このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第6章 社会性と育む自然な争い

12 チクリがない生徒社会を育てる

1 チクリとは何か
 チクリとは、ある生徒が先生に知られるとまずいことを先生に密告(告げ口)することです。それは、黙っていれば先生に知られなかったことなので、『内部告発』ともいえます。2011年現在、世界中の話題になっているウィキリークス(内部告発サイト)のようなものです。中学校における内部告発の例は、次の通りです。
(1) Aさんがお菓子を食べていた
(2) Bさんが口紅を持ってきた
(3) C君が男子5人に殴られていた
(4) D君が教室のガラスを割った
(5) E君がバイクに乗っていた

2 告発された内容
 告発された内容は、告発されるべきものです。学校でお菓子を食べたり、化粧をしたり、隠れて暴力を振るったり、ガラスを割っても知らない振りしたりすることは、放置すべき行為ではないからです。放置すれば、学校の『教育の場としての機能』が失われます。また、校外における不法行為についても、告発できる人が告発すべきです。道徳的に『知っていて知らないふりをする』こともありますが、他人に迷惑をかける行為、誰かに隠さなければいけない行為は、告発されるべきです。

3 内部告発する生徒の特徴
 内部告発する生徒は、生徒集団より先生集団に属したいと願っています。あるいは、より高いレベルの社会に属したいと願っています。この願いは間違っていません。より高いレベル、理想の人間社会を目指すことは、人間の自然な欲望です。私自身、密告はしませんが、文部科学省を頂点とする学校教育者の一員ではなく、それを含む『名古屋に住む地球人の1人』でいたい、と願っています。自分が直接所属する集団より、大きな社会集団に属している、という意識が強いのです。

4 チクる生徒は嫌われる
 ほとんどの生徒は、先生にチクる行為を極端に嫌いますが、私も同じです。友達に何も言わず、第3者(先生)だけに言うのは大嫌いです。それは学校全体としては良い結果になるでしょう。しかし、それは自分が有利になるための密告、あるいは、単なる嫌がらせと区別できません。どんなに悪いことのように見えても、それが自分の仲間(友達)の行為なら、自分で勝負すべきです。勝手にチクルべきではありません。

5 勇気ある者は「密告」と言われても動じない
 しかし、隠れてお菓子を食べている友達に対して、まず、「やめなよ」と自分で注意します。そして、それがダメだった結果として先生の力を借りるなら賛成です。これは密告ではありません。自分が所属する集団の一員として、その集団をより良くするために頑張る正当な行為です。そもそも、菓子を食る友達を直接注意することは、とても勇気がいることです(先生に密告するより大変です)。自分の力ではできないから、外部の力を借りて自分の集団をより良くするという方法は間違っていません。その姿勢は一貫しています。チクる、という言葉は不適切です。

6 密告がない生徒社会をつくる
 誰かに隠したい行為が横行する社会は、崩壊します。「誰がチクったっだ!」と息巻く生徒がいる生徒社会は、なおさらです。それは告発されるべき社会であり、崩壊するべき社会だったのです。生徒が目指すべき、教師が育てるべき生徒集団は、密告がない生徒社会です。悪いことがおきても、内部で自浄できる社会です。先生は、先生にチクる生徒を可愛がってはいけません。「悪い行いをする友達を見たら、『やめろ!』と言いなさい」と指導べきです。チクリがない生徒社会を育てるようにしましょう。

2011年1月12日

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