央に注目!」の後、「校長先生、お願いします」と述べ、私は静かに引き下がりました。6 校長先生の話の後
司会者は「校長先生ありがとうございました」とお礼を述べます。聴衆を代表して感謝の気持ちを言葉に表します。その内容を要約して繰り返したり、自分の意見を付け加えのは間違いです。自分の仕事に徹することで、生徒も自分の役割に徹することを体感して学んでいくものです。7 目的を達成した歓び:非難訓練と集会について誉め讃える
これは司会者の立場を超えますが、私は生徒を褒めることにしました。「(校舎の中央にある大時計を指差して)みなさん、時計を見て下さい。今何時ですか。(その時間はわざと確認せずに)・・・先生が計画した予定では、みなさんが教室へ帰るのは13時40分になっていますから、15分も早いことになります。これは、みなさんの協力でできたことです。とても素晴らしいことです。係として感謝します。ありがとうございました」褒めるチャンスは逃さず、チャンスがある人が率先してやるべきことです。生徒の意欲を高め、次の行動がより良くなります。8 教室へ戻る
司会者は、事前に話をした通りに進めます。「それでは、教室へ戻りましょう。各クラスの美化委員の人は立ちなさい。男女各1人ずつです。はい、起立! 全員立ちましたか。それでは、土間に移動しないさい。移動!」(移動している最中に)「美化委員の人は、下駄箱に準備しておいた濡れ雑巾4枚を使って、自分の学年の人のスリッパを拭いてあげて下さい。自分のクラスの人でなくても、お願いします」と指示します。この指示は、美化委員に出してものですが、実際は、整列して待っている生徒の自主性を引き出すことも大きな目的の1つです。役割の違いを意識させることは、とても重要です。このように、司会者は明確な意図を持って言葉を選んで話します。その意図は言葉にしませんが、司会者が意識するのと意識しないのとでは、生徒の動きに大きな違いが出ます。note
最近、避難訓練の司会者というチャンスを頂きました。このページは、その実践を中心にして書いたものです。この他にお伝えしたいことは、職員会議の司会も同じ(復唱、要約をしない)、授業で先生が司会者の立場になれるようになったら一人前、英語ではプレゼンター、MC(マスター of セレモニー)などと言う、などです。一流の司会者は出演者の力を引き出し、会場の雰囲気を盛り上げ、ハプニングや問題を解決します。とても重要な役ですが、主役より目立つようでは・・・です。2010年5月10日公開
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