このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第8章 学校教育を超えた少年犯罪

12 万引きという窃盗、窃盗犯

1 万引きとは
 万引きは窃盗です。勝手に他人のものを自分ものにする窃盗の1種です。その犯人は、刑法第235条で『窃盗犯』として裁かれ、10年以下の懲役、または、50万円以下の罰金に処せられます。逃げようとして誰かを傷つけて場合は、刑法第238条で『強盗犯』として裁かれます。『万引き』という一般的な名称は甘さを感じるので、このページでは『窃盗』と述べます。窃盗はいかなる理由があっても絶対にしてはいけません。

2 罪の重さ
 知らないうちに自分の物を盗まれると、とても悲しい憤りを感じます。それが思い出深いものなら、なおさらです。盗まれた時の悲しさは、中学生でも想像できることです。最近は、『万引き倒産』が流行していますが、それは窃盗によって本屋や小さな商店などが倒産することです。わずかな金額でも、利益としてあげることはとても大変なことです。窃盗罪は大変重く、刑法によって裁かれることは前に述べた通りです。

3 共犯者
 刑法第95条〜第69条の3によって、実行した人だけでなく、「計画だけした人」や「そそのかした人」も共犯者として裁かれ、その罪の重さは同じです。

2人以上が共同して犯罪を犯した(窃盗)した場合

正 犯 ・ 実行した者
・ 一緒に実行した者
共同正犯 ・ 実行していないが、一緒に計画した者
・ 正犯と同じ刑罰に処させる
きょうさはん
教唆犯
・ 実行していないが、犯行をそそのかした者
・ 正犯と同じ刑罰に処させる
 (教唆犯をそそのかした者も同じ)
従 犯 ・ 正犯を助けた者

4 盗んだものをもらった人の罪
 刑法第256条によって、盗品を無料でもらった人は3年以下の懲役、お金で買ったり誰かに売ったり運んだりした人は5年以下の懲役と50万円以下の罰金に処されます。盗んだものをもらっただけ、という考えは『犯罪者』のものです。

5 窃盗犯を指導するチャンスは1度だけ
 初犯で見つかった場合は、再発しない可能性が高いので、厳しく指導してください。店、保護者と協力して、できる限りの指導をしてください。初犯だけがチャンスです。初犯でなくとも、一番初めに見つけた時が最初で最後のチャンスです。これを逃すと、死ぬまで窃盗をを繰り返す犯罪者になると考えて間違いありません。本気で全力で取り組んでください。

6 1990年代の窃盗
 の考え方は、1990年代の中学生に対して有効でした。私は数10人の生徒をこのようにして指導し、初犯のときが勝負であることを痛感していました。当時は、小学校で窃盗したことがある生徒が少なかったので、自分の手で教育できたのです。しかし、小学校で初めて窃盗を犯す子どもが増えてくると、どうしようもない状態になってきました。中学に入学する頃には、すでに常習犯になっているからです。「子どもだから」という甘い考え方は間違っています。商品の窃盗は、すべての年齢で行わる可能性があるものです。甘い考えが子どもを犯罪者にします。

7 2010年現在の窃盗
 最近は、窃盗犯の高齢化、犯行の巧妙化が問題になっています。中学生の場合は、ゲーム感覚で友達と一緒に犯行に及びます。動機は短絡的で自分勝手ですが、方法と技術は洗練されています。さらに、数万円単位でも何とも思わないほど金銭感覚が麻痺していることも見逃せません。私は、すでに学校教育のレベルを逸脱していると感じています。関係機関に頼るべきレベルです。少年法は2000年頃から改正する動きが見られ、法的な整備も進められています。

8 保護者から「仕事が忙いのでお願いします」と言われたら
 万引きは窃盗であり、窃盗した者は窃盗犯であることを教えてください。そして、保護者は保護、監督する義務があることを教えてください。生徒だけでなく、保護者も教育することが必要な時代になってきています。学年生活係や生活指導主事の先生など、複数の先生から話をしてもらうことも必要です。そして、保護者に警察や店へ足を運んでもらいましょう。保護者がやるべきことを先生が行うのは簡単ですが、教育上、逆効果になる場合が多々あります。十分に注意してください。

9 窃盗する前の指導
 私は、「窃盗は、しようと思えば誰でもできますが、絶対にしてはいけないません」「中学生になれば、大人と同じレベルの窃盗ができます。それは絶対にしてはいけない重大な犯罪です」など、チャンスを見つけて話をするようにしています。「この子に限って、、、」などと考えるのは甘いです。どんな犯罪者も、純粋無垢な赤ちゃんとして生まれ、可愛い幼児だった時期があり、世間をほとんど知らない子どもの時代があったのです。万引きという窃盗について正確に厳しく指導しましょう。それが学校の先生の仕事です。犯罪を犯すのは偶然や突発的事故ではありません。正しい知識を持っていないことを1つの原因とする、悪い環境によって起こるものです。

2010年10月27日

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