このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第7章 悩んでいる生徒

11 セクハラ先生と呼ばれても

1 セクハラ先生、という流行語
 私はとある女子生徒から、廊下で出会う度に「あ、セクハラ先生」「先生、さっきの授業で私の頭を触ったでしょう」と大声で言われていたことがあります。この言葉だけを聞いた友達や先生は誤解したでしょうが、その生徒は喜んでいました。その喜びを素直に表現できないので、「セクハラ先生」と言ったのです。それは、セクハラという言葉が流行していたことが原因なので、あと何年かすれば違う単語に置き換わるでしょう。

2 真実は本人が知っている
 若い先生から、「福地先生、触らないでください」と言われたこともあますが、真実は本人が知っています。私がリスクを背負いながら、体当たりの教育をしています。本人をとりまく友達、現場にいた生徒も知っています。セクハラとは無縁な行為であることを知っています。私は流行に左右されません。十分な注意を必要とする時代ですが、人が人を教育する上で、必要なことは必要です。マスメディアが作った流行に押しつぶされることは、教育の質を低下させるだけです。現場で働く教員は、うろたえることなく必要なことを実践するのみです。

3 大声で騒ぐ理由
 生徒が大声で「セクハラ先生」叫ぶ理由は、たくさんの注目を浴びたいからです。私は本人に確かめたことはありませんが、彼女は親を含めた大人から誉められたり、抱きしめられたりした経験が少ないと感じています。優しい声をかけられたり、優しく頭を撫でられた経験が少ないと思います。だからこそ、友達に誇示したり、私を試したりするのです。彼女は、私が本当に彼女を誉め、彼女のことを良い子だと思い、その結果として彼女の頭を撫でたのか、あるいは、お世辞に過ぎないのか試しています。男女を問わず、スキンシップが必要な生徒がいます。大人(親)から殴られた経験しかない生徒もいます。

4 机間巡視で小さな成功を拾い上げる
 授業中、机間巡視を何度もくり返します。そして、できない生徒の小さな努力、小さな成功を見つけます。1度目の机間巡視では、漢字の読み方を教えたり、ヒントを示したり、考え方の道筋をしめします。2度目の巡視では、できたことを誉めます。どんなに小さなこと、途中でもオッケーです。成功体験、成就感、愛を知らない生徒にとって、大人(親、先生)から誉められることはとても重要です。「よくできました」「いいぞ」と言いながら、とても軽いタッチで頭を撫でます。もちろん、誰かを特別に撫でることはしません。ある条件を作り、その条件に当てはまる全員を誉め、撫でます。とくに、「あいつはできない」と友達から思われている生徒を狙います。ただし、心の準備ができていない生徒がいる場合は、無理に行うことなく見合わせてください。適切なタイミングがあります。

5 生きていることを無条件に喜ぶために
 寂しがって泣く赤ちゃん、誰も抱いてくれてなくて無表情になっている赤ちゃんを笑わせるのは簡単です。声をかけ、抱き上げ、あやしてやればよいのです。しかし、中学生は赤ちゃんのように抱きしめることができないので大変です。先生も親も、間接的な方法で示さなければいけないからです。高度な技術を必要としますが、頑張るしかありません。私は廊下で出会った生徒に、「今日も良い子だね」と言いながら頭を撫でることがあります。理由はありません。必要かどうか、彼(彼女)が求めているかどうかは、目があった瞬間に判断します。

6 男子生徒の保護者から
 私は、とある男子生徒の保護者から「うちの子どもはスキンシップを嫌いますので注意してください」と言われたことがありますが、私はそれを無視しました。その生徒がスキンシップを嫌うのは、「お毋さん、お毋さんに抱いて欲しい!」という気持ちの裏返しだ、と感じたからです。お毋さんができないなら、できる人(私)ができる範囲でやるしかありあせん。どんなに硬直した心の子どもでも、1年ぐらい続けると少しずつ温まってくるものです。他人の私でもできるのですから、お毋さんなら1度でできてしまうでしょう。

7 まとわりついてくる生徒
 男女を問わず、私を触りにくる生徒がいます。それは私に触って欲しいからです。そのお返しをすることで、彼らは満足します。また、同級生から嫌われている生徒も多く集ってきます。その理由は、私から「良い子だね」と声をかけたり、優しく頭を撫でたり、とても軽いスキンシップをするからだと思います。心と身体はつながっています。心だけで教育できることは限られていること、心だけでなく身体が冷えきっている生徒がたくさんいることを念頭にきましょう。セクハラが叫ばれる時代は、より一層、心と身体が冷えきっている時代といえます。私は、日本人が自分の気持ちを全身で表現できるようになれば良い、と願っています。

2010年12月14日

↑ TOP

[Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン]
[→home

(C) 2010 Fukuchi Takahiro