このページは『福地先生の教育の相談箱』です。

BOX4 保護者

塾へ行かせた方が良いですか(中学1〜3年生)

塾にいっていない中学生をもつ母親からの相談

「先生、うちの子は塾に行っていないのですが、行かせた方が良いですか」

 この質問は、5月の家庭訪問先で、初めて中学生をもつ母親からよく聞かれます。

福地先生の回答

 まず、子どもが学習塾へ行きたいと思っているか、本人の意志を確認して下さい。「行きたくない」と言うのなら、行かせてはいけせん。無理矢理行かせても、学習成績は上がりません。むしろ、勉強嫌いになる危険性をはらみます。それでも、どうしても行かせたいなら、子どもと一緒にいる時間や対話する時間をかけて、まず、子ども自身が行きたくなるような環境を整えて下さい。話をする内容は、次の通りです。少し極端な例を紹介しますが、「あなたのため」と言うことは厳禁です。

子どもとの会話例
「塾へ行くのはあなたことを考えているのではなくて、お母さんのためよ。あなたの成績があまりに低くて心配で、、、それに、あなたの成績が悪くて恥ずかしくて他のお母さんと話ができないから、、、」

 自分の子どもの学力が高ければ、親として嬉しいものですが、学力を上げる手段として塾に頼るのは安易です。塾に行かせるために親が働くという構図は、日本社会の問題点の1つだと思います。

 逆に、子どもが「行きたい」と希望しても、それに飛びついてはいけません。どうして塾に行きたいのか、その動機を確認する必要があります。多くの子どもは「友だちが行っているから」と答えるでしょう。そして、実際、塾で友だちと出会い、お喋りしたり情報交換したりすることになります。塾へ行く=成績が上がる、という公式はありません。よく成り立つ式は、次の通りです。

塾へ行かせる = その間、子どもの面倒を見なくてよい
塾へ行かせる = 成績に関して一応安心できる(責任転嫁できる)

※保護者が安心できるのは、塾へ行く姿、塾での姿、塾から帰る姿を見ていない場合に顕著です。そして、成績が上がらないと「どうして上がらないの?! 塾で何しているの?! どれだけ働いているのか分からないの?!」と言うことになります。そのような塾はすぐに辞めさせるべきですが、辞めてしまうと、その間の面倒を見たり、勉強をしない子どもの姿を見てイライラすることになります。この場合、反省しなければならないのは、子どもより保護者ですが、若い先生が指摘するのは困難かも知れません。しかし、子どものために、時間をかけてでも気づかせるようにして下さい。がんばってね!


塾に行っている中学生をもつ母親からの相談


「先生、塾に行っても成績が上がらないのですが、辞めさせた方が良いですか?」
「先生、子どもが塾を辞めたい、と言うのですが?」

 家庭教師についても、塾と同じような質問がされます。このような時、私の次のように答えるようにしています。それは事実であり、多くの子どもが感じている気持ちです。

福地先生の回答

 結論からいうと、塾を辞めて下さい。

 しかし、子どもから「辞めたい」と言い出した場合は、何らかの理由がありますから、よく話を聞いてあげて下さい。原因を十分に確認することが必要です。お母さんに何も言わないようなら、かなり深刻な問題が発生している場合があるので、塾を休ませ、時間を十分にかけて聞き出す必要があります。塾の先生にも相談して下さい。それでも原因が分らない場合は、あなた自身にも問題がある可能性があります。まず、塾を辞めるより他に手段はありません。

 私の経験では、塾がプレッシャーとなり、学校の定期テストでカンニングをしなくなった子どもがいます。その子が通っていた塾の先生は、学校の定期テストの得点を報告させ、厳しい叱咤激励をしていました。カンニングをしていた子どもから、その塾の実態を聞かさせたとき、私は大きなショックを受けました。

 また、塾での友だちに「いじめ」られていることも考えられます。いじめは、塾の先生や保護者にわからない形で進行します。もし、本人が現状を話し、助けを求めてきたなら、大人が解決の手伝いをすることが必要です。安易に塾から逃げ出すだけでは、問題の本質の1つは解決しません。

参考:学習塾の目的
 塾や家庭教師の最終目的は、保護者から金をもらうこと(利潤の追求)です。ほとんどの場合、保護者の希望は「成績を上げること」や「学力の高い上級学校へ入学すること」なので、その希望を叶えるために最善の努力をします。必要に応じて、能力別クラスを編成したり、特別な問題集を使ったりします。

参考:学校教育の目的(教育基本法平成十八年法律第百二十号 第1章から)
 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行なわれなければならない。

 公立学校は営利を目的としませんし、目的とすることはできません。


なぜ、塾へ行くと成績が上がるのか
 塾のお陰で成績が上がる理由として、次のようなことが考えられます。もし、次のような理由が見当たらない場合は、逆に成績が下がる可能性があるので、すぐに辞めた方が良いでしょう。理由は、上で述べた通りです。

塾によって成績が上がる場合
(1)塾の先生の教え方が上手い。
(2)塾の先生のことを、子どもが慕っている。
(3)塾で学習することが楽しい。
(4)塾で学習すると集中できる。
(5)塾の先生が、わからない部分を的確に教えてくれる。
(6)塾の教室では、無言で練習問題を行わないと厳しく叱られる。
  ※(6)の場合、家庭や学校でその反動が現れることを覚悟して下さい。
  ※このような塾は、家庭で問題集やった方が効果的です。

 上の(1)〜(6)の理由の中に、友だちは出てきません。成績が上がるのは、あくまで個人的な理由が主体であることを確認して下さい。友だちに関しては、塾より学校の方がたくさんいますし、時間もたくさんあります。

 塾もまた、人との出合いの場です。出合いによって大きく伸びることもあるし、その逆もあります。保護者に金銭的なゆとりがあり、本人が塾を希望し、塾へ行くことによって成績が上がることを望まないなら、私は塾へ行くことに賛成します。結果として、良い出合いあり、成績が上がる可能性が高くなるでしょう。

 なお、私個人は学習塾に通ったことがないので、塾の必要性は全く感じません。成績は「中の下」でしたが、塾によって成績を上げようとは考えませんでした。学校で教えてもらったことを、また聞くなんて信じられませんでした。現実問題としては、家庭に金銭的なゆとりがなかったことが第1原因かも知れませんが、大人になった今は、そうした環境が私自身を形成した大切な環境だったと自覚しています。

2007 june 18
2007 nov 28 加筆修正

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