このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。 |
第5章 笑顔の生活指導
6 走らない先生
─いかなる場合も走ってはいけません─
2007 dec 21プールで生徒が意識不明になった、という緊急連絡を受けた時は別ですが、先生はいかなる場合も走ってはいけません。
私は足が速かった
私は新卒のころ、廊下や校舎外をよく走っていました。こらぁー、と叫びながら悪いことをした生徒を追い掛けるのです。私は幼い頃から足が速かったので、すぐに捕まえることができたし、全速力で走って捕まえることに1種の快感さえ覚えていました。しかし、ある時、ある先輩から次のように注意されたことをきっかけに、私は『走らない先生』になりました。「福地先生。先生が走ると生徒が喜んで走るようになるから、走らないで下さい」
生徒は先生の真似をする
生徒は先生の姿を見て育ちます。先生が走れば、生徒も走ります。先生が焦れば、生徒も焦ります。先生が忙しいと言えば、生徒も心を亡くします。先生が大声を出せば、生徒も大きな声を出します。先生が繰り返し注意すれば、生徒も繰り返し注意されるようになります。私は、この単純な理論を忘れていたのです。タバコが蔓延した頃
今からずいぶん昔の話になりますが、校内が荒れ、タバコが蔓延した頃を紹介しましょう。当時、生活指導の係だった私は、タバコを吸っている生徒を見つけると、遠くから走って現場を押さえました。火がついたタバコを証拠物件として逃さないためです。しかし、これは繰り返すまでもなく、タバコを吸う生徒は走って逃げることを学習します。悪循環が始まったのです。これを避ける方法は、走らないこと、歩いて近づくことです。どんなに遠くても、生徒の顔や手の動きは判りますから、しっかり観察して近づきます。隠れた生徒、その順序、不自然な動きを完全に記憶します。そして、彼らに近づいたら、自分が観たことすべてを確認します。あやしい行動の1つひとつを全て確認し、1点の曇りもなく質問すれば、ほとんどの事実は解明されます。事実は動かないのです。先生が走ることは、悪循環の引き金でしかありません。
歩いて近寄った場合の質問例
「さて、さっき先生は君がタバコをくわえているのを見たけれど、そのタバコはどこにあるんだ」「しらん、じゃなくて、先生は君がくえているのを見ていから、君が言わないなら先生が探すけれど、どうするんだ? ・・・黙っているなら、先生が言うけれど、君は右手でタバコを持って、右手で後ろに捨てたように見えたから、君の右手で投げられる範囲を調べさせてもらうけど、それで良いのか? ・・・自分で言うほうが、カッコ良いと思うけど、、、どうする?」 (生徒が自分で吸ったことを認めた場合は、本人にタバコを拾わせます。先生は拾ってはいけません)「で、誰が持ってきたタバコなんだ?」「なるほど、A君が持ってきたものか。これについては、先生は何も見ていないし知らないから信用します」「で、A君。タバコは何本持ってきたんだ?・・・えっ、1本だけ持ってきたの? そんなことしたらタバコがくしゃくしゃになっちゃうけれど、何処に入れてきたの?・・・ポケットの中ですか、なるほど。となると、ポケットの中にはタバコの葉っぱが少し落ちているかも知れないので、ちょっと見せてもらってもいいかな。・・・あれっ、何もないしタバコ臭くないけれどおかしいなあ。本当はどうなんだ。もう一度言ってもいいよ。嘘を言うより、言い直した方が100倍良いから」
「さて、次はライターとかマッチとか、火が必要だけれど、それは誰が持ってきたんだ?」
先生は、堂々と事実の確認をすればよいので、走る必要はありません。もちろん、時と場合によっては全速力で走ることもありますが、基本は早足です。かなり速い早足です。それよりも大切なことは、先生の目の前に起きている事実の一部始終を絶対に見逃さないという気迫です。その気合いは、一瞬(正確には光速、3000000km/秒)のうちに問題生徒を捕らえることでしょう。全速力よりも速いのです。「あの先生に見られたらもうお終い。見られたことは誤魔化せない。正直に言うしかない」と思われるようにして下さい。それが先生と生徒の正しい人間関係です。
歩いて遅刻して、生徒に堂々と謝る先生になろう!
それから日常生活でも、先生は廊下を走ってはいけません。始業のチャイムが鳴っても、走ってはいけません。先生が遅刻するには、生徒が十分に納得する理由があったはずです。堂々と早足で進み、教室に入ったら、「遅刻してごめんね」と一言謝って下さい。それで十分です。いちいち理由を説明する必要はありません。もちろん、他の先生や生徒が見ていないとこでは、大いに走って下さい。その気持ちと行動があれば、一言の謝罪で、生徒は十分に納得します。息を切らして教室に駆け込む先生は、生徒から見れば情けないものです。大きなものを見て、大きな授業を展開できる先生になって下さい。↑ TOP [Mr. takaによる若手教師のためのワンポイント・レッスン]
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