このページは『Mr. takaによる若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第6.2章 アドバイス、説教と懲戒

7 何度話してもダメな生徒

1 わかっていないのは誰かな?
 職員室で、「A君には本当に困った。何度言ってもわからんからなあ。同じ話をする先生の立ち場にもなって欲しい」という話を聞いたことはありませんか。はっきり申し上げますと、何度話してもダメなことが分かっていないのは、A君ではなく先生です。A君に話してもダメなことが分かっていないから、A君に対して同じことをくり返すのです。核心をついた指導は1度で決まります。的外れは、何度繰り返しても的外れです。1度指導してダメなら、その方法は諦め、新しい方法を試してみましょう。失敗したことを繰り返すのは、反省できていない証拠です。A君の問題は別ところにあります。

2 問題の原因を探る
 A君の問題の原因を探ってみましょう。その原因が分れば、問題が解決するはずです。しかし、問題が大きければ大きいほど、その原因は複雑で深いものです。A君自身もわからなかったり、あるいは、先生に話しても無駄なレベルの昔の問題や家庭問題に根ざしていることがほとんどです。それでも機会をとらえ、根本原因について一緒に考えたり探ったりすることは、問題の解決につながります。

3 言葉では解決しないこともある
 A君が言語による思考を苦手とするタイプなら、言葉によらない指導に切り替えましょう。先生は、自分の行動を変えてみましょう。A君も同じように違う行動をします。その結果、A君の新しい側面が見えてくるはずです。積極的に相手を変えたいと思うなら、まず、自分が行動することです。

4 心を閉ざす前に
 嫌なこと、問題の本質とは違うこと、一方的なこと、それらを何度も繰り返されると、人は誰でも心を閉ざします。何度も同じことをされた生徒は、やがて別室に呼ばれるだけで思考回路が停止するようになるでしょう。そうなる前に、先生は違う方法を実践して下さい。押してもダメなら引いてみる。引いてもダメなら、他の先生に頼んでみる。他の先生でもダメなら、親に相談する。親でもダメなら、生徒に頼む。生徒でもダメなら、一緒に走ってみる。走ってもダメなら、ゲームする。ゲームでもダメなら、昼寝する。昼寝でもダメなら、ランチを食べる。というように、無限のチャレンジしてみましょう。それはあなたの個性そのもの、教師という枠組みを超えたところでの人間性の大きさや経験だけがものを言います。ダイナミックな発想の転換が必要です。

5 友達につばを吐きかける子ども
 私の尊敬する先生の話をします。その先生は障害をもつ幼稚園児を担当されていましたが、その園児は友達につばを吐きかけて「あはははは」と無邪気に笑う癖がありました。親しい人に限ってつばを吐きかけ、相手の困った顔を見て喜ぶのです。この園児がある日、その先生にも吐きかけました。50cmの至近距離だったそうです。先生はニッコリと笑ってから、園児の顔に大量のつばを吐きかけてから、「あはははは」無邪気に笑いました。それ以来、その園児は誰にもつばを吐きかけなくなったそうです。

6 タイミングを逃すな
 タイミングはとても大切です。タイミングが良ければ、同じ指導でも生徒の心に深く入ります。先生がいつも心にかけているなら、必ず最高のチャンスが訪れます。タイミングが完璧なら、何も話さなくても、生徒は先生の目を見て全てを悟るでしょう。中学生は、それだけの力を持っています。

2010年5月11日公開

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