このページは、Mr.Taka による中学校理科の授業記録 物理学 です。 |
1 単位って何?
単位は、いろいろな量を測定するための「基準量」です。例えば、長さの単位(基準量)として、メートル、インチ、尺などがあります。広げた指を使って長さを測定することも可能です。2 世界共通の単位
単位は、国や個人で勝手に決めることも可能ですが、物理研究のためには統一しておくべきでしょう。そこで世界共通の単位をつくろうと自然科学者達が集まった歴史を下表に示しました。1881年に制定されたCGS単位系に始まり、現在は1961年頃に制定された国際単位系(SI)によって単位が統一されています。
名 称
提案・制定された年基本単位 備 考 CGS単位系
1881年長さ(cm)、質量(g)、時間(s) 省 略 MKS単位系
1901年長さ(m)、質量(kg)、時間(s) 省 略 MKSA単位系
長さ(m)、質量(kg)、時間(s)、電流(A) MKS単位系に電流(A)を追加したもの 国際単位系(SI)
1960年1 長 さ(m) メートル
2 質 量(kg) キログラム
3 時 間(s) 秒
4 電 流(A) アンペア
5 温 度(K) ケルビン
6 光 度(cd) カルデラ
7 物質量(mol) モル組立単位がある 3 単位系って何?
「互いに関連しあった単位の集まり」を単位系といいます。国際単位系は7つの基本単位(m、kg、s、A、K、cd、mol)から構成されていますが、驚くべきことに、全ての物理量を7つの基本単位で表せます。それが「系」の本質です。例えば、速さは長さと時間でつくることができます。「速さ = 長さ ÷ 時間、はあたり前!」と笑われそうですが、私は、とても不思議だと思います。速さは独自の単位を持っていない、のです。速さは基本ではないのです。常に2つ(距離と時間)の関係でしか表せないなんて、本当に不思議です。中学の先生は不思議さと面白さを十分に伝えてください。単位を意識しながら物事を考えるようになったとき、物理は楽しく面白い教科にかわります。4 国際単位系の組立単位
組立単位は、基本単位を補助する単位として使われていたものです。です。例えば、時間は基本単位(s)秒の補助として、(d)日、(h)時、(min)分があります。組立単位は下表の他にもありますが、中学校で学習するにはこれで十分でしょう。
※上の表に「速さ」という物理量がないことを確認しよう! 速さは基本単位mとsでつくります(m/s)。体積は基本単位mだけでつくることができますが(m3)、組立単位(l)を使うこともできます。5 国際単位系は、絶対的なものではない
国際単位系は、古典的な単位系の1つに過ぎません。例えば、電場と磁場を同じ単位で表せば、物理世界をより少ない基本単位で説明できます。また、電子1個の電気量(1.602176・・・×10-19 クーロン)を基本単位(基準量)にすれば、これまで中途半端な定数を含んでいたいくつかの公式が明解になります。6 中学生のために力の単位「g重」を加えよう!
中学生に物理の面白さを教えるため、中学生に物理学の歴史を学ばせるために力の単位「g重」を加えることを強く勧めます。逆に、力の単位「N」は簡単に触れるだけで十分です。国際単位系の組立単位「N」は、N = kg m/s2の意味を理解させる必要があります。以下は、別ページ『物理単位』の転載です。
子どもに適した力の単位「g重グラムじゅう」を選ぶ
中学校の先生に求められることは、子どもの発達段階に適した単位を選ぶことです。中学で力(地球の重力に支配される力、圧力、浮力)を学習するときは、g重を使うべきです。地球上で重さを測定したとき、質量1gは1g重、質量15kgは15kg重になります。g重という単位は聞き慣れないと思いますが、g重という新しい単位を1つ教えることで、重力と力を簡単に理解できます。ここで国際単位系にこだわると、子どもの大多数が理科嫌いになります。地球の重力加速度を考える必要が生じるからです。国際単位系の単位N(ニュートン)の場合、質量1gは0.01N、質量15kgは150Nになりますが、Nは感覚的に理解できない単位です。私は長年にわたり、中学3年生で重力加速度を教えようと試行錯誤してきました。自由落下運動の生徒実験やデータ処理方法を工夫し、「加速度」の理解に努めました。しかし、現在の私の指導技術、および、子どもを取り巻く環境では不可能です。2013年現在、ニュートンの自由落下運動の実験結果を理解するための微積分は「高校数学2」で学習することになっています。
近い将来、中学校で「加速度(速さを時間で割ったもの)」を教えることができるようになると思いますが、その時代になっても、g重を使うことは必要です。はじめに、g重を使って「質量と重力の違い」を教えます。次に、g重を使って「重力以外の力」を教えます。次に、g重を使って「圧力(固体を押す)」を教えます。次に、g重を使って「水圧(液体の中ではたらく圧力)」を教えます。次に、g重を使って「気圧(気体の中ではたらく圧力)」を教えます。次に、g重を使って「水圧と気圧を同じ物理現象(流体の中ではたらく圧力)として考えることができること」を教えます。以上のステップを踏むことは容易で、ここで初めて物理学の面白さに目覚める子どもが生まれます。私の授業実践は、目からウロコが落ちる新鮮な発見をする子どもが多数いることを示しています。
なお、浮力は「水圧と気圧が同じ物理現象として考えることができること」を理解した後に、g重を使って教えます。もし、どうしてもN(ニュートン)を教えたいなら、この単元の最終授業で、「質量100gの物体にはたらく地球の重力を1Nという」と紹介しましょう。くり返しますが、Nを使うことで「力と圧力の統一的な理解」ができなく子どもが増えるなら、それは教育上の誤りです。Nの本質は地球の平均加速度=9.80665 m/s2 の理解であり、中学生で教えるべき内容ではありません。