このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第8章 学校教育を超えた少年犯罪

9 「教育を受ける権利」を主張されたら

1 生徒は、教育を受ける権利を持っている
 生徒は、教育を受ける権利を持っています。これは、子どもを労働かせようとする保護者から子どもを守るためのものです。保護者は子どもに教育を受けさせる義務、先生は子どもに教育を行う責任があります。

2 「オレには教育を受ける権利がある」と言われたら
 授業中、教室内で野球をしたり、授業とは関係ない話を大声でしたりする生徒から、「オレには教育を受ける権利がある」と言われたら、次のように言いましょう。一般に、このようなフレーズを使う生徒は言葉巧みです。先生は、しっかり間違いなく喋れるように何度も練習してください。僅かな言い間違いで足元をすくわれます。なお、このフレーズが飛び出す状況は、学校教育を超えた少年犯罪がすでに起っている場合がほとんどです。先生は自分の力を過信してはいけません。最善を尽してもできないなら、外部の専門機関にその後を委ねましょう。

パターン1: その通り! 君には教育を受ける権利があるから、先生が出て行けということはできない。学校に来るな、とも言えない。しかし、よく考えてみたまえ。教育を受ける権利とは、先生に教えてもらう権利だ。先生に教えてもらうということは、先生の言うことを聞く、先生の言いつけを守るということだ。先生に教えられるということだ。先生は、君の権利を守るために全力を尽くすことを約束しよう。誰かがその権利を犯そうとしたら、先生は全力で闘うことを約束しよう。ところで、先生は今、君に「授業中、勝手に話をしてはいけない」と教育した。つまり、君は勝手にしゃべらないようにする権利、先生が「黙れ」といったら黙る権利、先生の命令に服従する権利がある。それが君の権利だ。つまり、君は先生が教えたことに絶対服従する権利がある。どうだい? 君は自分の権利を気に入ったかい! 先生は、全力でこの君の権利を守ろうとしている。君の権利を奪おうとしているのは、君自身だ。

パターン2: 君とは逆に、先生には権利がない。先生には授業を行う責任と義務がある。やりたくなくても、授業を行わなければいけない。君が間違ったことをしたら、君が他人の権利を奪おうとしたら、それを守る義務がある。これは、君が持っている権利とは全く逆だ。君は自分が有利な立場にあることを放棄しようとしている。これは重大な警告だ。教育を受ける権利を主張し、自分の権利を守りたまえ!

パターン3: 「なんで黙らないかんのだ!」「オレだけに注意するな!」「偉そうに言うな!」と、先生の教育に対して口答えすることは、君は自分の権利を放棄することに等しい。もちろん、君には権利を放棄する自由がある。しかし、君は自分の権利を自分で放棄したことに対して、自分で責任を持つ義務が生じる。もう1度警告する。教育を受ける権利を放棄してはいけない。

パターン4: 君は先生から教育を受ける権利を持っている。それと同じように、君の友達も教育を受ける権利をもっている。今、君が行っていることは、友達が持っている権利を奪う行為だ。先生は略奪行為を放置できない。先生は、君と君の友達が同じように持っている権利、それを平等に守る義務がある。奪う者がいるなら、断じて許さない。

パターン5: ついでに教えておくと、君は教育を受ける義務をもっていない。つまり、教育を受けなくても良い。学校に来なくてもよい。義務教育の義務をもっているのは君ではなく、君の保護者だ。君が学校へ行かずに遊んでいたり、先生からの教育を受けていなかったとき、保護者は子どもに教育を受けさせる義務を果たしていないので法で裁かれる。子どもに家事手伝いをさせたり、どこかで不法労働させたりする保護者は警察に逮捕させる。

 今の君は自分の好き勝手やって楽しいように錯覚しているけれど、実際は、これからの長い人生、保護者がいなくなってから、誰も君に金をくれないようになった時、君は貧乏になる。学校で勉強しない者は、いわゆる勉強ができず、常識を知らず、漢字を読めず、計算ができず、一人前の給料がもらえない大人になることは簡単に予測できる。未来を予測できる大人は、子どもに教育を受けさせる義務がある。

 くり返そう。君は義務を全うしようとする保護者をふりきって、権利放棄することできる。先生に反抗して自分勝手することはできる。権利を手放すことは簡単だけれど、自分の権利は自分で守りたまえ。君の権利は、先生の言うこと聞く権利、先生の命令に従う権利だ。自分の権利を主張するなら、直ちに着席し、先生に対する暴言を謝罪し、授業を受けなさい。君が言っていることは矛盾している。

3 家庭環境に左右されない学校環境を
 このページを執筆したのは2008年です。過去20年以上の経験をまとめた指導実践例で、2012年現在でも有効だと思います。有効です、と言い切れないのは、現在赴任した学校ではこのような主張をする生徒が存在せず、検証できないからです。これは、家庭や地域の環境が違うからだと思いますが、いかなる環境においても、「教育を受ける権利」という言葉を盾にして生徒が授業妨害や授業エスケープすることは間違いです。正してください。法や権利という語を使わなければいけない学校環境は劣悪です。劣悪であっても、絶対に守らなければいけないものは「子どもが教育を受ける権利」です。すべての学校は、最低限を守るために「権利」と「義務」の意味を正しく使うように教えましょう。法を使わなければいけない状況は最悪ですが、最低限の学校環境を守ってください。

2008年12月30日執筆
 2012年6月7日公開

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