このページは『福地先生の教育の相談箱』です。 |
BOX1 小学校の先生
小学校から逃走する男児(5年生)
困っている先生から相談を受けている先生からのe-mail
A男は、気に入らないことがあると、すぐに上靴のまま門を飛び越え学校から出て行ってしまいます。でも家に帰るわけではなく、学校近辺をふらふら歩き回っています。担任の先生は、出て行ったことに気付いた時点で家に連絡すると同時に、私たちも探しに出かけ、見つけたら学校に連れ戻します。これまでに、この作業を何度繰り返したことか・・・。
A男は口数が多くない子なので、出て行く理由を聞いても何も言いません。周りの子達の話などから、我々が原因を推測している状態です。連れ戻すたびに本人と話し、出て行ってはいけないことを約束するのですが・・・。また、性格にはかなり波があり、落ち着いているときは、「あの行動は何だったの?」というくらい友達とふざけ合ったりして普通の生活をしています。さらに追加情報として、これまでのA男は、朝、登校途中に学校へ行くのが嫌になり、学校へは来ず、どこかで何となく時間をつぶすということが度々ありました。このため、今は母親に頼み、母親と一緒に登校しています(母親は渋々)。
それと困ったことに、先日、同じクラスのB男が学校で嫌なことがあったとき、同じ行動をとった(勝手に出て行ってしまった)のです。A男の行動を見ているため、嫌なことがあったときは出て行けばいいや・・・みたいな雰囲気がクラスの中にあるのだと思います。でも、B男とA男が違うのは、B男が家に帰っていたことです。きっと、B男は家に心のよりどころがあるのでしょう。
相談したいことは以上です。どうすればいいのだろうと悩んでいる担任の先生や、上司達と話し合っているのですが、なかなか・・・というのが現状です。福地先生なら、A男とB男にどのような指導をなさいますか?
福地先生の回答
A男が学校から逃走した場合、母親に来校してもらい、自宅に引き取ってもらいます。教室には入れません。そして、当日、あるいは、後日、母親を徹底指導します。
母親に対する具体的な指導は、かなり大変です。一般的に、保護者の指導は、子どもに対する指導するより数倍から10倍ほどの労力が必要です。今回のメールでは、具体策を提案できるほどの情報がないので、ここまでしか書けませんが、一般的なアドバイスは次の通りです。「今からでも遅くないし、これから先のことも考えて、A男のために時間を確保し、愛情を注いで下さい。そのために、今の生活が大きく変わったり、仕事を辞める覚悟も必要です」
具体的に、母親の生活が50%以上変更されなけば、A男の将来はありません。同様に、母親の将来もありません。不登校、家庭内暴力、ニートなどに発展します。よくてもフリーターを抱える母親になりす。また、最終段階に来ているなら、「ここは普通教育を行っている公立の小学校なので、お宅のお子さんの指導は、これ以上できません。不可能です。終日、別室で待機して下さい。」と通告します。母親は反論したり、学校に噛み付いてくる可能性がありますが、学校から切り出さなくても、近い将来、A男は母親の手に負えない状況になります。そのとき、A男の母親は学校に責任転嫁をしてくると思います。(中学になってからかも知れませんが、、、)
授業が潰れても、何日かかっても仕方ありません。もし、A男が何らかの事件に巻き込まれてしまったなら、それこそ数ヶ月ではすまない状況になりますし、現状でも、合計すれば数10時間消費していると思います。これは、正常な学校の状態ではないので、原因であるA男をとりまく家庭環境や母親の改善を強く要求して下さい。
その一方、A男に対しては、指導したり約束したりすることは、ほどんど無意味です。A男に対しては、母親と先生の間の約束を報告したり、母親と先生が緊密に連絡をとりあっていることを見せるだけで十分です。むしろ、難しい話や約束をさせることは逆効果になりかねません。
A男が飛び出すきっかけは、学校にありますが、根本原因は家庭にあるので、先生は「飛び出したこと」に対して自分を責める必要はありません。また、きっかけを作った友達を責める必要はありません。さらに、A男自身を問いただす必要もありません。その日は、とくに不安定だった、と考えるべきです。
一方、B男に関しては、全く違う指導をします。B男は家庭に帰るのですから、それで終了です。ただし、さらなるC男、D女が登場することは絶対に防止しなければならないので、A男が逃走し、学級にいない場面で、学級全体に次のような話をして下さい。「先生はA男と話をしました。すると、A男は自分の口からは、はっきりと聞けませんでしたが、本当は自分でも飛び出したくないけれど、自分でも自分の気持ちがよく分からない、ということを先生に伝えたいようでした。A男はとても苦しんでいました。先生にはその気持ちがわかります。A男は自分では、本当は我慢したいんだけれど、我慢できないのです。本当は、みんなのように、もっと我慢したいと思っているのだけれど、心が不安定で、飛び出してしまっているのです。飛び出したからといって、悪いことをするでもなく、遊んでいるわけでも、さぼっている訳でもありません。これは皆も知っていると思います。A男はとても苦しんでいるのです。これはとても難しいことで、先生も一生懸命考えたり、A男の母さんとも一生懸命相談しているのですが、まだ、解決策は見つけられません。とにかく、A男も先生もがんばっているので、みなさんは、A男が飛び出してしまった、という表面だけを見て、それを真似して飛び出したりしてはいけません。嫌なことをあっても我慢できる、我慢する、それができる皆は幸せなのです。しっかり、我慢して、もっと大きく成長するようにしなさい。できない子は、先生はしっかり叱ります。」