このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第8章 学校教育を超えた少年犯罪

6 タバコ常習生徒にする話

 この話は、タバコ事件発生時ではなく、タバコの噂が立った時にすることを想定しています。話をする場所は、タバコと無縁な生徒を含む1つの学級(あるいは学年)です。目的は、中学生の喫煙の抑止です。タバコ以外の薬物(シンナー、アルコール、覚醒剤など)も同じように話をすることができます。

資料: タバコに含まれるニコチン
 タバコは、タバコという植物の葉から作られます。その葉に含まれるニコチンという物質は、次のような特徴をもっています。

(ア) ごく少量で死亡することから、『毒物』に指定されている。
   青酸カリの数倍の猛毒で、紙タバコ数本を水に溶かして飲むと急死します。
(イ) 中枢神経である脳に作用する。
(ウ) 習慣性、常習性、依存性がある。

話し方の例
 「タバコを吸ったことがある人は手を挙げて! えっ、本当にいないの? あれっ、@@君はみんなの注目を浴びているけど、大丈夫? 間違った噂が立たないようにね。人気者は苦労する、と思いますが、火のないとろに煙りは立たない、という諺もありますので注意してください。ということで、今日はタバコ中毒、正しくは『ニコチン中毒』の話をします。まず初めに、タバコの臭いが嫌いな人はいますか? 先生はタバコの臭いが大嫌いです。吸っている人を見るだけでも「ぞっ」とするのですが、場合によっては我慢します。大人の付き合いがあるからね。でも、基本的には大嫌いです。最近、ネットで勉強してわかったことですが、1日に100本ぐらい吸うヘビー・スモーカーは、実はタバコが嫌いなようです。自分でも止めようと思っているのですが、できないそうです。ニコチン中毒だからです。中学生でも、何となくイライラして、火を付けてしまい、自分でも臭い、嫌だと思いながらも毎日吸う人がいます。吸う前はわくわくするけれど、吸っている途中で嫌になってきたら、完全な中毒です。自分の力では止めることができないニコチン中毒患者になっていると考えて間違いありません。もしかして、タバコを吸っている人がいたら、そうなる前に止めてください。 タバコに含まれているニコチンという毒物は、常習性、習慣性、つまり、癖になってしまう性質があります。テレビドラマや推理小説で、『青酸カリ』という猛毒を使って殺人をする話を聞いたことがあると思いますが、実は、ニコチンは青酸カリの数倍の猛毒です。何も知らない赤ちゃんは、何でも口にくわえたり食べたりしますが、タバコ1本を間違えて食べれば、それで死亡です。救急車で病院に搬送し、適切な処置をしなければ死にます。タバコ1箱には20本入っているので、20人の赤ちゃんを殺すことができます。大人でも数本で死にます。死ぬ原因は、頭の中にある脳神経を麻痺させることですから、中学生の柔らかい脳を破壊したり、中毒患者の脳にすることは簡単です。ニコチンは、神経に作用する猛毒であることを知ってください。(後略)」

1 自分嫌いなのに辞められない
 1番楽しいのは、タバコを吸う前です。仲間とつるんで、先生や大人の目を盗んで、「おお、タバコ吸いにいくぞ!」と言う時です。実際に火を付ける瞬間から、後悔が始まります。「こんなことをしていて良いのかな?」「火をつけなければ良かった」 そして、吸っている時も、内心楽しくありません。イライラしています。

2 ニコチンの作用
 吸いたくないのに吸う、という不自然な行動を繰り返していると、脳がそれを学習し、習慣化されます。ニコチンはもともと常習性、依存性がある薬物なので、この学習を加速させます。学習を完了した脳は、いつもでニコチンを求めるようになり、さまざまな精神障害をひき押します。不安になったり、集中力や記憶力が低下します。身体的には、脳細胞が破壊され、肺や心臓などの心肺機能がおかされることで運動できなくなります。

3 中毒患者
 本物の中毒患者は、自分の力だけで止められない状態になっています。自分でコントロールできないのです。もし、中学生が自分の感情をコントロールできなくなっているなら、ニコチン中毒、あるいは、それと比較できるような精神障害であると判断してください。一般の学校で教育できません。専門の病院で治療しなければいけないレベルです。

4 イライラして、人を殴りやすくなる
 タバコを吸うとイライラします。中毒患者は、日常的にイライラしています。吸っても吸わなくてもイライラしています。喫煙時にいっときの安らぎを感じるのは、脳内の血管がニコチンによって収縮し、思考できなくなるからです。ニコチン中毒一歩手前の中学生は、自分で自分をコントールできないので、「殴るぞ!」と暴言を吐いたり、実際に関係ない弱い友達を殴ったりします。

 「禁断症状が出て、そのイライラを止めるために、タバコを吸う人はいませんか? その数がだんだん増えてきている人はいませんか? そのうち、吸ってもイライラするようになりますが、大丈夫ですか? 誰かを殴っていませんか? 壁を殴るもの一緒ですよ」

 この話をすると、目を輝かせ、身を乗り出す生徒がいます。喫煙生徒です。他の生徒も「へえ、そうなんだ」と聞き入りますが、中毒生徒から迷惑行為を受けている生徒は、「先生、ありがとう」という感謝の気持ちでいっぱいのはずです。

5 自分が臭いと頭が悪くなる
 タバコを吸わない私は、タバコの臭いが大嫌いです。タバコの臭いや異臭がする部屋では、勉強する気にならないばかりが、頭が痛くなります。逆に、良い香りがする部屋では心が落ち着き、勉強もはかどります。これと同じように、自分のタバコの匂いで臭くなっている人は、それだけで頭が悪くなるものです。もちろん、ニコチンの作用によって、脳そのものも悪くなります。現代日本人は部屋に香をたく習慣はありませんが、昔の人は良い香りを楽しんでいたようです。同じように、清潔な服を着たり、机の上を整頓することは、学習効果を上げるはたらきがあります。

6 身長が伸びなくなる
 身長が伸びなくなることは、いろいろな本に書かれているので省略します。

7 辞めたくて辞めれない人へ
 ニコチンは依存性がありますので、簡単に止めれません。中毒になっている人、これまでに何度も禁煙に失敗している人は病院へ行ってください。医者が診察し、ニコチンパッチなどを処方してくれると思います。自分で自分をコントロールできない精神障害になっていることを認めてください。専門医の力をかりない限り、ニコチン摂取量は増えるばかりです。

8 アルコール中毒、薬物中毒
 アルコール(酒)中毒も薬物薬物も、ニコチン中毒と同じです。日本以外の国では、アルコール(酒)とニコチン(タバコ)を他の薬物と区別していません。いずれも依存性がある薬物で、自分で自分をコントールできない状態になります。薬物を使っても使わなくても、いらいらしたり、するようになります。中学生の脳は、大人よりも弱いので、簡単に傷つけられ、少ない量で中毒になります。

2010年12月13日

↑ TOP

[Mr. takaによる若手教師のためのワンポイント・レッスン]
[→home

(C) 2010 Fukuchi Takahiro