このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第7章 悩んでいる生徒

10 修学旅行に行かない! と言い張る生徒

1 根拠のない自信だけによる私の実践例
 私のスペシャルな実践例を紹介しましょう。修学旅行を2日後に控えた昼放課。職員室前の廊下で、3年生の女子生徒Aさんと若い学級担任B先生が話し合っていました。私は、トイレ帰りの通りすがりでしたが、彼らの会話が平行線で進まないことを知りました。Aさんは「修学旅行に行かない!」の一点張り、B先生は常識的な話をくり返すだけです。Aさんと私は接点がなく、1度も会話したことがありません。それでも、私は彼女の心を動かせる、という不思議な自信がありました。

2 コーヒーカップを片手にして
 私は、何喰わぬ顔をして職員室へ戻り、コーヒーを作りました。毎日10杯近く飲むのですが、今回のように戦略のひとつして飲むことは多くありません。そして、熱々のコーヒーカップを片手に廊下へ出ました。2人に近づき、コーヒーを飲みながら1分ほどタイミングを見計らい、彼らの会話に割り込みました。若いB先生は大丈夫ですが、他の先生に見つかったら叱られるではないか、と私はドキドキでした。そして、「僕は君の目が好きだなあ」と言いました。

3 先生って、ホストみたい
 Aさんは、私のいい加減な態度や話し振りをみて、「先生って、ホストみたい」と言いました。作戦通り、彼女の心に入り込めたのです。その後、私はAさんの容姿が好みであること、私はAさんを美人だと思うこと、修学旅行は特別な思い出ができること、この3点を何度もくり返しました。理由はありません。それが事実だからです。私は写真が好きですが、女性を撮る場合、彼女を恋人だと思って撮ります。本気で惚れること、それが私の教育と写真撮影の基本姿勢です。

4 本気と本気の勝負
 Aさんが自分の容姿を悩んでいたことは、B先生との会話から明らかでした。だから、私はAさんの容姿を誉めたのです。こんな芸当は、もともと惚れっぽい性格の私にしかできないかも知れませんが、Aさんの目は本当に魅力的でした。ここで、Aさんの容姿に対する悩み(本気)と私の本気の勝負です。私は理由なしで、しかし、様々な視点からAさんの魅力を伝えました。Aさんの悩みは『全員から嫌われている』でと、私の本気によって崩されてしまいました。たった1人でも、Aさんことを本気で美人だというのですから、『全員』ではないことになります。

5 修学旅行に行く!
 Aさんと会話したのは、4〜5分です。彼女との関わりはもともとないので、私に許された時間はその昼放課だけでした。私はAさんに対する自分の思いを熱く語りました。その結果、Aさんは「修学旅行に行く」と言いました。私を信用してくれたのです。Aさんは無事に修学旅行へ行きました。それ以来、私と彼女とは廊下で出会うたびに挨拶を交わす仲になりました。私は、Aさんのことを一生忘れないと思います。彼女の魅力的な目を今でも鮮明に覚えています。

6 まとめ
 複雑な環境にいる生徒には、その生徒の応じた対応が必要です。誰の目にも普通に見えるような、誰からも批判を受けないような指導方法では無理なことがあります。若い先生がコーヒー片手に話をすることは厳しいと思いますが、精一杯の工夫をして生徒の心をつかんで下さい。あなたは、私が失ってしまった若さというツールがあります。

2010年12月29日

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