このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第8章 学校教育を超えた少年犯罪

10 家出、無断外泊

1 家出って何?
 家出は、親(保護者)の許可なしで外出することです。行き先や帰宅時間は不明なので、親はとても不安な時間を過ごします。家出する原因は、「家にいたくないから」です。「家にいたい」と思う子どもは、家出しません。家出の原因の99%は親です。「わがままを言ってはいけません!」と頭ごなしに否定するのではなく、子どもの要望を実現できない理由をきちんと説明しましょう。丁寧な説明をすれば、普通の中学生は納得します。「どれだけ心配したと思っているんだ!」と怒鳴るのは本末転倒です。子どもは被害者です。家出問題の解決は、その子の親が考え方と行動を変えることによって達成されます。

2 家出から無断外泊へ
 ひと昔前は、宿泊する場所がなく、深夜になると家へ戻ってきたものです。根性が入った少年は、公園や集合住宅の片隅で夜を明かしますが、翌朝ふらふらになって終了! でした。しかし、2010年現在、快適な宿泊場所がたくさんあります。そこは自分の家より居心地がよいので、とても自然な流れで、罪悪感を感じることなく一夜を明かします。無断外泊している、という意識がありません。このような状況になると、学校に登校することも少なくなり、何日も連続して宿泊するようになります。1番初めの家出から数カ月で、行方不明、無断外泊の連続となる場合もあります。

3 外泊する場所
 暑い夏は、公園や空き地でタバコを吸ったりコンビニ弁当を食べたりしているうちにオールして(朝になって)しまいます。しかし、寒くなると、暖かい部屋がある誰かの家へ上がり込むようになります。その家は、夜大人がいない家、子どもが自由に出入りできる家です。驚くべきことに、家出少年を積極的に呼び込む大人(家)がいます。食事を与えたり、衣服を洗濯したりすることもあります。家出少年にとって、その大人は自分の親(保護者)より信頼がおける大人です。引き込んでいる大人は、それを生き甲斐にしてます。

4 中学生の子どもに手を上げた親
 我が子に手を上げた場合、親子関係の修復は厳しくなります。子どもが十分に小さく、その暴力の意味を理解できないうちは良いのですが、その暴力が暴力に過ぎないこと、親の勝手な暴力であることを理解できる年齢に達した時、子どもは家から飛び出します。それでも、子どもは子どもです。中学生ぐらいなら、親を信じて何度か家に戻りますが、親が大声を出したり暴力を使い続けたりするなら、親子関係は修復不能なまでに崩壊するでしょう。子どもが親に報復するからです。再生の道は厳しいですが、それでも方法はあります。対話、共通理解、歩み寄り、そして、衣食住の改善です。

5 無断外泊と犯罪
 無断外泊する生徒の99.99%は、喫煙、飲酒、不純異性交遊を行います。さらに、窃盗、窃盗バイクの無免許運転、暴走運転、恐喝を行います。潤沢な資金がある場合は、薬物乱用に走ります。これらは少年犯罪であり、学校教育の範囲を超えています。これらの犯罪行為に対して、一般教員が不用意に踏み込むことは危険であるだけでなく、犯罪を手助けすることになりかねません。すぐに、関係機関と連絡をとってください。躊躇してはいけません。十分な経験を積んだベテランの先生だけが、教育的指導できる可能性をもっています。若手の先生はベテラン先生をサポートしながら、その動きを学んでください。

6 親(保護者)を教育する
 のレベルに達している場合、指導するのは子どもではなく親です。子どもとって居心地の良い家庭環境をつくってもらうことです。子どもを無理に引っ張ってきても、説教しても無駄です。中学生にもなれば、いとも簡単に逃げ出してしまうでしょう。改善すべきことは、でも述べたように子どもの家庭環境です。綺麗な衣服、美味しい食事、綺麗な部屋という物理的な環境、そして、信頼しあい愛しあうという精神的な環境です。それら2つを整えるように、親(保護者)を教育してください。それが家出少年に対する正しい指導です。

7 ベテラン先生へのアドバイス
 家出少年の家族を全員集めてください。場所は少年の家です。先生が司会者となり、全員で話合わせてください。家族に対して、「なぜ家出をしたと思うか」。少年に対して、「なぜ家出をするのか」。それらを徹底的に話し合わせてください。初めは、何も語ることがない(語りたくない)ので、何も語らないでしょう。しかし、最終的な家出のきっかけとなる事件については話せるはずです。そこから、少しずつ、家族間のすれ違いを明らかにしてください。長い時間をかけ、同じような質問をくり返すことで、各自が自分の非を発見していきます。それと同時に、相手の気持ちが理解できるようになります。先生は、親(保護者)が自分の非を認める瞬間、子どもが自分の非を認める瞬間を的確に捉えます。互いに謝罪しあい、許しあい、1つひとつすれ違いを解いていきます。同居しているおじいちゃんやおばあちゃんがいるなら、絶対に同席させ、同じように共通理解を図ってください。年輩の方は、自分の考えや行動を変えようとしないことが多いのですが、『自分が変わらなければ、何も変わらないこと』を知らせてください。相手だけに譲歩させるのは、虫のよい話です。孫は、自分のおもちゃや遊び道具ではありません。『独立した1人の人間』として尊重することで、子どもは大人(おじいちゃん、おばあちゃん)を尊敬するようになります。また、親子の確執、嫁姑の関係が原因のこともあります。

 さらに、必要に応じて兄弟姉妹も参加させてください。弟と妹についても、話し合いができる年齢に達しているなら参加させるべきです。

 子は鎹(かすがい)という諺があります。家出前とは全く違う、新しい家族関係を構築するようにアドバイスしてください。ただし、子どもが中心になるようではいけません。家族全員が平等に助け合う家庭を目指してください。無断外泊の教育的指導ができるチャンスは初回のときだけです。全力を出してください。

2010年12月18日

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